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2004年11月08日(月) 球団売却は本意かポーズか

私は7月15日の当コラムで、1リーグ制を許容せず2リーグ制を絶対的に支持したA新聞・阪神シニアディレクターH氏をはじめとする「ファン」の名を借りたマスコミ勢力を批判し、「1リーグ制」を提唱した読売新聞のW氏らを「擁護」した。
そのときの世論は「1リーグ制」は悪であり、選手会はストをちらつかせて、それを阻止しようとしていた。
また続けて、“「1リーグ制」を主導する読売のW氏は、いかにも「抵抗勢力」風の頑固爺さん。ヒールにぴったりだ”と書き、読売のW氏が早急に1リーグ制に移行したがる理由を、“今年を逃せば、時を失うとW氏が考えているからだろう。リストラは、電光石火、やり遂げなければいけない。W氏はヒールだが、経営者としては、企業経営素人のH氏よりもはるかに長けている。W氏は、拙速といわれようと、リストラの機会が今年であることを直感的に知っている。長引けば、プロ野球を「所有」する企業の経営状況はさらに悪化することを知っている。つまり、日本経済が現状維持ならば、プロ野球界に参集した企業が球団の「所有」にこだわる限り、チーム数は減少する。”と書いた。3ヵ月後のいま、その見通しが現実のものとなった。
そればかりではない。“1リーグ制は応急処置であって、抜本改革ではないが、(W氏は)応急処置で時をかせぐ算段だ。”と書いた。また一方、”H氏とそれを支持するA新聞、さらに一部狂信的「ファン」は、大企業ならば球団経営を永遠に続けられる、と思い込んでいる。それは、日本経済・大企業への盲信であり、それと裏腹に、大企業は大もうけした利益を大衆のために吐き出せと脅迫する、「日本型社会主義」が背景にある”と書いた。大企業ならプロ野球を所有する義務があり、たとえ赤字であっても、「ファン」に野球を見せ続けなければいけない――という、大企業だのみが既に限界にあることを指摘した。
さて、球団売却話が出た西武鉄道グループ(コクド)だが、実は球団売却の意思はなく、リストラのポーズだという見方がここにきて有力になってきた。売却の意思がないにもかかわらず、売却をするという噂をコクド側が意図的に流したのならば、マスコミが形成してきた「ファンの夢である聖なる球団」を逆手に取った、かなり悪質なリーク作戦である。球団の利用価値にもいろいろあるものだ。「球団維持のためならなんでもあり、球団売却はよっぽどのこと」というおかしな価値観が社会に育まれてしまったのだ。
日本のプロ野球を巡る頽廃は、底なしのドル沼状態、いやそれ以上に達した。プロ野球球団だって、なくなることもあるよ、というのが健全な経済観であり価値観だろう。球団数は何があっても減らしてはいけないというのは、かなり奇怪な価値観だと私は思う。


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