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2005年11月18日(金) 高原の才能と限界

アンゴラ戦は日本のFW陣の課題を浮き彫りにした試合だった。いつものことではないか、と、サッカーに詳しい人ならいうかもしれない。日本代表の決定力不足については、語り尽くされた感がないではないのだが、W杯出場国すべてが決まったこの時期、日本代表最大の問題が未解決で放置されたままだ。もちろん、その責任は・・・にある。
さて、筆者は、アンゴラ戦を通じて、問題の日本のFWの一人・高原のプレーを見ていて、彼の才能と限界を見たような気がした。
高原の才能は反応の鋭さにある。いまのところ、日本選手の中で一番だ。もう一人の日本を代表するストライカー・大黒は「動き出し」のよさ(速さ)が特徴だ。高原はボールに対する反応において大黒より勝っており、控えとはいえ、ドイツのクラブに属していられるのは、所属クラブの首脳陣が高原のその部分の才能を買っているためだろう。
では、高原の限界とは何か――シュートを“狙う”意識の欠如にある。彼はボールに直感的に反応する能力があるので、その感覚がフィットした試合では大量点を入れる可能性が高い。
アンゴラ戦、高原に決定的チャンスが3度あり、彼が放ったシュートは2度バーに当たり、1度はGKの正面だった。微妙なズレのため、高原はゴールネットを揺らすことがなかった。惜しいけれど、こういう試合で決められなければ、ワールドクラスのFWにはなれない。高原には抜群の反応力(センス)があり、平凡なFWならシュートチャンスに結び付けられないような場面でもシュートが打てる。このことは高原の類稀な才能なのだが、決められなければ、いい場面に「顔を出す」FWで終わってしまう。こうした限界性が、高原を控え選手にとどめている。
高原のような選手にも、使い道はある。最も適しているのは、リードされた局面だ。何も手を打たなければ負けてしまう状況ならば、高原の直感的才能に賭けてもいい。
アンゴラ戦のもう1人の先発FWは柳沢だったが、筆者は柳沢をまったく評価しない。以前、当コラムで書いたとおり、試合に出られない選手を代表に呼ぶべきでない。筆者は、柳沢の代表入りそのものに疑問を持っている。
高原がサブ、柳沢が代表外となれば、先発FWはだれがいいのか。Jリーグの日本人FWで最高得点を上げている大黒が、実績において一番手であり、次いで巻(千葉)が二番手だ。
大黒の才能は先述のとおり「動き出しのよさ、速さ」にある。一方、巻の才能は、ゴールを「狙っている」姿勢とゴールを生み出す役割がこなせるところにある。ゴールを狙わないFWなんかいないといわれるかもしれないが、大黒が相手DFの裏に飛び出る特徴をもったFWなら、巻はGKとDFの間(GKの前)で勝負したり、DFを背負いながら、あるいは、DFの前で基点となるポストプレー、パワープレーができるFWだ。巻に不足しているのは、国際試合の経験だけだ。彼を代表で使ってこなかった責任は、いまの代表監督にある。
W杯出場メンバーにおけるFWの枠は、日本代表のシステムなら4人だから、大黒、巻、高原の3枠が埋まり、残りは1枠となる。1枠は実績からいえば、田中(浦和)、大久保(マジョルカ)、久保(横浜)だろうが、田中、久保はケガでだめ、大久保は常時出場できていないので、いまの状況が続けば、3人とも選べない。となると、所属する柏が二部落ちしなければ、玉田が順当だ。
Jリーグで活躍するFWは、外国人選手がほとんど。それが日本サッカー界の現状だ。高原、大久保、柳沢は海外クラブに移籍したものの、試合に出場できない。この移籍は失敗かもしれない。代表FWに最短距離にある大黒、巻、高原、玉田の4人を鍛える時間はない。FW問題は、代表監督のチームづくりのビジョンのなさが主因――と言っても、もう遅すぎる。


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