Sports Enthusiast_1

2003年12月12日(金) W杯とは何か

いまさら、サッカーW杯の価値を問い直しても何も始まらないけれど、W杯に一元化されたサッカー観というものを好ましいいとは思っていない。W杯出場は悲願ではあるけれど、出場できないことも覚悟しなければいけない。日韓大会には、オランダもチェコもこなかった。予選突破に最善を尽くすにしても、そのためだけに、イレギュラーな制度を設けたり、特定の選手を特別扱いする時代ではない。もちろん、予選で勝てなければ、責任をとらなければいけないが、サッカーというスポーツは、W杯だけがおもしろいわけではない。
前回のコラムでは、欧州・南米ではクラブと代表の関係がかなり拮抗しており、両者に上下関係がないことを、やや大げさに書いてみた。私の考えが日本のサッカーファンに受け入れられる余地はないけれど、いまの日本代表とクラブの関係のあり方には、危険を感じている。
サッカーはチームで行うスポーツでありながら、代表というのは、即席の寄せ集め集団にすぎない。だから、代表の試合のレベルが、サッカーというスポーツにおいて、最高水準を示すわけではない。つまり、代表の試合がつねに、最高のパフォーマンスだと思ってはいけない。もちろん、日韓大会の韓国vsイタリア、同じくポルトガルといった試合は熱戦ではあったけれど。
W杯の予選は、各国リーグ戦の合間に行われる。いま、サッカーほどグローバル化が進んだスポーツはない。そうした状況のなか、幸いにも、サッカーファンは<リーグ戦>、W杯地域予選等の<代表戦>の2つを楽しむことができる。サッカーファンというのは、全スポーツ中、最も恵まれた存在なのだ。世界レベルのクラブ対抗戦、加えて、欧州選手権・アジア選手権・南米選手権といった代表による地域戦と、お腹いっぱい、おいしい料理を楽しむことができる。
だが、選手は人間であり故障や調子の波に襲われる。すべての試合に全力で挑めば、つぶれてしまうのがサッカー界の現実だ。欧州にいった中田、中村、高原が活躍できていないが、彼らの不調の原因をたびたびの欧州〜日本の往復だと断言する根拠はないが、しかし、不調の一因だと私は考えている。
こうした世界サッカーを取り巻く環境変化により、代表のチームづくりにおいては、特別なノウハウが必要となっている。たとえば、短期間にチームのコンビネーションを醸成する力、選手選考の力、短期間で敵を知る力・・・などが挙げられる。これらは、通常のサッカーチームが必要とする能力とは別のものだ。たとえば、この秋、ジーコ代表監督が「固定メンバー」と言い出したとき、私は世界の趨勢と違うなと直感した。日本のサッカー選手が海外に散らばりだした時代、南米や欧州に近づいたいま、「固定メンバー」というよりも、いかに短期間に寄せ集め集団を1つのチームとして束ねるかではないのか。あるいは、固定メンバーを組むことが難しい前提で、代表チームの底上げを図る道筋を探るべきではないのかと。
W杯予選開始までのあいだ、親善試合、タイトルのかかった公式戦など、代表の力を試す試合が何試合組まれているのかを知らない。ただ、大雑把に言えば、その時々に合った、試合の位置付けが必要だろう。ジグザグ路線、行きつ戻りつでは、成果は少なかろう。
冠大会をスポンサーに売るためには、目玉選手が必要なのはわかる。このことは、日本のサッカーファンの未成熟さを示すものではあるが、顔見世興業でいいのかどうか。日本のサッカーファンがW杯の興奮を引きずりたい気持ちもわかるけれど、それならば、親善試合用に緩和された選手交代枠を十二分に活用すべきだった。親善試合に勝たなければクビが飛ぶのが日本代表監督の既定路線ならば、ジーコ監督のクビが今日現在あることのほうが不思議だ。日本の協会は負ければすぐ、監督のクビを切るほど単純ではない。
細かいことでいえば、代表戦で先発メンバーを事前に公表するやり方も納得できない。短期間でチームとして束ねるには、選手同士がライバル関係にあることが前提だ。海外組だって、合同合宿で調整ができていなければベンチスタートのほうがいい。海外組=特別扱いも愚かだ。なんども書くけれど、海外でベンチの選手よりも、Jリーグで活躍した選手を先発にしたほうがいい。特定の選手にチャンスを与えるよりも、調子のいい選手をどんどん使うべきだ。
代表の試合には興奮があり緊張があるといわれる。本当にそうなのか。代表サポーターやマスコミがそう、思い込んでいるだけではないのか。私には親善試合で国家が演奏され、フラッシュがたかれ、代表選手が居並ぶ姿を見ても、確かにその光景はいつか見たものではあるけれど、長旅に疲れ時差ぼけで、しかも、中心選手が抜けた海外の代表チームをみて落胆し、緊張のないダラダラ試合を見て辟易する。
そんな試合よりも、東アジア選手権で、日本と香港の選手同士がつかみ合うシーンを見て興奮する。Jリーグの横浜やFC東京、市原の全力プレーに心の中で拍手を送っている。サッカーは取っ組み合いではないけれど、モチベーションの高い試合でなければ、見るに値しない。
国と国が戦うことだけに意義を見つけるのは、スポーツの本質から外れる。だから、日本代表に対する整然とした応援風景も好きではない。サポーター個々にそれぞれ、おもしろい場面があるはずだろう。もちろん、ゴールは共通だけれど。


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