混迷するプロ野球界――1リーグ制への移行の流れはだれも止められない、と書いたところが、思わぬストップがかかった。私の大きらいな元阪神監督のH氏が、読売が主導する1リーグ制に「ノー」の声を発したのだ。その言を受けて、セリーグでは、阪神球団ほか5球団、つまり読売以外のオーナーがH氏に同調した。しかも、Y新聞と敵対関係にあるA新聞がH氏を後押しし始めたので、2リーグ制支持派と1リーグ制支持派の対立は、A新聞とY新聞の代理戦争に進展した。 さて、世論は2リーグ制支持に回っている。1リーグ制を主導する読売のW氏は、いかにも「抵抗勢力」風の頑固爺さん。ヒールにぴったりだ。H氏は本質的には旧来型体育会系「指導者」でありながら、昨年阪神を優勝させてから、ベビーフェイスに変身した。若手サラリーマンが望む「理想の上司」に持ち上げられてしまった。ところが、にわかベビーフェイスのH氏が提唱する2リーグ制復活は、掛け声ばかりで、中身が何もない。 ▼今現在、プロ野球を「所有」する企業(オーナー)のなかには、経営がおぼつかないところが数社ある。 ▼過去、プロ野球から撤退した企業は経営上、球団を「所有」する意義を失い、かつ、「所有」の余裕がなくなったところだった。その典型が、電鉄会社で、彼らがまちづくり事業から撤退するとともに、プロ野球球団の「所有」から手を引いた。その経緯については、すでに詳しく書いた。 ▼今後、電鉄系に限らず、流通、メーカーからも撤退があり得る。UFJ銀行が東京三菱に吸収合併された時点で、UFJの大口債務者であるD社(流通系企業)は、球団「所有」ができなくなる。 ▼ならば、H氏が声高に叫ぶ2リーグ制が成り立つ根拠は何なのか。 繰り返すが、1企業が1球団を「所有」する限り、プロ野球界から脱落する企業は今後もあり得る。球団の「所有」のあり方を変えない限り、球団数の減少は避けられない。 ではなぜ、読売のW氏は早急に1リーグ制に移行したがるのか。その理由は、今年を逃せば、時を失うとN氏が考えているからだろう。リストラは、電光石火、やり遂げなければいけない。W氏はヒールだが、経営者としては、企業経営素人のH氏よりもはるかに長けている。W氏は、拙速といわれようと、リストラの機会が今年であることを直感的に知っている。長引けば、プロ野球を「所有」する企業の経営状況はさらに悪化することを知っている。つまり、日本経済が現状維持ならば、プロ野球界に参集した企業が球団の「所有」にこだわる限り、チーム数は減少する。 1リーグ制は応急処置であって、抜本改革ではない。W氏もそれを知っているだろう。W氏はリストラは電光石火、時を失ってはいけないことを知っていると同時に、応急処置で時をかせぐ算段だ。 だが、先に書いたとおり、「所有」と「経営」を分離しなければ、プロ野球の没落を止められない。 一方のH氏とそれを支持するA新聞、さらに一部狂信的「ファン」はというと、大企業ならば球団経営を永遠に続けられる、と思い込んでいる。球団が売りに出されれば、いくらでも「ライブドアー」が現れると思っている。この楽天主義がどこからくるのかといえば、日本経済・大企業への盲信からであり、大企業は大もうけした利益を大衆のために吐き出せと脅迫する、「日本型社会主義」からだ。 Y新聞=W氏の1リーグ制は、応急処置だ。一方のA新聞=H氏の2リーグ制復活論も空っぽだ。双方には、球団の所有と経営の分離を展望しようとする発想を欠いている点で共通しており、感情的・情緒的発想という点で一致している。このまま双方が「論争」を繰り広げても、何も出てこない。
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