Sports Enthusiast_1

2004年11月03日(水) プロ野球を歪めているのは・・・

報道によると、プロ野球は2日、都内のホテルで12球団の代表者が出席する実行委員会、引き続きオーナー会議を開き、パ・リーグへの新規加盟を申請していた情報技術(IT)関連企業のライブドアと楽天について最終審査を行い、楽天の参入を正式に承認したという。
これにより、来季はセパ6球団、合計12球団が確保され、新球団には多くの課題があると言われているものの、形式的には今季の体制が継続されることになった。読売が仕掛けた1リーグ制は阻止され、選手会、「ファン」、マスコミが望んだ結果が実現した。今回落選したライブドアの参入表明及び選手会のストが効を奏したと総括されているようだ。来季、ライブドアを押しのけて新規参入した楽天がそれなりの成績をおさめ、仙台球場に客が集まれば、構造的改革の必要性は隠蔽され、プロ野球は表面的危機を脱したことになるのかもしれない。
さて、日本人は野球が好きだ、これほど愛されるスポーツはないと、また、当コラムで何度も引用したように、「プロ野球は文化」だと言われている。思えば、近鉄・オリックスの合併が発表されたとき、マスコミはこぞって反対の論陣を張った。そしていま、新球団誕生をトップ記事で扱っている。ここまでの「騒動」に係る報道は、ほかのスポーツのそれに比べて、異常に大きい。マスコミは「事件」を人々の関心に応じて大きくも小さくも扱うと言われるが、私には、それは“卵が先か、鶏が先か”に近い。マスコミが報道するから人々は関心を高めるのであって、その逆ではないと。
私にとって、プロ野球はスポーツの1つであって、それ以外の何ものでもない。野球が見ていておもしろいスポーツかと問われれば、退屈度という尺度を使えば、おそらくトップクラスの高さだろう。野球の醍醐味の1つとして、ランナーのホームベース突入シーンがあると言われるが、確かにそのとおりで、このくらいしか野球に格闘技的要素を見つけ出すことはできない。豪腕投手の切れのいいスライダーは、テレビで見ていても脅威を感じるが、格闘技がもつ超人的パワーとはほど遠い。野球は、守備と攻撃が分離されているので、攻撃のときは絶対に相手が得点を上げることがないので、安心してトイレに行ける。緊張度という尺度を使えば、野球は低い方から数えてトップクラスだろう。
それでも、日本人は野球が好きだ。趣味の問題だから、「好きな人」に文句を言う筋はないけれど、野球に関心がない人も世の中にはたくさんいるのだし、野球ばかりを肥大して扱うのはいかがなものか。たとえば、バスケットボールの田臥が日本人で初めて米国のNBAの開幕登録メンバーに入った。このことのすごさは、“楽天だ、ライブドアだ”の比ではない。
私のスポーツに対する関心は、まず第一にスポーツそのものであって、球団の所有者がどこかではない。ただ、いいスポーツを実現すために、合理的制度を構築することが求められているだけだ。
このたびのプロ野球を巡る騒動は、制度疲労に関するものであって、そちらのほうがスポーツそのものよりも社会的関心が高かった。このことはプロ野球の歪み・ひずみの自己証明にほかならない。歪み・ひずみの元凶がマスコミの報道姿勢にあることは、言うまでもない。


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