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2013年07月09日(火) |
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始発を待ってる。 |
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始発を待ってる。 駅前のロータリーのガードレールに腰かけて、始発を待ってる。 明け方の、青とも紫とも形容しがたい空を見上げる。 星と月と太陽が、微妙な距離で牽制し合うこの彩度の、空の色が好きだ。
三者で牽制なんて、まるでアタシとママとパパみたいだ。 嘘。 そんな時代は数年前に終わった。 アタシの受験も就活も終えた今、アタシたち親子に緊張感なんてない。
パパは定年になって新聞を読むのを止めた。 ニュースはテレビで見ればいいし、最近はスマホだってある。 夕食の時、ママにそんなことを言ってた。 夕食と言えば、最近食卓にイタリアンが頻繁に並ぶようになった。 パパがイタリアン好きだったなんて、知らなかった。
始発はまだだ。 黒と青のグラデーション。その均衡が徐々に崩れ、街の輪郭が姿を現す。 新聞を運ぶトラック、ファミリーマートのトラック、営業所に戻るタクシー。 街が徐々にボリュームを上げる。
朝の空を眺めていると、世界を発見したような気分になる。
元カレが言ってたセリフ。違う、別の先輩だった。あれ?良く覚えてない。 大袈裟なんだよ、って思ったけど、本当はそういう気持ち、判らなくもない。 アタシもたまに発見する。 ママがamazonでスゴイ高いオリーブオイルを注文したこととか。 些細なことなんだけど、些細なアタシの世界では、それは地球が回ってることを発見したのに等しい出来事なのだ。
始発はもうすぐだ。 さっきから、片手にストローの刺さったアイスコーヒーのプラカップを持った男の子が視界に入る。 この近所にはスタバどころか、ドトールさえない。 きっと郊外のコンビ二かなにかで買ったんだろう。 ということは、車なんだろう。 車で始発は待たないから、きっとナンパかなんかだろう。
男の子はチラチラとコチラを見ている。 土曜の朝のローターリーだもん。カラオケ帰りの女の子なんて珍しくないよ。 やっぱスーツで朝帰りって目立つ?それとも髪、酷いことになってる? トートバックから鏡を取り出し、自分の顔を覗く。
駅のシャッターが開いた。 もうすぐ電車が動く。
男の子が携帯に何か言ってる。 「…あと何分くらい?…」 待ち合わせか。じゃ本当に髪型が酷い事になってるのかもしれない。
時々、アタシは世界を発見する。 それはアタシが世界の外にいるからだ。
難しい概念の話じゃない。
時々、寂しくなるだけだよ。
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