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2005年10月04日(火) 阪神タイガースはだれのもの?

ファンのもの――という、一見、真実に思えるご意見。だが、市場主義経済では本来、自由競争が前提となる。聖域はないはず。だから、ある日、阪神電鉄の筆頭株主が変わることもある。新しい株主が阪神タイガースを譲渡することもあり得る。しかし、こんな優良なコンテンツを手放す企業は少ないし、買い手はいくらでもいるから、タイガースがなくなるとは考えにく。いずれにしても、タイガース球団を運営するかどうかについては、新オーナー(新経営陣)を迎えての議論となる。
報道によると、阪神タイガースの某SDが、阪神球団は公共財だから、村上ファンドの株の買い込みはけしからん、という意味の発言をしたらしい。が、まったく噛みあわない意見というほかない。自由な経済活動について、感情的批判をするとはさすが「体育会」。某SDの転倒した思考のほうが問題だ。阪神タイガースのオーナーは永遠に現阪神電鉄経営陣であると限れば、それこそ私財そのものではないか。
阪神タイガースが公共財ならば、球団の所有が不特定多数になることも、あるいは、所有者が自由に交代可能となることも、想定しておかなければいけない。たとえば、タイガースの所有者がファン一人一人である可能性(ソシオ制度)もあるし、複数の所有者の共有になる可能性もあるし、電鉄以外の企業あるいはファンド1社による所有となる可能性もある。
阪神電鉄現経営陣のように、“一度握ったものは放さない”というのであれば、株式を“公開”してはいけない。某SDの誤解は、阪神タイガースファン=阪神電鉄現経営陣ファンだという思い込みにある。某SDが阪神電鉄の現在の経営陣=株主に肩入れしたい気持ちはわかるけれど、「公共財」という言葉を正しく理解して使ってくれないと困る。
タイガースファンは甲子園に愛着をもっている。近々甲子園は改装の予定があったのだが、このたびの一件でそれが延期されるかもしれない、といわれている。これもおかしな、そして、幼稚な議論だ。いま現在、タイガースファンはどれだけのサービスを受けているのか知らない。阪神が優勝したので、当面不満はないのかもしれない。だが、新しいオーナーに変われば、ファンはもっと斬新で手厚いサービスを受けられる可能性だってある。某SDがいまのオーナーの立場ではなく、真にファンの立場を代弁するのならば、まず、市場における競争を認めて、それがファンにもたらすメリットについて、しっかりとファンに伝えるべきではないか。ファンの名を借りて、自由な経済競争に恫喝を加えるような発言は慎んでいただきたい。
さて、このたびの村上ファンドの一件は、阪神タイガース球団の身売り話ではない。阪神電鉄の株主の構成が変わり、経営陣が変わる可能性があるというにすぎない。だから、阪神電鉄の経営が危うくなって、たとえば、ライブドアのようなIT企業が阪神タイガースを所有することとは違う。万一そうなったとしよう。それでも、幸いにして「阪神」という表現は、大阪の「阪」と神戸の「神」、すなわち大阪〜神戸一帯を表す地域名なので、「阪神電鉄」を意味しない。だから、かりに阪神電鉄以外の企業がタイガースを所有しても、「阪神」という冠が残る可能性も残されている。
いずれにしても、その判断も新しい球団所有者を迎えてからの議論になる。福岡ダイエーホークスを買ったソフトバンクが、福岡ソフトバンクホークスと名乗ったように、阪神電鉄の面影を残す阪神タイガースを●●タイガースに改名しない保証はないけれど、阪神=ハンシンをどう読むか、という瑣末な課題だ。


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