●狂った歯車 精密機械の歯車が狂ったまま、90分が過ぎてしまった――チェコ代表はまったくいいとところがないまま、ホームで日本代表に0−1で負けた。いま欧州で最も強いと言われているチェコ代表が。 チェコの先発はベストメンバー。ネドベド、コレル、ロシェスキーら欧州リーグで活躍中の選手が並んだ。日本代表は、ハンガリー戦の先発メンバーに小野、稲本が加わった、いわゆる、国内、海外融合チームだ。 試合内容としては、チェコの動きの鈍さばかりが目立った。攻撃面では、前線でネドベドにボールが入っても周りの選手のサポートがない。パワープレーを試みても、こぼれ球をコントロールできない。守備面では浅いバックラインの割には戻りが遅い。日本の攻撃陣のサイドスペースに広がる動きをマークしきれない。チェコは後半開始から、フレンドリーマッチということで、大幅に選手を入れ替えたこともあり、コンビネーションの改善は見られなかった。終盤の猛攻撃も楢崎の好セーブに阻まれた。 チェコの敗因は何だろうか――それはチェコサッカーの特徴、強さに皮肉にも内在している。チェコサッカーの特徴は、�.灰鵐咼諭璽轡腑鵝↓∩反ノ蓮�高い規律意識、��スピード、�だ騎里覗瓩ぅ僖慌鵑掘弔箸い錣譴討い襪�、ネドベドがインタビューで答えていたように、「結束力」こそがチェコサッカーを表すキーワードだ。 チェコは、スラブ系のチェコ人によって建国された国だが、長らくハプスブルク帝国(ドイツ系)の支配を受けた。帝国崩壊後、第二次大戦後は事実上ソ連の支配下にあり、自由を奪われた生活が続いた。1968年、チェコ人の自由を求める声は首都プラハで爆発し、社会主義政権からの解放を求めて人々は立ち上がった。いわゆる、ソ連スターリニズム支配に異を唱えた、「プラハの春」だ。1990年代、ソ連崩壊、東欧諸国の自由化が現実のものとなったが、チェコは、それより30年近くも前に自由化の声を上げていたのだ。「結束力」――この言葉は、チェコ人にとって生半可なものではない。大国支配に民族の誇りを賭けて立ち向かってきた、チェコ人の過酷な歴史の中で育まれた言葉なのだ。 日本戦、チェコは自らのチームの特徴を現す、すべての機能を停止していた。海外でプレーする代表選手同士、練習する時間がない、体調が悪い、フレンドリーマッチなので精神面(モチベーション)が高まらない…などの理由が挙げられるだろう。どこかの代表が勝てないときに挙げられる理由と同じだ。 諸々の要因が重なることによって、歯車が狂い失点する、一方相手チームは、得点を契機に逆に歯車が実力以上に噛み合い始める。そんな試合がサッカーにはある。実力の差があっても、試合を失うことがある。そんな試合がきのうの、日本vsチェコだろう。
●トルシエジャパンに戻っただけ 日本で目立った選手といえば、得点を上げた久保、そのチャンスをつくった玉田の2トップ、たびたびのピンチを救った楢崎はもちろんだが、なんといっても、小野をベストプレイヤーとして挙げたい。ワンタッチのパス、速い判断、堅実な守備と非の打ち所がなかった。守備面では、稲本も健闘した。ネドベドへのマークはほぼ完璧だった。 もう一人、どうしても触れておかなければいけないのが三都主だ。たびたび書くことなのだが、左サイドハーフの三都主は、いまの代表の中で、もっとも魅力的な存在だ。左SBの三都主とは別人。ゴールに近いところで動き回る三都主は相手にとって、脅威である。 この試合、日本が3バックであったことも、勝てた要因の1つだろう。それまで抑えられてきたものが、一気に解き放たれたように私には見えた。しかも、中田不在である。この遠征を機に、日本代表が結束力を高めたのならば、それは代えがたい大いなる収穫だ。3バックの採用、三都主は前、調子のいい選手を起用する、組織力・結束力――このコラムで書き続けてきたことが、遠征のチェコ戦で実現したのは、おそらく代表監督が意図したことではなく、偶然の帰結だろう。もっと早く、気がついてくれたならばと思うと、それが残念でならない。世界9位に勝てたことを喜ぶのはまだ早い。04年4月末、日本代表は、02年に到達した、トルシエの日本代表の姿に戻ったにすぎないからだ。この先、失われた2年間を取り戻すことができるのだろうか。 世界のサッカーは動いている。隣国韓国は代表監督にメツを迎えるらしい。いい人選だ。この監督交代で、韓国が強くなることはあっても、その逆はない。日本もチェコに勝ったからいまの代表監督でいいや、などと思ってはならない。すべての偶然がかさなり、監督のビジョンと逆のチームが出来上がって、いい結果が出た。このことが意味することを肝に銘ずるべきだ。
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