職業婦人通信
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2005年01月25日(火) |
ブーケをめぐるアレグリア その3 |
------前回までのあらすじ------- 友人・麻子の結婚パーティで どうしてもブーケトスのブーケをGETし、寿退社したいと息巻く美奈代を 支援する友人プロジェクトが急遽発足。 しかし、酔っ払ったプロジェクトの会議はまったく現実味を帯びないまま終了し、 そのまま当日を迎えることとなったのであった・・・ --------------------------------
「コンセプトはアレグリアで」 という、世界一どうでもいいことしか決まっていないまま ついに麻子の結婚パーティ当日が来てしまった。
麻子は当初ブーケトスをする予定はなかったらしい (自分のブーケは押し花にして記念にとっておくつもりだったため) が、美奈代の熱意に流され、トス用のブーケをわざわざ用意したのだという。
『麻子の好意に応えるためにも、なんとしても美奈代にブーケを!』
・・・と、「美奈代にブーケをGETさせるプロジェクト:通称アレグリアプロジェクト」の メンバー全員が思っていたはいたものの、 実際に美奈代がブーケをGETするにはどうしたらいいのかは なにも決まっていない。
お互いの衣装を褒め称えたり(これは結婚式に出席した女子の間では必ず必要な儀式)、 新郎新婦の上司による、スベリ倒すジョークが満載のスピーチを聞きながら 酒を飲んだりしているうちに、容赦なくパーティは進行していった。
そしてご歓談タイム。
新婦の麻子のところへみんなで行ってみると、麻子は自分のことはそっちのけで 「ブーケトス、どうすんの?美奈代、がんばって取ってね!」 などと美奈代のことを気遣う始末。なんていい人なのかしら・・・。
そこであらためてアレグリアプロジェクトのメンバーは会場の片隅で こそこそと密議を開始し、
「もう色々細工してる時間はないよ!どうすんのよぉ」 「こうなったら美奈代の頑張りに期待するしかないよね」 「うん、あたし頑張るよ〜!みんなありがとう(意味なく涙ぐむ美奈代)」
と、結局美奈代の頑張りをみんなで応援するしかない、という中庸な結論に行きついた のであった。
そして、ついにブーケトスの時間がやってきた。
ご丁寧にも、麻子はわざわざアレグリアのBGMを本当に用意していた。 パーティ会場にはおよそふさわしくない、「アレグリ〜ア〜」という 哀調を帯びた歌が流れる中、 緊張しまくって固まる美奈代の背中をプロジェクトのメンバーが 最前列へと押し出す。
ただならぬ空気を感じて引く人もいれば、 戦闘意欲をかきたてられるのか、じりじりと前進する人も。 ひとかたまりになった独身女性たちの闘いは 他の客からは見えにくいところで展開されていたのだが、 とにかく美奈代は群集の最前列をキープすることに成功したのである。
麻子は独身女性の群集を見渡すと後ろを向き、 「じゃあ、投げますよ!」 と言いながら、肩越しに美奈代を見、ニヤリと笑うと次の瞬間、 「せーの!」と叫ぶと後ろにブーケを投げ上げた。
麻子の投げたブーケはものすごく小さな弧を描いて飛び、 最前列の美奈代にも届かないほど手前に落下し・・・そうになった。
その瞬間である。
どちらかといえばおとなしく、普段の行動もおっとりのんびりの美奈代が ものすごいスタートダッシュを見せ、 猛然とブーケに向かって前進し、
プロジェクトの会合で「要注意人物」とされていた陽子も どこからともなく飛び出してブーケを取ろうとした。
そしてそのとき、
私ともう一人の友達がダッシュするふりをして陽子をガードし 地面にもう少しでブーケが落ちるというその寸前で 美奈代がブーケをキャッチしたのであった。 あんな俊敏な動きをする美奈代を私はうまれてはじめて見た。
私には数秒のことのように長く感じたが 実際には、麻子が投げてから美奈代がキャッチするまでは ほんの一瞬のできごとであったろう。
アレグリアが流れる中、我々は異常に盛り上がり 「よかったね美奈代!よくやった美奈代!」 と、バカみたいに大騒ぎ。 あきれる周囲をよそに盛り上がったあげく、美奈代も思わず泣く始末で めでたくブーケトスは終了したのであった・・・。
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後日。
「アレグリアプロジェクト」を無事成功させた我々は 麻子の新居を訪ねた。
すると麻子が
「面白いものがあるのよぉ〜」と言いだし 我々にあるビデオを見せた。
それは先日のブーケトスの一部始終を捉えた動画で、 あらためて見てみると、 明らかに麻子は美奈代とアイコンタクトを行ったうえで 美奈代のいる方向に向かってブーケをトスしており、八百長感が丸出しである。
それだけならまだしも、
私ともう一人の友人が陽子の飛び出しをガードするさまは どう見てもおかしい。あからさまに陽子の動きを止めに入っているようにしか見えない。
その一部始終を見ながら、麻子が
「あたしさぁ、これ見て『なんかに似てる・・・』ってずっと思ってたんだけどさ、 これってあの、どっかの神社の福男ナントカっていうのに似てるよね」
と、ぽつりと言った。
あぁ・・・ うん、たしかにこれはアレグリアでもなんでもないよね。 どう見ても「福男選び」だよ。 しかも、私たちが他の人をブロックしてるとこなんて、 問題になった去年のスタート風景とそっくりだよ・・・
不正を行ってまでゲットしたブーケが はたして美奈代に福をもたらすのか。 彼女は福女になれるのか。
その行方は神様だけが知っている。
がんばれ、美奈代。
(おしまい)
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