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2005年06月01日(水) 支離滅裂

いったいジーコ監督は何を考えているのだろうか。報道によると、バーレーン戦の布陣は、ワントップ(柳沢又は鈴木)、2シャドー(中村・ヒデ)、以下、サイドハーフ、2ボランチ、3バック(は不変)だという。システムとしては、3−4−2−1もしくは、3−4−3か。
この陣形を理解することは難しい。中村にゲームメーカー、ヒデにポイントゲッターの役割を期待しているというが、支離滅裂とはこのことだ。思い出してほしい。イランに負けた日本がその次のホームバーレーン戦で辛勝できた主因は、ヒデの積極的な守りだった。圧倒的な運動量と一対一の強さでバーレーンの中盤を封じ込め、相手の中盤の攻撃の基点をつぶしたのがヒデだった。ヒデの闘争心と守備力で日本は守り勝ち、結果、相手のミスで決勝点をもぎとった。
アブダビ合宿直前、日本代表は親善調整2試合を0−1で失ったため、日本の得点力不足が指摘された。が、そもそも日本代表がこれまで、攻撃陣の活躍で勝利した試合が何試合あるというのだ。日本代表は、ジーコが監督就任した日から今日まで、トルシエが育てた守備力という遺産で勝利してきた。そのことを象徴するのが「3バック」、つまり、「3バック」とはトルシエサッカーを意味する記号だろう。
さて、ドイツ行きを左右する重要なアウエーでのバーレーン戦――日本代表の基本戦略はなんといっても「守り」だろう。かりに3−4−2−1でヒデが前に残れば、中盤の守りのリーダーシップは小野か福西が取ることになる。筆者は福西を信頼していないので、小野ということになるがしかし、小野は中盤の守備のリーダーではない。あくまでも、下がり目で相手マークの緩いエリアから自由な立場で攻撃の基点となる。日本代表における守りの絶対神は実はヒデであって、アウエーの日本は、固い守りからカウンター攻撃で得点をうかがわなければいけない。そのカウンターの基点こそ、ボランチ小野にほかならない。
先のアウエーのイラン戦で日本は攻め勝とうと焦って、不慣れな4−4−2を採用して負けた。今度のアウエーのバーレーン戦でも、3−4−2−1という不慣れなシステムで臨もうとしている。アウエーで敢えてリスクを負おうとするジーコサッカーとは・・・
実は、ここにジーコサッカーの本質がある。ジーコ監督というのは、何度もここで書いているように、規律や戦略をもっていない。彼が信じているのは「個」だけだ。「個」崇拝は、優秀な選手から指導者になった者が陥りやすい傾向だ。日本プロ野球では「長嶋巨人」がそのとおりだった。長嶋氏もチームのコンセプトをもたず、実績重視で選手を集め、ドリームチームをつくって、今日の「弱い巨人」の基礎をつくった。ジーコ監督もヒデという「個」にすべてを託し、監督の仕事を回避しようとしている。ヒデが超人ぶりを発揮して得点を上げれば、日本は勝てるだろう。だが、それが日本代表のあるべき姿なのだろうか。反対にヒデの調子が悪ければ、日本代表は得意のはずの「守り」が機能せず、崩れることになる。
サッカーだから結果はわからない。しかし、ジーコ流のヤマカン、場当たりサッカーでは、日本のサッカーの質の向上はない。


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