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2002年10月14日(月) 代表監督という職業

サッカーアジア大会決勝はイランに1−2で負け。いろいろ課題の残った試合だった。けさの朝日新聞は日本の敗因を後半開始に行った選手交代に求めていた。一理も二理もある見方だ。
それまでの試合経過としては、日本が押していた時間帯もあったが、攻めの形としてはイランの方がよかった。そこで交替させた選手が前の試合でクリーンシュートを決めた鈴木であった。日本の形は確かに良くはないが、0−0の膠着状態。ツキのある鈴木を交替させる必要があったかどうか・・・。
結果としては、後半立ち上がりに日本の守りにミスが出て1点を献上。その後ずっとイランが日本を圧倒する時間が続き、交替選手をさらに交替させるという指揮官としては絶対にやってはいけない事態を招いてしまった。終了間際にも信じられないミスが出て、イランにやらなくてもいい2点目を献上。日本は1点を返したものの、後の祭り。監督の策は凶とでたわけだ。
アジア大会に出場したこのチームは、選手に経験がないといわれたが、もっとも経験のないのが監督であった。この監督はコーチとしての経験はあっても、実戦の指揮経験がまるでないという。ここまでの予選リーグ・決勝Tでは采配ミスがなかったようだが、決勝でミスを犯した。ミスを誘発したのは、1つは決勝進出で色気が出たことだろう。ここまでは期待されない存在であっただけに、気軽に試合に臨めたのではないか。ところが、予想外の選手の活躍で決勝まで来た。監督はつい、功を焦ったのだ。2つ目は、イランがそれまでの対戦相手より格段に強かったことだ。フィジカルでは欧州のチームに近い。キック力(シュート力)もある。強い相手を前にして、判断力が鈍るというのは、経験の浅いものがしばしば陥る傾向である。
この試合が残した最大の課題は、代表監督選出の根拠についてである。サッカーでは経験が重要だといわれるが、それは、監督にもいえる。監督経験のないコーチを代表監督にいきなりもってくる理由・根拠が、私にはわからない。日本サッカー協会は、選手にはJリーグでの実績を求めるくせに、代表監督にはそれを求めない。アジア大会の代表チームの監督が、世界的にはもちろん、Jリーグの監督経験すらないということが私には信じられない。このコーチ上がりの人物に監督経験をつませようというのなら、まずJリーグで実績を残せといいたい。Jリーグで実績を残している日本人監督は、磐田の鈴木監督だけだろう。G大阪の西野監督もまあまあだが、鈴木氏には及ばない。(誤解されるとこまるが、私はいまのU21の監督がコーチとして実績のある人物であることを十分評価している。コーチと監督が違うということを言いたいだけなのだ。)
フランス大会のとき、解任されたK氏は論外として、コーチのO氏に監督を任せたのも不可解であった。もっとも、その器でないことはすぐに証明されたけれども。
A代表であろうと、U21であろうと、(Jリーグを含めた)実戦の場で実績を上げた監督に各代表監督の道を開くべきだ。そこに国籍はない。監督というのは、何度もいうように、実績がすべての「使い捨て」の職業なのだ。もちろん、適性はある。若い選手の育成に向いた監督とそうでない監督がいる。だから、Jリーグ関係だけでは人材不足なのである。広く世界に人材を求めなければいけない。U21クラスの代表監督としては、例えば、トルシエ氏などが向いていると思う。日本サッカー協会やその周辺の組織に寄生して生きていこうというサラリーマンには不向きの職業なのだ。いずれにしても、どこの年代であれ、代表監督はジーコが兼任するか経験ある人間を起用したほうがいい。そうでないと、コーチとして優秀な人材を失ってしまう可能性も出てくる。
世代を問わず、代表監督に実績主義を求めない官僚的体質が、日本サッカーの発展を妨げる。


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