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2004年07月04日(日) 情熱と結束力

ユーロ決勝は開催国のポルトガルと、大穴のギリシアで争われることになった。ポルトガルの監督はフェリぺ氏(ブラジル)、ギリシアはレーハーゲン氏(ドイツ)。二人とも監督としてはプロ中のプロだ。フェリペ氏は日韓W杯の優勝国・ブラジル代表の監督であったし、Jリーグの磐田の監督を務めたことがあるので、日本では知る人が多い。一方のレーハーゲン氏はドイツブンデスリーガのブレーメンを強豪チームに育てたことで知られている。
さて、報道によると、この両氏が好んで使う言葉は、「情熱」と「結束力」だという。「結束力」については、ネドベドが、チェコチームの強さの源泉を「結束力」と言ったことをこのコラムで紹介した。「結束力」とは換言すれば、私がよく使う組織力であり、規律のことだ。どんなに個人の能力が高くても、チームとして組織されなければ、勝てない。チームゲームでは当たり前のことだ。規律はというと、不変の決め事があって、それに拘束されるようなイメージがあるかもしれない、あるいは、軍隊のように個人が抑圧されるように受け止められるかもしれない。
サッカーにおいては、そのような心配はいらない。サッカーの基本は一対一だ。そこで負ければ終わりだ。しかし、明らかに一対一で差があっても、ニ対一ならば勝てる可能性が生ずる。そこで必要なのが運動量ということになる。相手のキープレイヤーにマンマークをつけ動きを封じる、そうすると、その結果生じたスペースを相手に使われやすい。そこを使われないためには、全員が運動量を増やして、スペースを埋める努力をする。大雑把に言えば、そのような対応が組織力であり規律だ。一対一で勝つことは基本だが、つまり、個人の能力を高めることは基本だが、それだけが勝利の方程式ではない。さらに言えば、個人の能力を高めるのは代表チームの仕事ではなく、クラブの仕事なのだ。代表チームでは、個人の能力をいかに使うかが問われている。
さて、もう一つの「情熱」については、きのうも書いたとおり、モチベーションという言葉に換言できる。一度目標を達成した選手に、同じ目標を与えても力が出ないことがある。一方、目標達成者には経験があるので、経験が役に立つこともある。ベテランの経験がチームを救う確率と、ベテランの情熱低下がチームを危機に陥らせる確率は、私見では、ほぼ半々といったところだろう。だから、ベテランの存在は、両刃の剣だ。
このように見ていくと、フェリペ氏とレーハーゲン氏の2つの言葉は、代表監督のあり方を如実に示すものだと言える。
さて、ギリシアのFIFAランキングは驚くなかれ35位で、日本の23位より低い。ギリシア代表は、欧州では、かなり弱いチームと評価されている。そこで、ギリシアのサッカー協会が求めた道は、レーハーゲン氏という組織力を重視する指導者を監督に就任させ、組織重視のチームに変えたことだ。そう言うと、“もともと個人能力の高いチームが組織力を高めたから、決勝に残れた”と「反論」されそうだが、そういう「反論」には、反論のしようがない。鶏と卵の論争に陥るだけだから。
私たちは、代表監督のあり方を、成功事例から学ぶ必要がある。代表監督にいかなる能力を求めるかなのだ。ギリシアと日本のどちらの選手が個人レベルで比較して高いか低いかはわからない。だが、両国とも、フランスやドイツやイタリア、スペインより低いことに異論はあるまい。ならば、日本もギリシアがとった選択を参考とすべきなのだ。
フェリペはブラジルだからW杯で優勝できたと言われ、今度は開催国だから、と言われるかもしれない。レーハーゲンのサッカーは、守備重視でつまらない、といわれるかもしれない。
監督の実績を監督の能力以外に見つけることは、いくらでもできる。監督とはそういうものだ、とも言われる。スポーツマスコミはそれでいい。シニカルさがジャーナリズムのあり方の1つだから。でも、サッカー関係者はそれではすまない。代表監督選びには、哲学と客観的基準が必要なのだ。名声や気分や人気で、トップダウンで選んではだめだ。


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