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2003年11月04日(火) 守備力

プロ野球は阪神がリーグ優勝し、Jリーグは浦和がカップ戦に優勝。どちらも長いこと下位に低迷していたが、地元密着の熱いサポーターに支えられてきたチーム。日本のプロスポーツもじわじわと「構造改革」を果たそうとしているようにみえる。プロ野球においては、「巨人」人気の崩壊、フランチャイズシステムの確立であり、サッカーは磐田、鹿島の二強時代の崩壊である。
もともとサッカー界にはプロ野球の「巨人」に該当するチームがないので「構造改革」の内容がプロ野球界と異なるのだが、浦和の初タイトル獲得は、日本のサッカーレベルが新しい局面に入ったことを象徴している。
これまでの日本サッカー(Jリーグ)のスタイルといえば、中盤重視の技術志向だったのだが、いまや、サイド攻撃、スピード重視のスタイルに切り替わろうとしている。同じことの繰り返しになるが、浦和のエメルソン、田中の2トップの「速さ」の成功は、司令塔(ファンタジスタ)の存在を重視してきたJリーグのスタイルが終幕を迎えたことを明らかにした。裏返せば、DFに「速さ」が求められているということになる。
Jリーグではしばしば、「コンパクトに」という目標が掲げられるが、「コンパクト」にしてディフェンスラインを浅くする戦術は、裏を取られるリスクを負っている。そのリスクを軽減するのが、守備の「速さ」である。
浦和の勝利は、速いFWの存在をクローズアップしたが、鹿島サイドに立てば、浦和の「速さ」を止められなかったことが敗因である。換言すれば、鹿島の敗因は、最終ラインの老朽化と、中盤とりわけ、このチームのキープレイヤーである小笠原の守備意識の稀薄さにある。まず、鹿島のDF陣=秋田、大岩、名良橋は失礼ながら年齢的な衰えから、スピードにおいて、浦和の2トップを止める力がなくなっていた。次に小笠原だが、彼はもともと守備の意識が低い。しかも、守備の技術がないから、イエローを2枚出され退場した。これでは鹿島に勝機はない。小笠原は攻撃の起点だと思われているが、彼の役割は浦和の前線へのパスの出所をつぶすことも含まれている。彼に戦況を分析する能力があれば、FWエウエルの負傷退場時点で、自分達の戦力的劣勢は明らかである。ここからはチーム全体が「守備的」であることが求められた。粘り強く守って、セットプレーで得点を、という慎重な展開も選択肢の1つである。ところが、小笠原は相手の速い動きに冷静さを失い・・・、というわけである。こういう「読み」ができるかどうかも、選手の能力の1つである。
いまのJリーグの上位は、有能で運動量豊富なDFががんばっているチームによって、占められている。FC東京、横浜、市原、浦和、東京Vなどである。それに反して、地盤沈下してきた鹿島、磐田、清水、G大阪、さらに、下位に低迷する各チームは、「いいDF」がいないことが弱点となっている。私はこれまで、Jリーグで上位を占める条件は、運動量豊富なサイドプレイヤーの存在だと言ってきたが、それに加えて、「いいDF」の存在も加えておきたい。
Jリーグは確実に進化している。各クラブはこのまま、モダンなサッカーを続けてほしい。少なくとも、「黄金の中盤」などというアホなチームコンセプトを掲げないでほしい。個人の創造性だとか自由だとかの「屁理屈」もこねないでほしい。選手は、速さ、パワー、運動量、闘志が基本である。それに加えてセンスがよく、判断力や予測力といった、天性の才能を持ったプレイヤーがレギュラーに上り詰めることができる。チーム戦術や規律については、監督が考えればよい。監督が正しい指示を出して、選手がそのとおりにできれば、チームは勝利するに決まっている。それができないから、サッカー、いやスポーツは先が読めないのである。
監督の目指す方向が正しければ、それを達成するために、選手は練習するしかない。厳しい練習で体力をつけ、相手よりスピードやパワーで上まわるしかない。スポーツの勝利の方程式は単純にして明快である。が、その答えは試合をやってみなければ出ない。そこが数学とは違う。だから、私にとって数学はつまらないものだが、スポーツはおもしろいものなのである。


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