|
|
2007年11月16日(金) |
|
delicacy |
|
眠れない夜だった。 窓の向こうで梢のざわめく気配がした。
ソファーの上で足を縮め鈍痛が去るタイミングを奥歯で計る。 こめかみが脈打ち、眼の奥が熱い。 頭痛の原因はたぶん、低気圧が近づいたせいだろう。
ロキソニンで抑えるかロヒプノールで眠るか考えた末、結局飲むことにした。 酒は鎮痛剤にもなるし睡眠導入剤にもなる。量さえ間違えなければだが。
キッチンに移動する。 キャビネットからグラスを出したところで、二度目の鈍痛が来た。 ダイニングチェアに腰を降ろす。そのまま固まる。たぶん10分はそのまままんじりと動かなかったろう。 テーブルに肘を付いたまま、目の前にあるジンのボトルを眺める。 意を決してこめかみから手を引き離し、琉球ガラスのショットグラスになみなみ注ぐ。 トニックウォーターなんて気の利いたものはなかった。 水道水をチェイサーに一息で飲み干す。
デリカシーの解釈は人によってこんなにも違うのかと驚く。 たぶん、デリカシーのない扱いしか受けてこなかったからデリカシーたるもの自体よく判らないんだろう。
君が稚拙に弄ぶその言葉は、僕なのだ。 君がいとも容易く言葉遊びに使うその言葉自体が、僕なのだ。
三度目の鈍痛はこなかった。 ダイニングチェアから立ち上がる。 キッチンで口をゆすぎそのままベッドルームに歩いた。
窓の外は相変わらずの風だった。
いつか判るかもしれないし、一生判らないかもしれない。 どっちにしろそこに僕が立ち会うことはない。
|
|