| 2004年09月20日(月) |
選手会は間違っている。 |
きのう一日の学習期間により、プロ野球選手会と機構との対立点が判明した。選手会側が05年シーズンから新規参入を認めろ、と主張している一方、機構側は06年以降、新制度で球団増を受け入れる、と主張し対立しているようだ。05年、セ6球団パ6球団が選手側、セ6球団パ5球団が機構側というわけだ。 なるほど、機構側が譲れない事情は理解できる。仮に選手会の主張を認めると、パリーグの近鉄・オリックス合併後に新規参入したライブドアー(便宜上、チーム名も「ライブドアー」にしておこう)は注目の的になり、パリーグの人気を独占する。ファンもマスコミも応援する。しかも彼らはインターネットを使った販売手法でグッズ(MD)やチケットを売りまくり、新球団を黒字経営に転換させるだろう。ライブドアーに賞賛が集まり、機構側5球団は、経営者失格の烙印を押されるばかりか、パリーグ、強いてはプロ野球総体を新規参入者に乗っ取られる。機構としては許せないばかりか、これまで赤字覚悟で球団運営してきた数十年がすべて無に帰すことになる。ファン・マスコミは、「ライブドアー」が勝っても負けてもヒーロー扱いすることは目に見えている。 機構が05年、パリーグは5球団と譲らない理由はもう1つある。マスコミは言わないが、ダイエーの処遇だ。ダイエーの経営再建が産業再生機構に委ねられたならば、ダイエーのバブル時代の経営実態が明らかになり、巷間言われているところの、ダイエーの不動産投資の不透明性と広い意味での球団経営の関係が明らかになる。そうなれば、ダイエー球団が福岡・九州地区で地元密着の球団経営を軌道に乗せている現実とかかわりなく、球団を維持する大義を失う。ダイエーグループは解体され、ダイエーホークスはパリーグから撤退する。 だが、いま現在、ダイエーが産業再生機構に委ねられるのか民間主導の再建かが決まっていない。もちろん、ダイエーおよびダイエー球団は、ダイエーの大口債権者であるUFJ銀行の動向と運命共同体にある。産業再生機構、民間主導のどちらになるかが決まらない状況では、ダイエーホークスの存続も決まらない。産業再生機構ならば、ダイエーホークスは無くなるというのが一般的な見方だが。もっとも、民間主導だからといって、ホークスを保有するかどうかはわからない。 ダイエーホークスが売りに出されれば、プロ野球機構、すなわち球団経営者、なかんずくパリーグ球団経営者は、05年はライブドアーにかき回され、06年はダイエー撤退問題の処理に当たり、2年続けて混乱を引き受けることになる。2年も混乱を繰り返せば、どうしようもない。プロ野球、少なくとも、パリーグはファンから見放される。 だから、プロ野球機構の描く第一のシナリオ次のとおりだ。いまの混乱がひとまず収束すれば、ファンもマスコミも冷静さを取り戻し、05年シーズン、セ6球団、パ5球団でのりきって、途中、ダイエーの撤退が決まれば、1リーグの流れが自然に形成される。「巨人人気」にすがって、しのいでいこうというものだ。 もう1つは、ダイエーの撤退が決まった後、06年にパリーグに2球団の新規参入が見込まれれば、セパ6球団の現状に復帰することができる。そのときは、ライブドアーだけに、おいしいところをもっていかれることはない。新規参入が2球団ならば、マスコミの注目度も50%ずつ分散するわけだ。ライブドアーともう1つの参入者が、同じインターネット業界の楽天だ。楽天が唐突に新規参入を表明したのは、05年以降のダイエーの受け皿だと思われる。楽天のM社長は興銀出身者で、ライブドアーのH社長とは財界の受けが違うと言われている。楽天が急に参入を表明した裏には、オリックスのM社長が動いたという噂もある。 つまり、06年の新規参入はダイエーの撤退が決まれば、ライブドアーと楽天の2社が有力。どちらもIT勝ち組だが、ライブドアーが06年まで球団経営の情熱を維持できるのかどうか見極めることもできるし、IT系2社の参入なら、マスコミもライブドアー1社をヒーロー扱いすることがない。世間は冷静に新規参入者を迎えることができる。 ここまで書いたところで、このたびの選手会のストの無益さに改めて心が痛む。スポーツマスコミがいま、パブリシティー狙いの企業戦略から新規参入してきたライブドアーをヒーロー扱いし、これまで赤字ながら球団を維持してきた近鉄はじめとするプロ野球球団経営者を無能者扱いする報道に驚きを禁じ得ない。確かに、球団経営としては無能だったけれど、球団経営はメセナ事業(文化的社会貢献事業)に近かった。メセナは宣伝費換算をしないことが原則だが、球団所有もそれに近かった。大企業がメセナ(スポンサード)として球団経営を行ってきたことに、一定の評価を与えてもいいと私は思う。利益還元として、地域住民に長年、娯楽を提供してきたのだから。それができなくなって、つまり、メセナ事業から手を引いて、何が悪いのだ。 結論として、選手会が05年にこだわる理由がわからない。これまで何度も書いてきたように、プロ野球からの撤退は、今年の近鉄1社にとどまらない。近々、ダイエーも撤退する可能性があるし、他の球団が続く可能性にないとは言えない。いま、ライブドアー1社だけに新規参入を許せば、ライブドアーの企業マーケティングにはまることは目に見えている。本来ならば、新規参入者を複数募り、資格審査等を行う機関を設け、球団譲渡や新球団の創設を諮る制度をつくったほうがいい。また、05年1年間をつかって、プロ野球の未来構想をじっくり錬ったほうがいい。5球団なら終わりだ、と主張をする評論家がいるようだが、パリーグは6球団でも5球団でも赤字経営の実態は変わらない。 いま選手会が主張しているのは、ライブドアーという選択肢ただ1つ。しかも、新規参入を表明する前に街頭インタビューでその企業名を尋ねたとしたら、100人中90人が知らないような企業だけなのだ。 近鉄の代わりにライブドアーを補充すれば、形の上では、現状復帰するが、プロ野球の未来構想を描く動きは止まるばかりか、ライブドアー1社が独占的に目的を達して、収束してしまう。それは、ライブドアーの描いたシナリオどおりの展開なのだ。 私はライブドアーが胡散臭いから注意しろ、と言っているのではない。ライブドアーの企業戦略は鮮やかであり、日本中がそれにのったことが残念でならない。だから、ライブドアーの参入表明後、楽天やシダックスが参入者候補として現れてくれたことにほっとしている。 これまで、ロッテ、ダイエー、オリックス等が球団を買い取ったが、財界という密室のなかの出来事だった。ライブドアーは、マスコミを使って、財界という密室をこじ開けたという意味で評価できる。けれど、本来ならば、球団売買はオークションこそが望ましい。オークションができないならば、複数の候補者からプロ野球機構が選択できることが望ましい。もっといえば、前に書いたことだが、球団の単独所有から、所有と経営の分離の形態が望ましい。所有は証券化を含めた、市場的であることが望ましい… 選手会が05年の6球団にこだわることは間違いだし、それを理由にストを実行したことを遺憾に思う。 プロ野球について、多方面にわたり研究しなければ、これから先、球団維持はさらに難しくなる。経済学者、経営学者、経営コンサルタント等を含め、プロ野球の経営のあり方を研究しなければ、選手会は永遠にストを打たなくてはならなくなる。繰り返すが、6球団・6球団という現状復帰だけではだめなのだ。05年シーズン、6球団、5球団という変則であることは、一見、整わないようだが、そのほうが新しい方向を模索するには好都合なのだ。
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