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2005年12月22日(木) 今年は静かなプロ野球

筆者は、当コラムで今年のプロ野球のシーズンオフは大混乱と予測した。西武、横浜の2球団が売りにだされるか解散、阪神のオーナーが変わって株式上場球団が誕生、けっきょく10球団・1リーグになると考えていた。ところが、暮れも押し詰まった今日の今日まで、大きな動きが認められない。
オフの目玉は、清原和博内野手(38)と中村紀洋内野手(32)の再就職先。清原は、読売から戦力外通告を受け、去就が注目されていた。もう一人の中村は、ポスティングシステム(入札制度)で米大リーグに挑戦した今季、ドジャースでわずか17試合の出場にとどまったが、マイナーの3Aラスベガスでは22本塁打、67打点の成績を残した。
清原、中村のどちらも挫折した者同士、彼らの再就職先に注目が集まったが、けっきょく二人はオリックス入りを表明した。この補強で、オリックスの得点力不足は解消の見通しが立った。
報道では、清原は15日に亡くなったオリックスの仰木彬前監督から、昨年オフにも熱心に誘われたことを明かし「(戦力外通告を受けた時は)身も心も切られた気持ちだったが、もう一度、野球をやりたいと思った。地元大阪、手を差し伸べてくれたオリックス、自分を育ててくれたパ・リーグ、プロ野球ファンのために精いっぱいプレーしたい」と語ったという。
亡くなった仰木前監督といえば、近鉄で野茂、吉井、オリックスでイチロー、長谷川、田口、木田、野村らの日本人大リーガーを育てたことで知られている。とりわけ、野茂のトルネード投法、イチローの振り子打法という個性を損なわなかった慧眼に対する評価が高い。V9戦士のD氏がオリックス監督時代、D氏がイチローの打撃を改造しようとして、拒絶された話は有名だ。仰木氏がオリックスの監督に就任しなければ、イチローの才能は埋没した可能性が高かった。その仰木前監督の死が図らずも求心力となって、二人の「大物」をオリックスに導いたことになる。これぞ「仰木マジック」の極みか。
一見美談のような、二人の「大物」のオリックス入りだが、戦力的にはどうなのか。筆者は清原はまず、期待できないと考える。何度も当コラムで書いたように、清原が本気で体重(上半身の筋肉)を絞り、下半身の負担を軽くした上で下半身強化に励めば、ネームバリューで相手投手の投げそこないを本塁打する可能性もあるものの、肉体的衰えというマイナスと、指名代打制度というプラスを相殺しても、読売の最後のシリーズ・96試合出場、打率2割1分2厘、22本塁打の成績を上回ることはまずない。中村も、米国3Aの成績程度が精一杯だろう。それよりも、清原の走力のなさが、まさに足かせになって、チーム力は低下する。
しかし、どのみちオリックスは人気はない。話題性にも乏しい。いまさら失うものなど何もない、という観点に立てば、清原のピアス(来年はつけないらしいが)、巨漢、異形で客が集まれば興業的にはプラスか。筆者にはよく理解できないけれど、キヨ、ノリと慕うファンも少なくない。巨漢二人組は、存在感だけは十分だけど、スピード感を楽しみたいファンには、逆に失望を与えるだけだろう。


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