Sports Enthusiast_1

2005年07月04日(月) 1つの時代が終わった

プロ野球、読売ジャイアンツの終身名誉監督・N氏が復活した。脳梗塞の後遺症であろうか、右手はポケットに入れたままだが、たいへん元気な様子だった。N氏の完全復活を心より祈りたい。
N氏については何度も当コラムで書いた。1950〜60年代、野球少年だった人ならばだれでも、N選手のようになりたかった。N氏の存在はまさしく奇跡だった。それは、敗戦から驚異的復活をとげようとする日本経済にアナロジーされる奇跡だった。N氏は野球を通じて、天才の輝きを放った。
さて、21世紀、プロ野球をとりまく環境は変わった。日本人として非凡な才能を誇る野茂、イチロー、松井らがメジャーリーグ(=MLB)で活躍するようになった。しかし、私たちは、米国から送られてくるTV中継映像で彼等のプレーを見ても、あの日のような感動はない。反対に、MLBでは彼等がせいぜい上級の部類に属する選手に過ぎないことを知らされる。日本のトップは、MLBのやや上の部類か・・・と。
私たちが見たN氏。あれは幻影だったのだろうか。私たちはなぜ、N氏のプレーにあれほどまでに魅せられたのだろうか。それを最上、最良質のプレーだと信じて疑わなかったのだろうか。私たちはあのとき、MLBを知らなかっただけなのだろうか。そんなことはない。あのころの日本人がN氏のプレーに心躍らせ、憧れ、スーパースターとしてあがめたことに間違いはない(はずだ)。N氏こそが、最大のスーパースターである(はずだ)。あの当時、日本人がN氏をスーパースターと考えたことを、日本市場の閉鎖性に重ねるつもりはない。スポーツにおける国民的英雄というものは、国民の中で一番うまければいい(はずだ)。
時代は変わった、そして、私たちの信じた時代は終わった。N氏に託したような夢を、私たちはもう二度とみることがない(のかもしれない)。


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