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2005年05月12日(木) 日本のクラブは弱い

ACL・1次リーグ第5戦が行われ、F組で2位の横浜F・マリノスはアウエーで首位の山東(中国)と対戦し、1−2で逆転負けした。通算3勝2敗の勝ち点9で最終戦を残し、E組のジュビロ磐田に続いて1次リーグ敗退が決まった。この結果、12月に日本で開催される世界クラブ選手権への日本勢の出場はならなかった。
TV観戦の限りでは、明らかに横浜の力負けだった。敵地での圧力、あまりうまくない韓国人主審による不可解な判定、タックルて転べば、時間稼ぎとばかり、グラウンドに長時間寝転ぶ山東の選手達のアンフェアーな態度も見られたけれど、それらが敗因ではない。横浜はすべての面で山東に圧倒されていた。横浜の選手の多くは、過密日程による疲労や故障のため、調整不足が目立った。そのため、集中力、精神力、体力、運動量、スピード、身体の切れの面で、山東に負けていた。終了間際、山東のカウンター攻撃を止められなかったのは、リスク覚悟の前がかりという面もあろうが、スタミナが持たなかったためだ。
磐田、横浜といえば、Jリーグの有力クラブ。にもかかわらず、どちらも、アジアの1次リーグで敗退した。このことは良くない兆候どころか、日本サッカー凋落の始まりかもしれない。磐田、横浜を倒した、城南一和(韓国)水原(韓国)、山東(中国)、シンセン(中国)の選手は、磐田、横浜より、運動量・パワーがあり、実際の年齢を比較したデータがないものの、相対的に若いように思える。磐田・横浜に10代選手で固めろとは言わないけれど、世界のクラブでは10代のレギュラーが多数いる。Jリーグでも、森本(東京V)、水野(千葉)、本田(名古屋)らが話題に上っているけれど、話題になるということは、10代のレギュラーが珍しいということで、アジアばかりか世界の傾向を日本人が認識していないことの証左だ。
加えて、何度も書くことだけれど、筆者にはJリーグの選手の当たりの弱さが気にかかる。Jリーグの「お嬢様サッカー」では、アジアですら勝ち残れない。
日本は先のアジア杯で優勝したのだから、アジアで一番強いと思いがちだ。これは、日本人が「代表サッカー」「代表幻想」「W杯信仰」に陥っていることの現れだ。日本人が4年に1度行われるW杯を心待ちにし、その予選に一喜一憂することが悪いとは言わない。しかし、サッカーの本質はクラブ本位、すなわち、“地域密着”“国内リーグ優先”が望ましい。Jリーグが日本のサッカーの基盤でなければならない。Jリーグは、6月のW杯アジア予選のために開幕早々から過密日程を組んだ。横浜、磐田はさらにACLの試合が加わり、超過密日程となり、リーグ戦で鹿島の独奏を許している。この状態は日本のサッカーにとって、必ずしもいいとは思えない。
プロスポーツ界には、“ドリームチーム幻想”がある。プロ野球では読売が豊富な資本でそれを目指した。ニューヨークヤンキースもそれに近いものを目指した。サッカーではレアルマドリード(スペイン)、チェルシー(イングランド)がそれを目指し失敗をした。昨年から今年にかけて、その失敗を乗り越えようと、レアルはルシェンブルゴを、チェルシーはモウリーニョを指導者に呼んだ。才能のある指導者で規律を強め、チームの再構築に成功するだろう。ドリームチーム型だけではサッカーは勝てない。
日本のプロサッカー界では、ドリームチーム幻想が「日本代表」に託されている。日本のサッカーファンは、日本代表とどこかの代表が戦う試合が最高のマッチメークだと信じている。代表試合ならば、最高のサッカーが見られると勘違いしている。代表サッカーは、サッカーという体系の1つであって、最高でもなければドリームでもない。代表がサッカーの究極ではない。筆者の信ずるサッカーの体系は複合的なものであって、代表をトップに抱く三角錐ではない。代表幻想が晴れて、それぞれのクラブがそれぞれの宇宙を形成するようになったとき、日本のサッカーが根付いたといえる。


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