職業婦人通信
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寒い・・・。
私のフロアはとてつもなくクーラーの効きすぎで寒く、 ひざかけと足温器が手放せない毎日である。
だからというわけじゃないけどふと南極物語の思い出話である。
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私が生まれてはじめて映画館で観たのがこの「南極物語」。 当時私は小学生(3年生かそこらだったはず)で、 周囲の友達は幼稚園の頃から「東映まんが祭り」に連れてってもらったりと 映画館に行ったことがないなんて珍しいほうである。 遅咲きの映画館デビューであった。
それまでは 「ドラえもんの映画が見た〜い〜」と私がいくらゴネても 親は冷たく 「『春だ祭りだドラえもんスペシャル(テレビ番組。だいたい映画公開前にスペシャルをやる)』があるでしょ」 などと言い、映画館には連れてってもらえなかったため、私は 友達の「東映まんが祭り紙帽子」(東映まんが祭りに行くともらえる紙の帽子)を 横目で見ながら悔し涙を流す日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
父が突然「おい千代子、映画連れてってやろうか」と言い出したのである。 父は、“高倉健が出ている”というただそれだけの理由でこの映画を観たくなり ついでに私も連れて行こうと思っただけであった。
私は「なんだかよくわかんないけど映画館に行ける!」と、大張り切りで 父の後をついていったのだが・・・
ご存知のとおり、「南極物語」は言わずと知れた国民的大ヒット映画であるが、同時に 犬がじゃんじゃん死んでしまう所を映像でリアルに見せる(といっても映画だけど)という禁じ手で 動物好きの涙腺にダイレクトに訴えかける映画でもある。
寒ければ寒いほど、氷点下の気温になるほどにその演技力を いかんなく発揮する男、高倉健が 泣く泣く犬を置き去りにし、 そして残された犬はそれぞれの過酷な運命によって死んでいくわけである。
はじめて見た映画館のスクリーンのド迫力 (といっても今思えば田舎のチンケな映画館ではあったが)、 サウンドの美しさ、 そしてなんといってもかわいいワンちゃんたちが次々に死んでしまうという ショッキングなシチュエーションに、 幼い千代子は泣くのを通り越し、腰を抜かしていた。
が、映画の中盤あたりに入った頃、隣で歯軋りのような異音がする。 見れば、 ウチの父が歯を食いしばって男泣き。
初めて見た父の泣きじゃくる姿にますます千代子は腰を抜かしたが、 あまりにも父がオイオイ泣くのでだんだん恥ずかしくなってきた。
高倉健とタロジロが再開する頃には父の号泣は最高潮に達し、 「おうっうっおうぅっ・・・ぐげ」 と、オットセイみたいな嗚咽に加えてシャックリまで漏らしはじめたので (ホラ、子供とか泣きすぎると シャックリ止まらなくなったりするじゃないですか、あんな感じ) 千代子は恥ずかしさにスクリーンに集中できぬまま 初めての映画鑑賞は終了した。
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しかし初めての映画鑑賞はただではすまされず、 感動さめやらぬままに帰宅した父は娘に向かって 「今の映画の感想を作文にして書いてみろ」 などと教師のようなことを言い出したのだ。
読書感想文などの感想文の類は子供のころから超苦手だった私は 困り果てたあげく、セイカノートに箇条書きで
○犬がたくさんしんでしまってかわいそうだった ○わたしも犬を飼ったらだいじにしたい ○タロとジロが生きていてよかった ○さつえいのために、本当に犬をころしてしまったのですか?
と書いて父に提出し(最後のなんて感想ですらなくて疑問だしね)、 頭の悪い娘の感想文は父をいたくがっかりさせることとなった・・・。
けどさぁ、あの映画の感想文って難しいよね?(と、誰ともなしに同意を求める) 大人になった今でもあれについての感想文はたぶん書けないと思うのだが・・・。
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