| 2003年11月12日(水) |
翳りだした「日本代表」ブランド |
報道によると、サッカー日本代表の試合の視聴率が思わしくないという。その記事は、ジーコジャパンがすっきりした試合をしないからだ、という論調だった。 昨年のW杯において、日本のサッカー熱は息を吹き返した。なかでも、キャンプ問題で話題をさらったカメルーン、フランスを撃破したセネガル、日本と予選を戦ったチュニジアと、アフリカ勢は日本のサッカーファンに鮮烈な印象を与えた。アフリカ勢のなかでも、カメルーン、セネガルにナイジェリア、南アフリカを加えた「ブラックアフリカ」は、サッカーの実力国として認知された。しかしながら、日本代表はこれら「ブラックアフリカ」と大会で戦うことがなかった。 W杯後、サッカー協会は、この「ブラックアフリカブーム」の余波を利用して、冠大会のマッチメークを仕組んだ。ナイジェリア戦、セネガル戦、そして来週に予定されているのがカメルーン戦である。私はブラックアフリカ勢の試合を実際に見たことがないのだが、おそらく彼らがピッチに登場した姿は、絵になるのだろう。高い身体能力と潜在的パワー。日本代表と彼らとのの試合に集客力があることは、想像に難くない。 しかし、サッカーの現実は、マッチメークで描いた筋書きとおりに進まない。アフリカの有力選手に限ったことではないが、欧州リーグ開催中に、遠い日本まで中心選手を遠征に行かせるクラブは少ない。FIFAの規約があるといっても、中心選手を遠征させない理由はいくらでも探せる。規約どおりに選手を派遣させたとしても、スケジュールはタイトである。そんな状況で凡戦を演じたのが、ナイジェリアとの試合だった。次のセネガル戦では、セネガルチームが日本に長期間滞在するという異例の措置がとられたが、その結果、セネガルが実力を発揮し、日本代表は歯が立たなかった。実力差がありすぎてこれまた、凡戦となった。そして、カメルーン戦は・・・ でもでも、たかだか親善試合なのである。日本代表がチュニジア、ルーマニアで行った親善試合のスタンドをテレビで見る限り、ガラガラであった。日本の五輪チームがカタールでカタール代表と戦った試合の観客数は、報道によると、500人程度だったらしい。イタリア、スペイン、フランスなどではもうちょっと、客は入ると思うが、それでも、日本で行われる国際親善試合の熱気はないだろう。その理由については、前に書いたことなので繰り返しになるが、欧州では、クラブ対抗戦、代表戦を問わず、真剣勝負がいくらでもあるからだ。だから、国際親善試合は調整、テスト、様子見といった位置付けのように思える。もちろん、真剣勝負がかもし出す緊張感はない。 一方、サッカーの辺境日本では、国際親善試合を楽しみにしているサポーターがたくさんいる。W杯の残り香を楽しみたい人々である。そういうサポーターは応援にも熱心だし結果にも敏感である。彼らには、遠く日本にやってきた各国代表チームのモチベーションなどどうでもいい。海外では、代表がつまらない試合をすれば、観客が黙っていないのだが、日本では、日本代表が勝てば「感動」し、負ければ「がんばれ」というわけだ。こうしたナイーブなサポーターに支えられているのが日本代表である。それもサッカー人気の維持というレベルでは重要だと思うし、人にはさまざまなサッカーの楽しみ方がある。サッカー協会だってお金を稼がなければいけない。だから、日本代表が行う国際親善試合を否定しない。冠がつくうちが華だという見方もできる。 サッカーに限らずスポーツの内容・結果は、前提条件を率直に反映する。モチベーションの低い戦いは、人々を夢中にさせることはない。たとえ、日本代表が勝っても、相手のコンディションが悪ければ、試合内容はつまらない。内容の薄い試合であれば、テレビの視聴者はチャンネルを変えてしまう。それはテレビ観戦者のサッカー理解が低いからではない。視聴率が上がらないのは、視聴者のレベルが低いのではなく、試合内容のレベルが低いのである。 「日本代表」というブランドは、サッカー場に義務のように足を運ぶコアの部分と、テレビで応援するマスに分けられる。海外のコアは、代表が負ければ、監督の更迭を叫ぶし、マスコミも辛らつな批判をする。ところが、日本のコアは内容にかかわらず、熱心にサポートし続けるだろう。一方のマスは、内容次第で自由に離れていく。私にいわせれば、日本代表を相対化できるマスの方が、日本代表を客観的に評価しているのである。いま、日本代表のテレビ視聴率が下降しているとしたら、それが現状の日本代表の客観的な評価である。言葉は悪いが、ジーコ監督はコアに媚びて、大衆の支持を失っている。ジーコブランドはコアには「神様」だが、マスにとっては、「つまらいおじさん」にすぎない。 カメルーン代表がどういう状態で日本にやってくるのかわからないが、結果としてこれまで行われたアフリカ勢との対戦のように内容の薄い試合ならば、マスはジーコジャパンに引導を渡すだろう。そして、人々は親善試合の本質を理解し、イベントサッカーに疑問を抱くようになる。そうなれば喜ばしい未来である。真剣勝負のJリーグに観客が集まり、親善試合はコアだけが関心を示す。日本でも、コアが騒ぎ出せば状況は変わるだろうが、それもなさそうだ。 私には、いまのJリーグの試合のほうが、日本代表の試合よりもおもしろい。
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