Sports Enthusiast_1

2005年05月01日(日) 無観客試合

FIFAは29日開いた規律委員会で、6月8日に平壌で行われる予定だった北朝鮮vs日本を第三国で、しかも観客なしで行うという処分を決めた。代替開催地はFIFAが今後、日本協会など関係機関と協議して決める。北朝鮮は3日以内に異議申し立てができるが、いまのところ、北朝鮮からの異議申し立てはない模様だ。しかし、今回の処分にどのような反応を示すかは不透明で、予断を許さない。
厳しい処分だが、このたびのFIFAの裁定はサッカーは政治に従属しない、という意思を明確に表示したものとして評価したい。日本代表への影響が懸念されるというが、そういうレベルの問題ではない。サッカーをナショナリズムの醸成に利用して排外主義を推し進めるような国家にはサッカーの国際試合を開催する資格がない。北朝鮮、中国、イスラエル、米国、イラン、イラク、ロシア・・・であろうが、不祥事を未然に防止する観点からして、FIFAの裁定は極めて妥当なものだ。
これでまた、日本代表にフォローの風が吹いた。中立国、無観客試合となれば、平壌でやるより、日本代表の負担は相当軽くなる。
有利な条件の1つとして、日本の豊富な資金力が挙げられる。東南アジアでの試合となれば、事前に最低1週間の調整期間が必要となる。日程は未定だが、平壌の日程にかぶれば6月だから、この季節の東南アジアは暑いし湿度が高い。北朝鮮のように国際試合の経験の少ないチームは、調整に相当苦労するはずだ。日本代表がフランス大会を決めたマレーシアでのイランとのプレーオフでは、イランチームの到着は試合開始の2、3日前だったような記憶がある。日本はかなり前に現地に着き、事前調整をしたはずだ。北朝鮮がどれだけ代表に資金援助できるかは不明だが、国情からみて、長い調整期間をもうけられるほど、余裕があるとは思えない。一方、日本代表は資金は潤沢だし、海外遠征の経験もが豊富だ。先のアジア杯でもいい結果を出しているとおり、高温多湿地域で行われる試合に適合できる。
第二は、言うまでもなく、サポーターがいない試合なのだから、アウエー特有のブーイングや圧力がないわけで、平壌に比べて、日本に有利だ。もっとも、地元開催が北朝鮮選手に与える精神的負担も軽減されるので、重荷が消えた分、北朝鮮選手もリラックスできる。なので、中立国、無観客試合の実施は、精神的負担という領域では、互いに五分五分の影響といったところか。
第三は、審判のジャッジだ。北朝鮮に同情して日本に厳しい笛が吹かれるという意見もあろうが、それはないだろう。むしろ、このような制裁のもとを糾せば、主審の判定だった。だから、主審が判定の厳正・中立をより強く意識するに違いない。その結果、判定に不服を示した北朝鮮よりも、日本に有利な笛が期待できる。さらに、平壌の2試合で北朝鮮の選手たちは審判不信を強め、このたびの裁定によって、国際社会全体に対して、不信感を強めている。そういう精神状態ならば、普段なら気にならない判定でも被害者意識を感じるだろう。北朝鮮は日本及び国際社会全体を敵にして、海外でしかも無観客という異常な試合を強いられている。
だから、注意しなければいけないのは、こうした異常な環境で闘志を燃やす北朝鮮の「反逆精神」だ。「窮鼠猫をかむ」の諺どおり、究極まで追い詰められたネズミが、絶対有利の日本代表という猫をかみ殺すこともないとは言えない。日本が北朝鮮の闘志をはぐらかすのではなく、真正面からぶつかりそれに負けなければ、勝つチャンスは平壌よりも多い。


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