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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2010年05月05日(水)
sister twilight

この街には、君と二人で歩ける海岸がない。
額に汗を浮かべて登るような山もない。
古い寺院も、蔵も、数奇屋造りの町並みもない。

でも、空がある。



16号を八幡橋から直進、間門の交差点をさらに直進。
湾岸線と並行してバイクを走らせる。
CBX400F3、GSX750SKANATA、GSX750E�供�CB650C、そしてVOLTY。
乗ってるバイクは次々と変わっても、オイルと潮風の混じったようなこの街の匂いは変わらない。



埠頭から見る景色が好きだ。
青空の下起立する、キリンの群れのようなクレーン。
その合間に見える青空の、フレーミングは抜群だ。

空の蒼、海の碧、白い雲。
そして日常生活にはない尺度で並ぶ巨大なクレーン、タンカー、コンテナ。
大気の湿度と金属の質感。
その極端なコントラストを潮風が中和する。

潮風は鉄も風景もそれを眺める人間も、等しく腐食する。



D突のシンボルタワーの下の芝生で、横になって本を眺める。
背中から、地面の温度と芝生の湿度が伝わってくる。
積乱雲はまだない。
空気はまだ、さらさらと軽いままだ。

気付くと眠っていた。
本のページはさっき開いたままだ。

風が強い。
夕凪の前の風だ。

立ち上がり、背中や尻を叩く。
斜めになった太陽が海面に反射する。
サングラス越しの目をさらに細める。



新山下のHOME'Sにバイクを停める。
マクドナルドでコーヒーを飲む。
エレベーターで屋上に上る。

広い駐車場に車は殆ど停まっていなかった。

ここから見る横浜港の夕暮れの景色は、最高だ。

みなとみらいのビル群が作る薄紫の光の中、コスモクロックやマリンタワーがスワロフスキーのように輝く。
正面にはベイブリッジ。海と空の曖昧になった境界線の中に浮かぶその姿は、まるで浮遊する都市のようだ。
一方根岸湾方面の空は、海の延長かと思うような青。この青は大気圏の青だ、といつも思う。それは地球上の青全ての、標準になるような青だ。



リーバイスの尻ポケットから携帯を取り出す。
カメラを空に向け、何度かシャッターを切る。

景色はフリーズドライできない。
アーカイブになった夜景は、標本の蝶みたいで少し残酷ですらある。

メールに添付。送信。

それでも、これが君のパズルの1ピースになれば僕は嬉しい。



この街には、君と二人で歩ける海岸がない。
額に汗を浮かべて登るような山もない。
古い寺院も、蔵も、数奇屋造りの町並みもない。

でも、空がある。

勿論、君の住む街にだって空はあるだろう。
空はつながってる。

そうなんだ。
この街で空だけが君とつながってる。



この街には、君と二人で歩ける海岸がない。
額に汗を浮かべて登るような山もない。
古い寺院も、蔵も、数奇屋造りの町並みもない。

でも、空がある。

空を見てる時は、いつだって君と一緒だ。


エンピツ