サッカーW杯の選手選考結果をテレビ各社が伝えた。「この選考結果は驚くに当たらない・・・これまでの論理の帰結である」というトルシエからのメッセージを何度聞いたことだろうか。 確かに冷静に見れば、「論理の帰結」である。GK3人を除いて、DF6人、MF10人、FW4人。日本の3−5−2のシステムに照合すれば、前に紹介したと思うが、前フランス代表監督ジャケの言葉どおり、各ポジション2人ずつである。しかも、予想を覆して秋田、中山を入れたことにより、DF=秋田、MF=ヒデ、FW=中山と、それぞれのパートに先回W杯経験者を配したことになる。これが「論理の帰結」でなくて、なんであろうか、というわけだ。 さて、この選考結果を批評した各氏のなかで、最も的を得たものは、管見の限りではテリー伊藤氏の「腰が引けた」ではないだろうか。テリー氏の指摘はこうである。トルシエは本来「トルシエ・チルドレン」(自分が育てたと言われている若手)でのぞみたかったのだが、先のノルウェー戦の大敗で腰が引け、あわててベテランを入れたのだと。フランス料理でいきたかったのだが、納豆と味噌汁(秋田、中山)を入れざるを得なくなったのだと。さすがテリ―氏、うまいことを言うものだ。 テリ―氏の指摘に私の邪推を更に付け加えたい。トルシエは中村を入れるつもりは最初からなかった、ところが、中村がテストマッチで思わぬ活躍をしてしまった。とくに強豪ホンジュラス戦での活躍は意想外であった。私は「中村外し」についてはトルシエに賛成である。ホンジュラス戦の彼の「活躍」はラッキーであって、ホンジュラスはあんなぶざまなチームではない。しかし、日本のマスコミは「魔法の左足」と称して中村に寛大である。このあたり、サッカー報道のレベルがまだまだ低いのが残念である。トルシエは中村を外した批判が自分に集中することを、中山・秋田、つまり、納豆と味噌汁を入れることで、回避したのではないか。 選考結果を含めて、トルシエ路線が破綻したのがあのノルウエー戦の大敗である。私が繰り返し述べてきたように、日本は欧州ゲルマン系サッカーに弱い。つまり、日本代表は欧州では通じない、すなわち、世界では通じないのである。この弱点を知りながら、これまで、欧州各国との対戦を回避してきた。まあ、ゲルマン系ではないが、世界王者フランスに0−5で負けたこともあったが。 しかし、サッカーでは、苦手チームであっても、それを克服する手段が残されている。「守り」である。結果論ではあるが、もし日本代表がアウエーでの格上ノルウエー戦のゲームプランを「守り」においていたならば、あのような結果にはならなかったはずだし、選手選考結果も変わっていたに違いない。いまの日本がアウエーでノルウエーに攻め勝てると本気で思ったのだとしたら、トルシエはプロの監督ではない。ノルウエー戦は、トルシエなりの実験だったのだろう。 トルシエはベルギー戦のイメージをどのように描いているのだろうか。それを予想することほど、楽しいことはない。どころか、その結果を知るまでに、なんと二週間を切ったのである。サッカー狂にとって、この10日あまりを「至福のとき」とよばずに、なんと呼ぼう。
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