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2005年07月22日(金) ラモス監督には反対だ

東京Vのアルディレス監督が解任された。筆者は当コラムで彼を名将と賞賛したこともある。そんな「名将」に何が起きたのか、どこでどう歯車が狂ったものか外部の人間には分からないのだが、結果からみて、クラブが彼を解任した措置は当然だ。
東京Vといえば、前身は日本リーグの読売クラブ。Jリーグ発足時にはヴェルディ川崎と改名し、カズ、ラモス、北澤、柱谷といった代表レギュラークラスを抱える常勝軍団だった。当時の日本代表はW杯アメリカ大会アジア地区予選をドーハで戦い、イラク戦、試合終了直前のロスタイムに同点ゴールを決められ、W杯出場を逃した。この試合は、いまでは伝説と化し、「ドーハの悲劇」として日本国民の記憶の中に生き続けている。
4年後のフランス大会では、日本はアジア地区予選プレーオフでイランを破り、初出場を決めた。ところが、W杯直前合宿において、カズ、北澤の2選手が日本代表から外されるというハプニングが起きた。二人が代表から外された理由は不明だが、当時大スターだったカズの代表落ちは大きなニュースだった。
さて、読売クラブ→ヴェルディ川崎→東京ヴェルディと呼称は変わったものの、このクラブが読売グループにより経営されていることに変わりはない。そして、Jリーグ黎明期、日本サッカー界の人気を独占した常勝クラブであったにもかかわらず、その中心選手だったカズ、ラモス、北澤らはW杯に出場していない。そして、いま、カズはJ1神戸からJ2横浜FCへの移籍が決まり、また、S級ライセンスを取得したラモスは、東京Vの次期監督候補と噂され、境遇は異なるものの、二人は共に報道の渦中にある。
ここからが本題だが、筆者は、ラモスが東京Vの監督に就任することに反対する。ラモスが監督一年生だからではない。ラモスに限らず、だれだって、監督デビューのときは一年生だ。筆者がラモスの指導者としての資質を知らずして、東京Vの監督就任に反対する根拠は、ラモスはおそらく、彼が活躍した読売クラブ、ヴェルディ川崎のサッカーイメージを払拭できないと思うからだ。
ラモスはかつて、エメルソン・レオンが監督としてヴェルディ川崎に就任することを聞いて、京都に移籍した。ラモスの移籍理由は、彼がレオンの指導理念である規律重視を嫌ったからだといわれている。サッカー観は人それぞれで異なることは当たり前だが、レオンはその後、ブラジル代表監督に就任し、短期間で解任された後も、ブラジルリーグの多くのクラブで監督を歴任した。今シーズン、J1神戸に招聘されたが、不可解な解任にあい、いまはパルメイラスの監督におさまったようだ。
監督レオンを嫌ったラモス→ラモスが活躍した読売クラブ・V川崎→現役時代のラモスのプレーと、イメージをつなげていくと、監督ラモスが目指すサッカーの質がなんとなく見えてくる。その幻影は、おそらく、いまのJリーグのレベルにはとどかないもののように思える。
東京Vの課題は、つなぐサッカーから、走るサッカー、パワフルなサッカーへの脱皮だ。具体的には、一対一に負けない当たりの強さ、相手に走り負けないスピードと運動量、攻守の切り替えの早さ、チーム戦術を理解する規律重視・・・といった基本の復元にある。簡単にいえばパス&ゴーだ。
ラモスがどういうサッカーを目指すのかわからないものの、東京Vの改造はこのクラブの悪しき「伝統」を払拭するところから開始されなければならない。新生ヴェルディを立ち上げるには、読売クラブ以来の「伝統」を否定する指導者の方が向いている。(文中敬称略)


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