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2006年04月15日(土) 2010年体制

ジーコの日本代表監督の続投は正式になくなった。よかった。当たりまえの人選とはいえ、Kキャプテンが明言したのだから、正式に、続投が否定されたとみていい。ほっとした。
ジーコ体制は、筆者には空白の4年間に見える。けれども、表面上の実績は上がっている。アジア杯王者をキープし、W杯アジア予選を1位通過しドイツ行きを決め、コンフェデ杯では欧州王者のギリシアを破りブラジルと引分けた(けれど決勝進出ならず)。FIFAランキングは一時、15位まで上昇した。
ジーコの実績は一見評価できるように見えるが、基層では崩壊の予兆が色濃く認められる。ジーコ体制の4年間の成功は、何度も当コラムで書いたことだけれど、トルシエ時代の遺産だ。また、Jリーグの活況、充実がそれに重なり、実績を押し上げた。Jリーガーはリーグ戦できわどい戦いを経験し、他のアジアの選手よりたくましくなっていた。
さて、日韓大会前後に海外に「進出」した代表中心選手の鈴木、柳沢、稲本、ヒデ、小野、中田浩(日韓大会では代表に招集されなかった高原、俊輔を含めて)は力を伸ばせず、選手として下り坂に向かっている。彼らを補う新戦力として、平山(オランダ一部)、松井(フランス一部)、大黒(フランス二部)らが海外で活躍しているが、日韓当時の海外組の躍進を上回ってはいない。ジーコ監督が行う最終選考に残る代表選手は、トルシエ時代の代表中心で構成されるに違いない。
筆者が指摘したいのは、その4年間の空白のことだ。ドイツ大会日本代表チームを組成するには、日韓大会でフランス大会代表を主軸から外した、トルシエのような「決断」が必要だった。
2ヵ月後にドイツに行く日本代表チームのコンセプトを考えてみよう。これまでの流れから推察して、ドイツ大会の日本代表のサッカーは、ポゼッション重視だと思う。
ポゼッション重視のチームコンセプトは、今年初めの米国戦、ボスニア戦のアウエーの2試合で惨状を晒した。この4年間の日本代表は、ホームの親善試合において、引いて戦う海外「代表」を相手にポゼッションサッカーを展開してきた。日本にやってくる海外の「代表」は大方二軍、寄せ集め、時差ぼけ、体調不良の相手だった。彼らは90分間辛抱することで、経済的恩恵に与る。そのためには、惨敗をしないよう、守備重視でカウンター、ロングパスの戦法を選ぶ。そんな相手に1−0程度のスコアで日本代表は勝ってきた。何度も書いたけれど、それがFIFAランキング上昇のメカニズムだった。
ところが、日本が海外遠征で戦う場合、相手は必ずしも守備的とは限らない。日本のポゼッション重視には猛烈なプレスでボールを奪おうとする。自由を奪われた日本代表は自分達のサッカーができなくなる。真剣勝負のW杯アジア予選では、北朝鮮との初戦で日本代表の欠陥が露呈された。結果は北朝鮮のスタミナ切れと経験不足が日本を救った。その後もレベルの低いアジア予選で苦戦を重ねたものの、どうにか予選突破できたため、日本代表のポゼッションサッカーが修正されることはなかった。
代表選手の質をみると、右SBの加地はスタミナと判断力はあるが、スピード、キレがある選手ではない。FWでは大黒、玉田、佐藤寿にスピードの共通性があるが、3人が選ばれる可能性は少ない。それだけではない。3−5−2と4−4−2の2つのシステムの併用は悪いとはいわないが、スピードとパワーで押し捲ってくる相手と戦っていないので、どちらが安定して戦えるかがわからないままだ。アウエーの親善試合数を増やせないまま本番に近づいてしまったので、2つのシステムの耐久性がつかめていない。これでは、相手に先取点を取られてからでないと試合の形が定まらないのと同じことだ。ドイツで豪州、クロアチア、ブラジルと戦う前に、自分達のスタイルを定められないままということは、戦う前に負けているに等しい。
いまの日本代表の悪口は散々、このコラムで書いたきたのでこのくらいにするけれどJリーグオールスターで、佐藤寿(広島)、巻・阿部(千葉)、長谷部(浦和)らが多数のファン投票数を獲得していることは、日本のサッカーファンの健全性の象徴だ。
ドイツから南アフリカまでの4年間は、日韓からドイツまでの4年間の失敗を繰り返してはいけない。日本が世界の強豪と真剣勝負で勝つためには、スピード、キレ、運動量(スタミナ)の豊富な選手を代表に選ばなければだめだ。そのためには若い選手を積極的に抜擢する勇気をもった人物が日本代表監督に就任する必要がある。マスコミの批判に潰されない、リスクをとれる監督でなければだめだ。


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