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2005年12月31日(土) 清水と大宮

天皇杯の準決勝に意外にもと言ったら失礼だが、大宮、清水が残った。大宮は浦和に延長戦で突き放されたが、清水はC大阪を逆に延長で退け、決勝に進んだ。清水、大宮ともにリーグ戦では降格圏内に漂ったこともあるが、リーグ後半、チームを立て直してきた。
両チームには幾つかの共通点がある。1つは、監督が若いこと。大宮の監督の三浦氏の方が、新人監督の長谷川氏より監督経験は長いことはもちろんだが。2つ目は4バック。3つ目は、両チームとも日本代表選手がいないこと。4つ目は、4−4−2のシステムでスペースを埋め、しつこいチェイシング、厳しいプレスといった守備で相手にスペースを与えないこと。5つ目は、相手の攻撃の核となる選手には、厳しいマンマークをつけ自由にさせないこと。そして、攻撃は早いカウンター、しかもサイドアタックが中心などなど・・・選手が規律の下でプレーをしていることだ。
筆者を最も魅了するのは、SBからのクロスボールを(折り返しを入れることもあるが)大型の攻撃陣が頭で合わせるシュートシーンだ。折り返しを入れたときには、ゴールの左右を空中のボールが往ったりきたりするわけで、誠にスリリングであり、美しい。折り返しを入れないときには、ヘディングがドンピシャリ、文句を言わせない。サッカーの醍醐味の1つだ。SBの縦の動きにボールを持たない後の選手がゴールに向かって走りこみ、空中に放たれたヨコの動きを加えたボールとジャンプした選手のヘッドが、空中の一点で交差する。まさに、スペクタクル。SBの駆け上がりこそが、4バックの最大の特徴で、ある人に言わせれば、4バックは、スペースを有効に使う(もしくは消す)ことにおいて、3バックより優れていると。
さて、大宮の「強さ」はリーグ終盤、筆者の記憶では、優勝候補のG大阪に勝った試合で垣間見えたように思う。やや調子を落としていたとはいえ、G大阪と大宮の個々の選手を比べれば力の差は歴然だった。それでも、規律=組織において大宮が勝っていた。
清水については、リーグ戦の低迷については、筆者は全然心配していなかった。長谷川監督が目指すサッカーが見えていたからだ。周囲もそれを理解していて、監督更迭の「コ」の字も出なかった。結果が出なかったのはタレント不足。適正な補強でそれを補った。このあたりが、「道楽チーム」の神戸と違うところ。清水という「サッカー王国」の地域の懐の深さだ。
大宮、清水の天皇杯での健闘については、1シーズン制の採用もその主因の1つに挙げられる。前期後期では、バタバタと優勝が決まる。そのため、チーム戦術・戦略・システムの熟成がママならない。前後期制では、監督と選手がじっくりと、チームコンセプトを全うする時間がもてない。プロは結果が求められるが、チーム事情では時間が必要な場合もある。1シーズン制は若いチームがうまくなる土壌を耕すことができる。清水の健闘の陰に1シーズン制の採用があると筆者はみる。
余談だけれど、シーズン序盤から先行した鹿島は一見、選手層が厚いので楽勝と思えたものの、小笠原一人が調子を落とした途端、首位から滑り落ち、首位奪回の闘志も見られないまま後退してしまった。
鹿島は、ブラジルとの太いパイプと豊富な資金力にものを言わせて、外国人選手に依存して優勝してきた。チーム戦術、規律、組織力は不十分だ。筆者は、鹿島に対して強い影響力をもつジーコ氏の存在を含め、鹿島の体質が好きではない。
鹿島は、短い前後期制の下では、ブラジル人選手に依存して優勝を重ねてきたものの、長丁場の1シーズン制度の下では、そうはいかなかった。トニーニョセレーゾ監督に指導力がない、とは言わないが、1シーズン制になったとたん、チームに不協和音も出た。規律という面で、このチームが優勝できなかったと言えなくもない。だから、筆者は鹿島が優勝しなかったことをうれしく思っている。大宮、清水、千葉といった、日本人選手の才能を伸ばして勝ち進むクラブがいい成績を残してほしいといつも思っている。


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