きのう、4年前のサッカーW杯フランス大会を取材した某通信社の友人と酒を飲んだ。そのとき、かつて、Jリーグ名古屋の監督だったベンゲル氏(現アーセナル監督)がフランス優勝を予言していた、という話を私に聞かせてくれた。 大会前、ベンゲル氏が日本代表のキャンプ地を訪れ、そこに集まった日本人記者と会見を行った。「今回の優勝国は?」という記者の質問に、ベンゲル氏は「フランスが有力」と語ったという。根拠はなんといっても、「ホームの利」。加えて選手が上り坂にあること・・・などを挙げたらしい。 友人はこの記事を国内外に配信したのだが、とりわけ、日本のマスコミは無視、まったく取り上げなかったという。日本のマスコミがサッカーを知らなすぎると、怒っていた。まったくそのとおり。 当時、ことほどさように、フランスの優勝は「意外」であった。サッカーにおける「ホームの利」を知らないわけではないが、やはりランキング、知名度で予想をたててしまう。日本では(私も含めてだが)、ヨーロッパの最強国といえば、イタリアかオランダという認識が一般的。この二カ国からややおちてイングランド、ドイツ。北欧、フランスは中堅だろうと。 もちろん、ベンゲル氏がフランス人だから「フランス優勝」と言ったにすぎない、という見方もできる。が、私は当時の日本サッカー界が、「ホーム」の重要性を知らなかったエピソードの1つだと思っている。 それから4年が過ぎ、日本でW杯大会が行われた。その王者フランスは韓国での1次リーグで敗退、反対に、ホームの利で韓国が準決勝まで進んだことは記憶に新しい。 W杯開催で日本のサッカー事情は変わった、と、いいたいところだが、実はあまり、変わっていない。どこが変わらないかといえば、サッカーにおけるもっとも基本的なもの、すなわち、「ホーム」の認識だ。その象徴が先述した「トヨタカップ」の開催と日本人の反応。一流を崇拝する日本人のブランド志向が、サッカーにもまかり通っている。Jリーグの諸制度を含め、このことは何度も書いたことなので繰り返さない。 なお、私個人にとってJリーグの致命的欠陥は、ホームチームが存在しないこと。東京には2チーム(FC東京と東京ヴェルディ)あるが、私の住む東京・下町からは、どちらもホームではない。東京スタジアムなど、下町の住人から見れば、東京ではないのだ。私達=東京・下町の住民は、さびしいサッカーファンなのだ。トヨタよ、「トヨタカップ」など中止して、名古屋に加えて、東京・下町にもクラブとサッカー場をつくってくれ!
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