職業婦人通信
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2004年10月04日(月) アンチグローバル

私はまったく英語のできない女である。

受験生のときは、最後まで英語が足かせになった。
会社員になり、そして転職を考えたときも
TOEICの絶望的な点数の低さが決定的な足かせになった。

したがって、英語には恨みに近い感情を抱いており、

○海外旅行は好きだけど、英語はあまり使いたくない、というか使えない
○海外より国内のが圧倒的に落ちつく、というかニッポン大好き
○「英語ができなけりゃ人じゃない」という今の社会風潮には大反対
○世界で活躍してビッグになるよりも、日本で小さく生きていきたい

そういう人間である。

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そんな「英語アレルギー人」な私の仕事に最近、“IR”というものが加わった。
IRというのは、簡単に言うと
投資家の皆さんに自分の会社の色々な情報(財務状況だとか)を開示するというもので
あわよくば投資家に
「ウチはこんな会社でっせー、株買うてんかー」
とアピールしちゃうという仕事である(わーすげー大雑把な説明だなオイ)。

ところで今の世の中、外国人の投資家とか海外資本の機関投資家というのが
多くなっている。

したがって千代子のところには、ボブさん(仮称)とかチャンさん(仮称)とか
いろんな国のいろんな人が電話をかけてくることになったからさぁ大変。

ほとんどの人が日本語をしゃべってくれるのが不幸中の幸いであったが
時には英語でなにやら一方的にまくしたてられることも。うわーん!

IR担当になってはみたものの、上司もまったく英語がダメなため
2人は電話を押し付け合い、オロオロするしかないのであった。
担当不適格もいいとこである。

そんな毎日に消耗気味の千代子にさらなる災厄がふりかかったのは最近のこと。
我が部署で、会社案内パンフの英語版を作ることになってしまったのだ。

「おいおい、このオレに英訳やらせる気かよ?」(←心の声)

と、衝撃を受けた千代子だったが、
もちろん私にそんなことやらせるほど会社もバカではなく、
社外の専門会社さんにお願いしていい、ということになった。

そして、専門会社に原稿を作ってもらったはいいものの、
もちろん原稿見たって千代子がチェックなどできるわけもない。
社内で英語の堪能な社員に平身低頭して校正してもらい、
なんとか原稿は完成した・・・かに見えた。

が。

英語版の会社案内を作る、という情報を聞きつけたある役員が
原稿を見せろと迫ってきたのである。

この役員は、なんでも昔勤めていた別の会社で海外駐在経験があるとかで
英語のできる社員が稀有なわが社において
己の英語能力をチラつかせ、英語のできない社員をバカにするのを
至上の喜びとしている。

仕方なく原稿を渡したところ、
翌日、彼は鼻息荒くドスドスと床を踏み鳴らしながらやってきて
「ここで“リザルト”って単語使ってるけどさ、ボクはこれは不適切だと思うわけよ」
などとケチをつけはじめた。

(リザルトでもアダルトでもなんでもアンタの言うとおりにするから、
このアタシにいちいち説明しないでくれ・・・)

と、千代子は心から願ったのだが
相手は己の英語力をひけらかす機会を逃す気はないらしく、
(皆に聞こえるように大声で)執拗な指摘を続け、
その間、千代子は彼の前で
「ハァ・・・ハイ・・・」と生返事を果てしなく繰り返しながら凝固していた。

たぶん彼は聞き手である私に
「さすが!たしかにおっしゃる通り、ここの"result"は不適切ですね!」
とか言って感心してほしかったんだろうけど、
残念ながら私にそのような機能は備わっていない。

案の定、彼は反応の鈍い私に業を煮やしたらしく
「ダメだよこんな原稿書いてくる業者は!オレに会わせろ!直接指示してやる」
などと言い出し、ついには「役員VS専門会社さん 夢の対決」が
実現の運びとなってしまったのであった。

エラそうにふんぞりかえり、
「まぁウチの会社ではボクが一番英語はマシだと思ってるんですけどね」
などとマジで言い出す役員と

「もちろん、その会社の方が良いように校正していただいたほうがよろしいと思いますので・・・」
と低姿勢を貫く、専門会社担当者さんとの間に入った千代子は
両者の間でハラハラしながら見ていたが

途中で担当者さんが
「英語の原稿はネイティブ(スピーカー)に書かせてます」
と言ったところ、

役員が
「ネイティブって日本人でしょ?」

と聞き返したので千代子は腰が抜けた。
おいおい、この場合、ネイティブつったら普通は外国人だろうよ・・・。
アンタの英語力、ホントに大丈夫か??

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ま、こんな会社だからこそ
英語力が皆無の私でも仕事がなんとか勤まるわけで
ありがたいと思わなければなるまい。

これからも英語など使わずにすむ環境で
狭く小さく生きてゆきたいものである。


千代子 |MAIL
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