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2004年06月27日(日) ボブ・サップの落日

K1のワンマッチにボブ・サップが登場。レイ・セフォーと戦った。サップはここ数試合、ミルコ、ボンヤンスキー、藤田といった高い技術をもった格闘技プロフェッショナルに負け続けた。とりわけ、「総合」では藤田に屈辱のサッカーボールキックを浴びて惨敗した。サップの格闘技人生もこれで終わりという人もいた。レイ・セフォーとのこの戦いは、サップの将来を占う一戦、つまり、ここでサップが逃げるようならば、彼は格闘家としてもう立ち直れない――そういう意味で、注目の一戦となった。
試合展開はご覧のとおり、大きく2つの場面に分かれた。最初の展開は序盤、出だしから興奮気味のサップが体力を頼りに圧力をかけ、めちゃくちゃなパンチを振り回し、セフォーを殴り倒そうとした。倒れたセフォーにパンチを繰り出し、反則を取られた。一方のセフォーも急所攻撃でかえす。なんとも凄惨な試合になりそうだった。急所攻撃を受けたサップに休憩が与えられ試合は中断した。ここで冷静さを取り戻したサップ。正気に返り、休憩明けからやっと、K1(スポーツ)が始まった。
K1となれば、セフォーの一方的な展開だ。パンチ力に勝るセフォーのフックをまともに浴びて、サップはフラフラ。コーナーに押し込められ、左右フックをボディ、顔面、側頭部に入れられマットに沈んだ。
サップの戦いぶりを見た関係者は、「(サップは)負けたけれど、大丈夫、復活した」という意味のコメントを発した。本当だろか。
さて、試合前の控室のサップの表情をTV画面で見た人は、彼の異常に気づいたろう。彼の表情から、怯え、恐怖を読み取ったのは私だけではないだろう。格闘技で3連敗、いずれもKO負けに等しい一方的敗戦を屈した男、自分のきょうのコンディションは最悪だと自覚している男(サップは試合前、点滴を受けていたという)、きょうの相手は、本物のヘビー級のキックボクサーであること…サップを恐怖が支配したことは疑う余地がない。
そもそも、サップはアメリカンフットボールの選手だった。プロレスのキャリアは少ししかない。格闘技は素人だ。そんな彼が持ち前のキャラクターで日本で人気者になった。アメリカンドリームならぬ、ジャパニーズドリームを掴んだのだ。しかし、格闘技のプロから見れば、サップの技はどれをとっても未熟で中途半端だ。
それだけではない。私の知っている格闘技経験者に言わせると、サップの本質的な弱さは、技術(技)の未熟さではないという。サップの弱さは、「痛みに耐えられない」こと、精神的な問題だという。
どんなに鍛えあげた格闘家でも、パンチを顎等の急所に受ければKO負けを屈する。脳が振動で機能しなくなり、意識を失うからだ。だから、顎等の急所にパンチや蹴りを入れられないよう、ガードをする。当たり前のことだ。その結果、急所を外れたパンチを受けることが避けられない。パンチが顔面をかすったり、頭部に受けたり、目じりを襲うこともある。顔面攻撃ばかりではない。キックボクシングや総合格闘技では、ローキックを受けることが多い。パンチが顔面をかすると、激痛が走るというし、ローキックをまともに受ければ、骨に響き死ぬほど痛いという。国際式ボクシングのチャンピオンクラスがK1でことごとく負けているが、いずれも、ローキックを受けて、立てなくなってしまう。一方、キックボクサーや総合格闘技を基本からやっている格闘家は、ローを受けても頑張ることができる。痛みに対する免疫力が違うのだ。彼らは、痛みに耐えつつ、相手に決定的なダメージを与える瞬間を狙う。もちろん、ローキックを防いだりかえすテクニックはあるが、100%防ぐことは不可能なのだ。
サップは格闘家ではない。彼は痛みに耐えられない。ボンヤンスキー、ミルコとの戦いでそうだった。ミルコの攻撃を眼球近くに受けて、サップは泣き出しそうな表情を見せた。あのときから、サップが痛みに耐えられない「格闘家」であることが知られていた。だから、サップは、格闘家の間から、素人と言われたのだ。ミルコに負けたとき、「引退して、プロレスに行ったほうがいい」と指摘した格闘家がいた。その指摘どおり、サップは本格的な格闘家に負け続けた。サップには、本気の格闘技は無理なのだ。彼が活躍できる分野は、プロレスリングしかない。サップは、キャラクターを生かしたプロレスの人気者でいいじゃないか。K1の客寄せパンダの役割は十分、果たしたのだから。サップの後釜には、曙が座る。


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