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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2008年01月05日(土)
ファーストキス

山下公園でのカウントダウン。
中華街の爆竹と喧騒。

そこからほんの数キロ離れた本牧埠頭。

沖に停泊した貨物船の汽笛で今、年が変わったことを知った。
隣でマフラーに顔を半分埋め、手を擦り合わせてる女は、さっき拾ったばかりでまだ名前も知らない。



成層圏の先から見上げるような雲ひとつない空。
星が降るならたぶんこんな夜だ。
ベイブリッジの灯りも、オレンジに光る対岸の埠頭の作業灯も、今夜の星の瞬きをかき消すには至らない。



「キレイ。」
女の語尾が寒さで震える。

肩を引き寄せる。
線の細い身体がコートの下で小刻みに震える。

女は目を閉じ、僕に身体を預ける。



長いキス。



汽笛が、また鳴る。



女はゆっくりと目を開ける。
口からは大きな吐息。

「星。」

「え?」

女は首を傾げる。

「瞳に星が映ってる。」

女は唇に笑みを浮かべ、もう一度僕の首に回した腕に力を込めた。



重ねた唇は、もう震えてなかった。


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