Sports Enthusiast_1

2004年11月06日(土) 球団売ります。

西武鉄道グループ(コクド)が西武ライオンズを売却し、プロ野球から撤退する方針であるとの報道が流れた。売却の理由は、主力のレジャー事業の不振に加え、西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題に端を発した西武鉄道株の急落で財務体質の悪化が進行。また有価証券報告書訂正前にコクドが企業に売却した西武鉄道株の買い戻し請求もこれから相次ぐと見られ、球団売却を含め抜本的なリストラが不可避と判断したとみられる。
西武ライオンズはコクドの100%子会社で資本金は1億円。コクドは200億〜250億円程度の売却額を提示している模様。楽天の新規参入で来季の2リーグ12球団体制が固まったプロ野球界だが、ホークス売却問題に加えてライオンズ売却も浮上したことで、新たな対応を迫られることになった。
ほーら見ろ、いわんこっちゃないじゃないか。9月10日の当コラムで私が西武の離脱を予測したとおりになった。日本プロ野球機構というところはまったくもって、ノーテンキの集まり。素人の私がこれからも球団売却は起こるよと言っているのに、彼らは楽天だライブドアだと現を抜かし、審査とやらで時間をつぶしていた。プロ野球球団が置かれている状況は、「12球団維持」という旧体制の維持で済む問題ではないのだ。
私が指摘したように、東急、国鉄、西鉄、南海、阪急そして近鉄と、鉄道会社がリーグから消滅した。そして、ダイエーという小売業を装った不動産会社が消えるだろう。鉄道会社も土地を基本とした企業だ。いまになって、土地バブルがはじけた感がある。これをバブル処理が進んだ結果と見るか、いよいよ潜伏していたバブル後遺症が顕在化した結果と見るかだが、いずれも同じことで、地価に依存した「経営」が破綻したという事実の投影だ。
企業名を冠した球団名のまま、プロ野球界を襲う激流を裁くには、球団売買・新規参入を完全自由化するしかない。いま思えば、近鉄・オリックス合併話が出たとき、ライブドアからの買収オファーを機構が排除したことが誤りだった。球団を買いたいところがあるうちに、売った方がいいということが教訓として残った。近鉄も合併などしないで、高値で売ればよかったと悔やんでいるに違いない。商売人ならそれが自然の感情だ
私はプロ野球球団は私財であり、マーケティングの価値に規定されていると何度も書いた。新聞等が言うように、公共財であれば、売買に縛りがかかってしまうが、プロ野球球団の価値はいまが最高値であり、これからは急激に下落に向かう。換言すれば、プロ野球の人気はいまがピークで、これからは普通のプロスポーツの1つに収まるということだ。
何度も繰り返すが、日本のプロ野球球団は「文化」「公共財」「ファンの夢」ではない。明らかな私財である。だから、機構が新規参入者を「審査」して「ふさわしい者」を選ぶなどという、集団的指導体制を擁護してはいけない。球団という私財を取引する自由を阻害するような報道は謹んでいただきたい。
これからプロ野球がどうなるかといえば、球団所有企業の交代が続き、知名度アップといううまみが薄れてくる、つまり、球団のマーケティング価値は下落する。その理由は、ファンが球団名の上がコロコロ変わって愛着をなくし応援しなくなるというか、応援できなくなるからだ。
自壊どころではないのだが、結果、いままでの開発独裁的プロ野球機構が自由経済を経て市場の失敗を経験し、社会的価値の下に再構築される。そのとき、「巨人」=読売グループ主導の機構も消滅する。かくして、地域ごとに再編されたフランチャイズ制度が確立し、普通のプロスポーツの1つとして、各球団それぞれがファンに愛されることになる。そうなって初めて、公共財としてのプロ野球球団が誕生する。もちろん、球団名から企業名は外されている。経営的には、複数の企業・個人・公共団体等が出資(投資)をし、アセットマネジャー(資産管理会社)が球団を経営することになる。所有(投資)と経営(資産管理)が完全に分離する。もちろん、大金持ちが球団を高値で買いたいといえば、売ればいい。投資家にその益を配当すればいい。


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