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2004年11月24日(水) 読売の不良債権処理

読売球団が「主砲」K内野手の処遇に手間取っている。K内野手の読売への愛着は人一倍強いと言われている。K内野手は大阪の高校野球エリート高に在学中、甲子園で大活躍。卒業後は読売への入団を希望していたらしいが、ドラフトで読売が1位指名したのは彼の高校時代の球友K投手だった。K内野手はパリーグ西武球団に1位指名され、泣く泣く同球団に入団したことはよく知られている。
その後、FA制度の創設とともに、K内野手は憧れの読売への入団を果たすことになる。ところが、下半身に故障をもつ彼は04年シーズン、ぺタジーニの控えにまわり、出場回数が激減し、シーズン終了後、ついに05年のチーム構想から外れた。
読売の現場が想定している内野陣は、一塁=江藤・清水(外野からのコンバート)、元木、二塁=(仁志=MKB移籍希望)・鈴木・元木、三塁=小久保・江藤・元木、遊撃=ニ岡・元木・川中・黒田だと思われる。読売残留に危機感を覚えたK内野手、現場トップのH監督を飛び越して、球団トップに直接交渉をもちかけ、残留を直訴したというのがこの騒動の発端のようだ。
部外者の私には、不可解極まりない「騒動」だ。私ならば、K内野手に対して、野球をしたいのか、それとも、単に読売の「選手」でいたいのか――あるいは、アスリートとして活躍できる場を求めるのか、それとも、読売OBの肩書きを利用して、引退後、芸能人としてマスコミに残りたいのか――について尋ねる。どちらも同じことだが、K内野手がこの問に確信をもって回答できないのならば、04年シーズンを最後に引退すべきだ。
私はトレーナーでもなければスポーツ医学の専門家でもないが、K内野手の肉体が05年シーズンに蘇ることはあり得ないと思っている。K内野手は野球選手として重大な3つの欠陥を持っているように見えるからだ。
その1つは、一塁以外守れないという点だ。読売は野手に2つ以上のポジションがこなせるよう指導しているという。たいへん結構な指導だが、その命に従うならば、K内野手のポジションは、一塁もしくは高校時代に守った3塁なのだが、彼は肩を壊して3塁守備ができないという。球団が定める野手の要件を満たしていないのだ。
2つ目は、K内野手の慢性的な故障箇所が下半身だと言われている点だ。いま現在、K内野手をテレビ映像でみる限り、上半身に筋肉がつきすぎていて体重が重すぎるように見える。K内野手はMLBのボンズ、ソーサ、オルティスといったホームランバッターの肉体を理想として筋力運動に励み、上半身に筋肉をつけすぎたのではないか。
K内野手が「パワー信仰」に走ってしまった主因は、「疑惑のボール」こと日本プロ野球が採用している公式球にある。ファンの期待はホームランだ・・・ホームランはパワーがなければ打てない・・・日本の「飛ぶボール」ならば、打撃技術の向上を図るよりも、パワーをつければホームランは打てる・・・自分はMLBに最も近い日本の強打者になる・・・K内野手の心中にパワー信仰が生まれ、彼は格闘家なみの筋肉の鎧を身に着けてしまったのではないか。
比較すべきはK内野手が活躍した西武時代の映像だ。TV画面に写っている彼の西武のユニフォーム姿はひ弱そうに見えるが、アスリートそのものだ。K内野手の下半身は、高校時代の猛練習の蓄えだろうか、十分、機能している。その時代に彼が戻ることはもうできない。
3つ目は、K内野手が喫煙者だという噂がある点だ。このことは噂であって、確かめたわけではない。推測にすぎないけれど、もしそのとおりならば、K内野手は、アスリートとしてすでに終わっている。
さて、読売はK内野手をどう処置すべきなのか。K内野手は読売が目指した「ホームラン野球」の負の遺産だ。「走れない」「守れない」「投げられない」「強打者」だ。彼の読売における存在は、日本経済が抱えるバブル時代の負の遺産、すなわち、不良債権問題に似ている。
読売はK内野手に対して、守らないですむ指名代打制度のあるパリーグへの移籍を勧告すべきだろう。無頼派、反管理野球を掲げるオリキンのO監督の下でプレーする選択もある。オリキンは大阪がホームだから、K内野手の出身地に一致するしファンも多いらしい。無頼派野球を掲げるO監督ならば、喫煙者だろうが大酒のみだろうが、「結果がすべて」を貫くだろう。
子供のときからの憧れだった読売に入団を果たしたK内野手が「生涯読売」という思いを抱くのは当然だが、プロ野球という人気商売では、球団イメージになじまなければ切られる。読売グループはここのところ、醜聞に悩まされている。そんなときに、「番長」の異名をとるK内野手は、同グループのイメージアップに貢献しにくいキャラクターだ。K内野手の選択は、「番長」として大阪で暴れまくることしかない。K内野手が野球をやりたいのならば、いますぐ、野球をやれる環境に移動した方がいいに決まっている。
問題はそればかりではない。信じられないが、K内野手残留を希望する「巨人ファン」の声が強いことだ。先日行われた「ファン感謝デー」で、「Kコール」が沸きあがり、K内野手を戦力外通告したH監督がブーイングを浴びたらしい。
読売が優勝を逃したのは、K内野手に代表される「ホームラン野球」信仰のためだった。ファンとして、愛する球団の優勝を望むのならば、優勝を逃した要因を排除することに賛同することが自然だ。野球というスポーツを愛することがない「巨人ファン」とやらがK内野手を必要とするのならば、H監督は早々に辞表を出したほうが賢明だ。野球をスポーツとしてではなく芸能とみなす集団がサポーターならば、H監督のみならず、スポーツのプロフェッショナルが指揮をとる謂れはない。


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