職業婦人通信
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昨年末、見合いをした。
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「また見合いかコイツは」って思った方もいるかもしれない (私は過去に何度か見合いしており、その顛末はその都度日記に書いてきたとおりである)。
が、私だって好きこのんで見合いしているわけではない。 私が高校生頃に思い描いた未来予想図によれば 私は26歳で結婚し、30歳の時点では とっくに二児の母となっていた予定であった。
しかし、私には出産はもちろん結婚の予定もなく、
◆さえないOL生活 ・・・というか、すでにOLって自称するのも 恥ずかしくなりつつある。負け犬まっしぐら
◆長年だらだらと付き合い続ける彼氏(つきあい歴5年) ・・・結婚だけを考えるなら、結婚する気のない 彼氏などいないほうがよっぽど良い(はず)
◆さらに浮気がはじまり、混迷する私生活 ・・・煙草と同じで、やめてもいいけどやめる理由もみつからない
◆仕事が増えた ・・・会社もさすがに8年目の社員を遊ばせておく 余裕がなくなったとみえる
こんな感じの、全てにおいて中途半端な31歳となってしまった。 これでいいのか。こんなはずじゃなかった。人生のご利用は計画的に。
そんな私を見かねたのが我が母であった。 「見合いはもうイヤだ」と言い張る娘を説得するため 父を利用する手段に出たのである。
ある日。
母は私に電話してくるなり
「お父さんがね、昨日の朝、 『千代子が嫁に行く夢を見て、嬉し泣きして目が覚めたんだが…違ったか…』 って、布団の上でしょんぼりしてたのよ。 アンタ、いい加減お父さんを安心させてあげたら?」
などと、間接的だが巧妙な手口で結婚を促し、
さらに翌週、用事があって千代子が実家に帰ってみると すでに見合いの話が勝手に進められていた。
そして母は 「アンタ、堅苦しいのはイヤなんでしょ? だからもう、お母さんや紹介してくれた人は一緒に行かないから。 2人で勝手に会ってうまいことやってらっしゃい」
などと好き放題を言い、
「堅苦しいのはイヤみたいだから、釣り書きももらってないし 渡してないわよ。写真はこれね」
と、男ばかり8名ほどが固まって写っているグループ写真を渡してきた。
「ちょっとー、これじゃ誰が見合い相手だかわかんないじゃないのよ!」
と、私も気乗りの低さをアピールしてみたのだが
母はぶっとい指である人物を指差し、
「この人だって。12月○日の12時に、この人と○○デパートの入口で 待ち合わせだから。お昼でも食べてきなさい」
と、命令口調で、 勝手に決められたお見合いのスケジュールを指示してきたのであった。
・・・母ちゃん、横暴にもほどがあるよ・・・。
母が指差した人物は ハリー・ポッターの主役の男の子をさらに20歳ほど老けさせたような 好人物風というか爽やかというか、 まぁなんというか育ちの良さそうな男性であった。
私は「首の太さは生活力に比例する」という わけのわからない信条により、 照英とか室伏とかが好きで ともかく首が太くてガッチリ剛健質実タイプを好みとしているのだが 今回の見合い相手はちょっとそれとはかけ離れた相手であった。
でもまぁ、優しそうだし育ちが良さそうだし。(←わりとやる気)
結婚以前に私生活の交通整理が必要な私ではあったが 結局、こうして見合いの場へと赴くのであった。
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人生初、わりと前向きな気持ちで挑んだ見合いは こうしてはじまる・・・はずだったのだが、
なんと、神は(というか母は)とんだ仕打ちを千代子に用意していたのである。
待ち合わせ場所に行ってみたら ハリー・ポッターの20年後はおらず、 違う男が私の写真を片手に近づいてきて
「はじめまして山田です」と自己紹介。
その男性はハリー・ポッターというよりはマイケル・ムーアに似ており 千代子を激しく仰天させたのであった。
母から聞いた見合い相手の名前はたしかに山田さんで、 聞いたとおり一致している。
それにしても、 なぜハリーがマイケルに・・・? なぜポッターがムーアに・・・? なぜ魔法使いが映画監督に・・・?
千代子の脳裏には物凄い勢いで疑問符が飛び交いまくっていた。 だってさ、魔法使いが映画監督になっちゃうのよ? ハリーポッターって魔法で変身するんだっけ? エクスペクト・パトローナム!(もはや錯乱気味)
思考力が凍結した千代子は結局、 マイケル・ムーアと昼食をし、愚にもつかぬ世間話やら 自己紹介やらを行い、お茶までして帰ってきたのだが
家に帰ってからもう一度、母から渡された写真を見てみると ハリー・ポッターの隣にマイケル・ムーアが写っているではないか。
母め・・・間違えたな・・・あの女・・・。
そう、母は指差す見合い相手を間違えるという大大大凡ミスを おかしてしまったのであった。ボケるにも程がある。
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マイケル・ムーアとの縁談話はその後お断りするに至ったのだが その顛末はもはやどうでもよく、
なによりも我が母のボケぶりに呆れ果てるとともに、 血のつながりさえも否定したくなった千代子であった・・・。
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