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2005年02月06日(日) 日本代表の実力

いまの日本代表は強いのか弱いのか、実力は上がっているのか。素朴な疑問が残っている。確かにアジア杯では困難な状況の中で優勝を果たした。その前の欧州遠征ではチェコに勝ちイングランドと引分けた。ところが年末のドイツ戦では、ドイツに一方的におしまくられ、欧州強豪の強さばかりが目立ってしまった。
日本代表は最近、だれもが理想だと考えるメンバーを組めていない。ヒデ、小野、高原、俊輔の海外組のだれかがケガだったり不調だったりで、日本代表に参加していない試合が続いている。きのうも書いたけれど、海外組の不参加がいまの国内組中心のメンバーの固定という状況をつくりだし、チームとして結束力が生まれ、思わぬ勝利を手にしてきた。このことは偶然であり、監督の意図するチームづくりではなかったが、結果が良かったので、ジーコ監督は、個人の資質よりもチーム力、結束力を重視するようになった。
さて、02年日韓W杯に至るまで、前監督のトルシエは、選手の資質を認めながらも敢えてそれを否定し、頑なに組織、規律、結束力を掲げ、世界レベルより下の日本代表チームを鍛える指針とした。トルシエの方針はW杯ベスト16という結果に結実し、彼は監督としての仕事を成功裡に終えた。トルシエには幸運もあった。W杯が自国開催であったため、予選を免除された。ホームアドバンテージもあった。予選の組合せにも恵まれた。でも、大会には運不運はつきものだし、トルシエでなくても、このくらいの運の恵みはあっただろう。私がトルシエを評価するのは、自ら掲げた指針どおり仕事をして、結果をだしたことだ。日本代表が勝つために必要なものを彼は知っていたのだ。
一方、ジーコ監督にいたっては、試行錯誤の連続だった。個人の資質を重視するといい、創造性を掲げながら、いまは選手に規律(コンビネーション)を求めている。トルシエのフラット3を否定して4バックにこだわりながら、いまはトルシエ時代の3バックに戻っている。海外組という資質に優れた選手に依存すると言いながら、彼等抜きで結果が出ると、海外組不要と宗旨替えをする。
いまの日本代表の指針は、トルシエ時代と変わっていない。ヒデが抜けた穴を他の選手が補っているが、基本形は02年当時から進化していない。違いはDF陣の成長だ。とりわけ、中澤、田中の存在が大きい。中澤はトルシエのとき不運にも代表に選ばれなかったが、当時でも代表の力はあった。FWについては、鈴木は02年のメンバーだし高原は病気で代表に選ばれなかっただけだ。ボランチの小野、稲本はいまはケガで精彩を欠いているが、福西、遠藤と資質という面で比較すれば、前者のほうが実力は上だ。ざっと見た限り、トルシエが発見し築き上げた代表チームの遺産を引き継ぎ、3年がすぎたことになる。もちろん玉田や加地といった新しい選手も台頭しているが、基本的には、「トルシエチルドレン」が年を重ねただけなのがいまの日本代表の実態だ。3年、4年で簡単にいい選手が出るはずもないという見方もあろうが、トルシエはフランス大会経験者のほとんどを代表から外したことから比べれば、「ジーコファミリー」の「借り物」という趣を否定できない。
ジーコは、監督未経験者ということもあり、代表チームの育成、運営、鍛錬のノウハウをもっていない。日本代表をつくりあげる哲学がない。だから試行錯誤を繰り返し、結果をみて次に進もうとする。そして行き着いた先は、繰り返し書くが、トルシエの世界だった。
私はこのままの状態をキープすれば、アジア最終予選については、突破できると思っている。選手が監督の指針とは関係なく成長をとげ、アジアのレベルなら安定して戦えるまでになった。そのことをジーコの功績として顕彰するかどうかは、私の興味の外にある。
しかし、いまのような代表チーム運営は、日本代表がより強くなるための近道でないばかりか、日本サッカーの発展にマイナスになるように思う。その根拠として、代表選手選考、起用法、代表チームの戦術のあり方を挙げておく。いまの代表のあり方は、すべてのJリーガーを刺激し、彼等をレベルアップさせる方向を示していない。たとえば、北朝鮮戦を控えた調整試合の2試合において、同じ選手が先発しほぼ同じ時間プレーした。このような起用法を私は認めない。私なら、より多くの選手にチャンスを与えただろう。それぞれの選手のパフォーマンスをみて、最終予選の代表選手を発表しただろう。
ジーコは新しい戦力に戦術を理解させる指導力を欠いている。だから固定メンバーにこだわる。選手同士が築いたコンビネーションに依存しているからだ。とりわけ、DFについては、彼は素人に近いのではないか。DFにおけるピッチ上の監督は、宮本が務めているのではないか。
もちろん、代表監督のやり方は1つではないのだから、「ジーコ流」を認めないわけではない。このやり方で結果が出ているから「よし」とする考え方もある。「ジーコ流」はアジアの壁は越えられるかもしれないが、このままなら世界の壁は高いままだ。


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