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2005年02月16日(水) ドイツへの道(完)

日本代表はかなり遠回りをしながらも、昨年、W杯アジア一次予選を突破しアジア杯を制した。そして、05年、W杯アジア最終予選の初戦に勝利し勝点3を上げ、グループトップに躍り出た。結果から見れば、順風満帆、ジーコを評価しなければいけないのではないのか。そう思いたいところだが、私が描く代表のイメージと、いまの日本代表の姿とは相容れない。
たとえば、話題の北朝鮮との戦いでは、日本は1点リードしたところで、ボールキープをし出した。キープにこだわるあまり、バックパスが増えて、自陣に押し込まれた。がむしゃらに突進する相手に対する戦術としては、最悪の選択だ。プレスをかける相手に対しては、追い込まれる前にワンタッチで素早いパス交換をして、ゴールに迫れれば理想だ。あるいは、前線(FW)にロングボールを当ててキープし、走りこんでくる二列目が仕事するパターンも考えられる。相手のプレスにかからない攻撃ができれば、追加点のチャンスはあった。猛烈なプレスをかけてくる(ことが予想される)相手に、バックパスをして後退するような選択はない。北朝鮮というチームが、後半のある時間帯に猛チャージをかけて得点を狙いにくることは、データにあった。
いまの日本代表は、相手チームの攻守のパターンが見えていない。戦ってみなければ相手のことなんかわからないよ、というのであれば、草サッカーだ。プロフェッショナルではない。北朝鮮戦、相手のスタミナが切れて勝ち越されなかったことは、幸いだった。日本がアウエーだったら、負けていたかもしれない。
ではどうすればいいのか。もちろんジーコが監督を辞せばそれでいいのだが、現実的にそれがないとするならば、ジーコに注文を出すしかない。
注文の1番目、「Jリーグの尊重」。代表チームはJリーグを基盤とせよ。たとえば、Jリーグでレギュラーでなければ、代表に呼ばない。大黒の成功で十分、実証されたことだが、Jリーグで活躍している選手は代表でも活躍できる。海外クラブに籍を置いていても、試合に出られない選手は、代表にしない。プロは実績重視だ。一昔前なら「海外留学」を「いい経験」と呼べたかもしれないが、いまは海外であれ日本であれ、プロならば試合に出てナンボ。
余談だが、代表選考では、Jリーグの順位は無関係だ。下位チームにいても、規律をもってプレーする選手ならば、代表に値するか否かは判断できる。
2番目、「選手を見る目はヨコ一線」。ケガ人はだめ、コンディションの悪い選手はダメ、実績があっても調子が悪い選手はダメ、規律を理解しない選手はダメ・・・特定の選手にバイアスをかけて、調子のいい選手を排除することは愚策だ。公正な競争原理を導入してほしい。とにかく、最後の練習まで見極めて先発を発表してほしい。先発メンバーの試合前発表は、いただけない。
3番目、予選リーグ、「選手のやりくりこそ、監督の腕のみせどころ」。代表チームを預かった以上、間違っても「固定メンバー」などといわないでいただきたい。貴重な親善試合を無駄にしないで、可能性を広げるように上手に選手を使ってほしい。メンバーを固定したところで、長期の予選リーグでは、およそ固定になり得ない。柔軟性、幅広くかつ多様な選択肢が代表強化にとって不可欠だ。
神は英語でGODという。GODとは、創造(Generate)、維持(Originate)、破壊(Destroy)の頭文字だ。代表チームも同じことだ。新しいチームをつくり維持し破壊し、そしてまた、創造し維持し破壊し・・・の繰り返しだ。それができなければ、代表監督としては凡人以下だ。選手が入れ替わることにより、代表チームにも浮沈は必ずやってくる。そのなかで、やりくりが超絶的に噛み合ったとき、最終勝利がやってくる。予選突破すなわち栄光の到来だ。
サッカーは人生に似ているというが、代表監督は神に似ている。だから私は、サッカーの監督を尊敬している。ただ勝てばいい、というのではサッカーを見る楽しみがないではないか。ゆえに、サッカーの監督への要求もまた厳しいのである。
ドイツへの道は険しい。もう一波乱、二波乱あると覚悟しよう。代表や監督にとっては辛い道だろうけれど、われわれファンにとっては、批判や非難も楽しみのうち。もちろん、ジーコやサッカー協会の幹部に恨みがあるわけではない。


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