プロ野球は末期症状である。両リーグとも優勝が決まり、ファンの興味は個人記録だという。パリーグはカブレラが最多本塁打(一時は三冠王)に挑戦、セリーグは松井が三冠王にそれぞれ挑戦した。結果はご存知のとおり、二人とも不成功に終わった。 ペナントの行方は決まり、すでに消化試合に入っているにもかかわらず、パリーグではカブレラと勝負しない試合が何試合かあったようだ。もうペナントは終わっているのだから、投手は自分の力量を試す意味でも、また普段試合に出ていない投手ならなおさら、実戦で強打者と勝負して腕を磨くべきだろう。かりに世界記録だろうがなんだろうが、打たれたところで、ファンはその投手を非難したりしない。不名誉などと考える必要はさらさらない。むしろ、正々堂々と勝負した投手として賞賛するだろう。 記録を阻止する手段はいろいろだが、ファンが納得する手段を選択すべきだ。かりに、西武とある球団が首位を争っていたら、ある球団が勝負にこだわって相手の主砲カブレラを敬遠したとしても、だれも文句は言わない。当然のことだと思う。ところが消化試合に至って勝負をしないとなれば、それをファンに納得させる説明が必要である。説明としては、野球協約だかルールブックをもちだして(名称は違うかもしれない。要するにそのようなもの)、(消化試合といえども、)プロ野球チームは勝負を競うことを義務づけられているというのが一般的のようだ。 規約をあくまでも遵守し消化試合であろうと、勝負にこだわるのならば、プロ野球機構は個人記録を認定しなければよい、というか認定しないほうがいい。リーグ表彰等をしないのである。個人記録は選手の査定のために、球団経営者がそれを管理する。もちろん、マスコミ、ファンが騒ぐのは勝手だ。 プロ野球機構(リーグを含めて)が、個人記録をファン獲得の手段として認定する(=その必要を認める)ならば、個人記録を故意に妨害した選手、チームにペナルティーを科すべきである。勝負しているのかしていないのか判定できない、というかもしれないが、それこそ、機構内にしかるべき委員会を設置すればよい。委員の選出はスポーツに含蓄のある各界の有識者である。経済界にも、適正な競争を行わないものを裁定する委員会がたくさんある。公正取引委員会が代表的存在だが、ほかにも証券取引倫理委員会、広告なんとか、○○適正取引推進機構等々などがある。 いまのプロ野球は堕落しているのである。していないと思っているのは、コミッショナー、リーグ関係者、球団オーナー、スポーツマスコミ、ファンである。ということはだれも堕落していると考えていないじゃないかと反論されるが、それは違う。野球であれサッカーであれ、プロスポーツのあるべき姿というものがある。理想的な組織はこの世に存在しないけれど、このレベルなら大丈夫というラインがある。そんなもの知るか、といって閉じこもれば、それこそ日本経済の二の舞である。プロ野球バブルは、日本経済のバブルより長いとはいえるけれど、バブル経済のさなか、日本経済のいまの停滞を予測した人を私はあまり知らない。 ※なお、記録がかかった最終戦、カブレラの対戦チーム・ロッテは真っ向勝負をしたという。ロッテチームの名誉のため、付記しておく。
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