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2004年12月19日(日) 与えられるか、奪うか

磐田がJ2札幌に辛勝し、天皇杯のベスト4入りを果たした。Jリーグでは一勝も上げられなかったY新監督だが、カップ戦の方は順調に見える。しかし、磐田の試合内容は悪い。
磐田が世代交代の失敗による構造的悪循環に陥ったことは、既に当コラムで何度も書いた。悪循環を断ち切るにはハードランディングかソフトランディングの二者択一しかないのだが、最近の磐田の動きを見てみると――まず、日本代表GKの川口と契約。市原・京都で活躍したFWチェヨンスと契約を交わそうとしている。天皇杯の選手起用は、ベテランと若手の併用。報道によると、Y監督は、ポジションは与えられるものではなく、奪い取るものだ、と力説している――Y監督は後者を選んだのだ。
ポジションを「奪い取る」というのは正論である。実力の伴わない若手にレギュラーを渡したのでは、ベテランの生活が脅かされる。Y監督の選手起用法に誤りはないかのようだ。ところが、そこがチームスポーツの難しいところ。クラブと代表とでは事情は違うけれど、いま現在弱体化したフランス代表では、ジダンらのベテランが身を引いて、若手にチャンスが与えられた。ジダンらが残っていたら、フランス代表はますます弱くなる。ではジダンらの実力が若手より下回ったのかというと、そんなことはない。
磐田はどうか。ゴン、藤田、服部、名波らの元代表組は、この先代表に復帰する道は閉ざされている。それでもサッカー選手であるから、名門磐田を離れるつもりはないし、クラブも彼等を戦力として必要だと考えている。それが自然に導き出された磐田の状態なのだが、磐田はJリーグで勝てない。もっとも当たり前の、もっとも自然の論理で導き出されたチームのあり方が、実は構造的な危機を導いているのだ。
Y監督が選択したソフトランディングは自然だが、05年シーズン、磐田はそこそこの順位を保ったクラブとして終わる。その代償として、有望な若手の出場機会は減り、彼等の成長の度合いは鈍化する。市原の水野、FC東京の鈴木、東京Vの相馬らが急成長するのを横目で見ながら、カレン、成岡、前田は伸びないままで終わる。磐田の将来も彼等の将来同様、先が見えない闇のままだ。06年、07年と年を追うごとに磐田の衰えは止まらない。
Y監督が方針を転換するなら、いましかない。構造変革は、自然ではだめだ。強権的な措置が必要なのだ。もちろん、05年の結果については、Y監督がドロをかぶるしかない。それが再建という仕事でなくてなんであろう。


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