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2005年12月11日(日) 柏は基本の見直しが必要

J1・16位の柏が入れ替え第2戦目に2−6で甲府に大敗(第1戦の1―2と通算で3−8)。J2に降格した。
甲府は前半10分にGKと1対1になったバレーが先制のゴール。その後もバレーはPKを含む6得点と大活躍した。柏は後半にDF永田が2枚目の警告で退場したこともあって守備が崩壊した。
柏が降格した理由はいろいろあるだろうが、入れ替え戦という短期戦を迎えるストラテジーがなっていなかった。柏は混戦のJ1最終節、優勝を争う鹿島にほぼ無抵抗で敗れて日程を終えた。同じ最終節、優勝最短距離のC大阪と対戦したF東京は終了間際に2−2の同点に追いつき、C大阪初優勝の夢を砕いた。優勝の可能性を残す千葉と戦った名古屋も、結果は逆転負けを屈したものの1−0でリードしていた時間の方が長かった。プロならば、最終節に全力を尽くすべきなのだ。
筆者は「運命の日」(2005年12月02日(金) ) と題した当コラムで、最終節の柏が優勝の可能性を残した上位チームと同じくらい重要だというような意味のことを書いた。結果論でいえば、筆者の予言したとおりだった。柏は前述したように、最終節で鹿島に無抵抗、無気力で大敗した。一方の甲府は、J2最終節に首位の京都に競り勝った。サッカーで勝ち続けるためには、勢いが必要だ。「たとえ負けても、自分達のスタイルが貫ければ・・・」と筆者は書いたけれど、柏はそのような戦い方を放棄した。よくいえば「戦力を温存」したともいえるが、結果的には「戦わなかった」のだ。
柏の敗因として、人事面にも触れておかなければいけない。柏は終盤、降格圏脱出を目指してラモス氏(元ヴェルディ他)をコーチに招いた。ラモス氏の役割は、“おとなしい”といわれる柏の若い選手の精神面に活を入れることだといわれた。「戦う姿勢」を注入するとか・・・。ところが、ラモス氏入閣後、柏の成績は向上しなかったばかりか、悪い傾向が現れた。第一は退場者の増大である。データをとっていないけれど、おそらく、退場者が出なかった試合の方が少ないのではないか。入れ替え2戦目、重要な分岐点の1つだけれど、勝敗を左右しかねない時間帯に柏は退場者を出した。この退場で柏の逆転勝利は消えたといってもいいすぎでない。
第二は守備の崩壊、そして第三は危険なプレーの増大である。第二、第三は、退場者と無関係ではないけれど、ボックス近くで相手に決定的なチャンスをつくらせる場面が多すぎるし、危険なタックルも増えた。球際に強いということと、危険なプレーをすることとはまったく違う。
入れ替え戦を見ていても、柏が目指すサッカーのスタイルが見えてこない。主力の欠場ということもあるけれど、若い選手の運動量は多いように思える一方、無駄な走りのようにも思える。
柏がとるべきチーム建て直し策としては、サッカーの基本、チームづくりの基本、スタッフ構成の基本・・・と、とにかく「基本」からやり直すことが重要だと思う。
最後になってしまったけれど、甲府は2試合とも、いいゲームをした。すべてにおいて、J1の柏を上回っていた。とにかく、おめでとうございます。
この試合のヒーローは、1試合6得点のバレー。彼は来季、J1でブレークするかもしれない。エメルソン(元浦和)以上に「化ける」かもしれない。
この日のバレーのシュートはすごかった。彼の右足の照準は、相手DF、相手GKという遮蔽物を外して、ゴールまでの最短距離を飛んでいく。その正確さは、ボーリングの両側のガーターと呼ばれる溝をボールが走り抜けるかのようだった。スライスもフックもカーブもかからない。柏戦は、おそらく「彼の日」だったのだろう。神がバレーの背中に憑いた。一人少ない柏のDFではバレーを止められない。
柏に甲府と戦うストラテジーがあったならば、入れ替え戦の第一試合(柏アウエー)で柏DFはバレーを徹底マークすべきではなかったか。柏にとって、アウエーの戦い方の選択として、0−0の引分もあった。ホームに戻れば、柏には熱狂的なサポーターが待っている。結果論だが、柏は甲府を甘く見ていた、といわれても仕方がない。甲府は、J1経験クラブでない、J1経験者も見あたらない・・・そんな甲府に負けるはずがないと。結果として、初戦に守備のストラテジーを描けなかった。柏の首脳陣は、戦え、戦え、と柏の選手の尻を叩くだけ・・・
ところが、柏はアウエーで甲府に2−1で負けて、柏の自信は焦りに変わった。ホームで早く追いつかなければという意識が強まり、柏の守備は統制を欠き、マンマークの約束事もない(元からないけど)まま、力まかせの攻撃と守備を繰り返しDFの隙間を甲府に突かれた。第一戦でバレーにきついマークをつけていれば、バレーは自由を奪われ、調子を狂わせた可能性もあった。
柏のスタッフが甲府の戦い方を分析したことがあったのか、すら疑問だ。無名の甲府に足元を救われたというよりも、一発勝負のゲームに取り組む基本を忘れていた、といわねばならない。


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tram