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2005年03月10日(木) Jリーグは、わかっていない

Jリーグが先の磐田・福西の(誤審)ゴールを「正当」とする正式見解を出し、川渕キャプテンがそれを批判した。あたりまえだ。Jリーグは何もわかっていない。
今回の誤審事件をグローバルな尺度で考えてみよう。このたびのプレーについて、「誤審はサッカーにつきものだ」と言って、笑ってすます国もあるし、「神の手」といって寛容に受け止めてくれる国もある。受け止め方はさまざまだろうが、そう簡単に済まされないこともある。以下に最悪の状況を想定してみよう。
●福西は「一発レッド」で退場 
福西の「ハンド」が故意的か偶発的なものか、という判断が大きな前提となる。「神の手」というのは故意を意味するのだが、海外であれば、あのプレーは通常、故意とみなされる。私も故意だと確信している。
「ハンド」した福西は代表選手だ。代表選手は国旗を掲げて国際試合に出場する。福西は見方のフリーキックを「手」でゴールした。これは絶対にやってはいけないプレーの1つだ。世界中どこでも、福西はレッドカードを受け退場させられる。W杯予選試合なら、数的不利となる日本が勝点を失う可能性が高い。福西のハンドは、日本代表を窮地に陥れるものだ。
もし、日本代表・福西がアウエーで同様のプレーをしたら、福西に対するブーイングは半端ではない。スタンドから何か飛んできてもおかしくない。地元の警備が、福西を本気で警護しない可能性だってある。
●「誤審」で日本が勝ったら・・・
どこかの国の審判が「誤審」をしたとしよう。横浜vs磐田では、アウエーの磐田が勝ったが、W杯予選のような公式試合でアウエー・日本代表が勝利したとしたら、日本代表のバスは何発投石を受けるかわからない。反日感情の強い国であれば、命の保証もない。翌日の新聞・テレビの報道については想像だにしたくない。昨年アジア杯が開催された東アジアの隣国や、政治的問題を抱えた某国との対戦であのようなプレーが起きたとしたら・・・
●主審が「誤審」をしたら
主審・岡田が海外でこのような誤審をしたとしよう。誤審でホームチームが負ければ、主審・岡田のミスジャッジは、試合後の暴動を誘発する。主審・岡田の生命の保証もない。大げさのように聞こえるかもしれないが、世界中のサッカーが健全な娯楽として発展しているとは限らない。サッカーは、国家公認のものばかりか、アンダーグラウンドの賭博の対象になっている。南米のどこかの国で、代表選手が射殺された事件があったが、賭博がらみという説が濃厚だ。          
Jリーグが「お嬢様サッカー」であることは何度も書いた。球際の甘さ、競り合いの弱さ、タックルの甘さといった個々のプレーはもちろんだが、審判の判定の甘さ、誤審に対する措置を含め、サッカーの基盤すなわち社会環境そのものの甘さだ。
サッカー選手の生命が脅かされたり、選手のバスが投石を受けたり、試合後暴動が発生する社会が良いか悪いかといえば、もちろん悪いに決まっている。日本はサッカー試合の結果次第で暴動は起きない「良い国」なのかもしれないが、日本代表が危ない国で試合をすることを回避できない。
横浜vs磐田における「誤審」及びその報道並びにJリーグの公式裁定は、日本サッカーの甘さを象徴している。フリーキックを「手」で入れるというプレー、それを誤審すること、のどちらも絶対にあってはならない。ところが、あってはならないことが起きてしまった。起きてしまった以上、透明性のある「処分」が必要だった。繰り返せば、選手・福西及び主審・岡田には、自主的に2試合の出場辞退が望ましかった。「休養」という表現でもいい。
このような「処分」の根拠は、先に書いたとおり、国と国の代表試合で「不正」や「誤審」が起きれば、どのような事態が惹起されるか、最低限の想像力をめぐらせばいい。
Jリーグの裁定は、日本流に言えば「玉虫色」なのかもしれないが、それは日本という社会基盤にのみ有効な解決手段にすぎない。もちろん、Jリーグ内部では厳しい処分が進んでいるのかもしれない。公的発表(建前)は、審判制度の防衛という結論に至ったのかもしれない。本質は部外者にわからないけれど、公的な裁定をみる限り、Jリーグは何もわかっていない。
最後に、主審・岡田の評価について、付け加えておこう。岡田はW杯で笛を吹いた日本人審判の一人としてマスコミの評価は高いが、当コラムで書いたとおり、私は彼のレフェリングについて以前から疑念を抱いていた。
冷静に考えてみよう。磐田がロスタイム近く、ゴール近くでフリーキックを得た。キッカーは名波。ターゲットはだれ?これは設問にならないくらいの問だ。答えは長身でヘディングの強い福西に決まっている。サッカーの主審で飯を食っていこうとする者ならば、球道が定まらないうちから、福西の動きを意識していなければいけない。
違う角度もある。福西のマークは、これまた代表の中澤(横浜)に決まっている。問題のシーンは、横浜vs磐田というJリーグの実力派クラブ同士の勝負であると同時に、福西vs中澤という代表選手同士の勝負でもあった。看板がかかった大勝負に手を使った福西は、真剣勝負に拳銃を使ったようなものだ。しかも、代表二人が競り合ったとき、主審が両者の動きを正確に捉えていなかったとするならば、いったいどういうことなのか。
報道によると、このたびの誤審に対して、抗議が殺到しているという。当然だ。福西のプレーは故意のハンドで、故意のハンドを主審が見逃した。そこに疑念を抱くのは、サッカーファンならば当然のことだ。
私は「加害者」となった磐田のサポーターではないが、サポーターだったとしたら、このたびの磐田の勝利を喜べないし、磐田のサポーターを辞める。福西のプレーは、それくらい後味の悪いプレーであり、釈然としない判定だった。
私はこれを機にして、Jリーグに逆風が吹かないことを祈っている。悪い流れというのは、元に戻りにくいものだ。主審・岡田と磐田の関係について私は知らない。新生磐田と磐田の新監督に白星を献上させたい空気がJリーグのなかにあったとすれば、Jリーグの腐敗が始まっている。腐ったリンゴはすぐ取り出さないと、一箱全部が腐ってしまう。


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