妄言読書日記
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2003年10月06日(月) 『卍』(小)

【谷崎潤一郎 新潮社文庫】

この話の題材は女性の同性愛なのですが、ほもばっかり読んでいる身としては、大した違和感も無く。
こうやって異常性(失礼を承知で)に慣れていくと、同性愛に対するタブー感も薄れ、さほど魅力的な題材じゃなくなるんじゃないかしら、と思う今日この頃。
だいたい、昨今のボーイズラブとやらは(お前はいくつだ)、タブー感ゼロですからなぁ。男同士じゃなくてもいいじゃないか、みたいな内容。
まあ、そんなのと谷崎を並べて話したら怒られるのでこの辺でやめておきまして・・・

悪女と言うと、谷崎には『痴人の愛』のナオミがいますが、この話の光子も相当なものです。
谷崎の小説に出てくる、こういった妖婦はどこまで本当のことを言っていて、どこまで嘘なのか、結局最後までわからない。
おそらく言っている本人にもわかっていないような演技をする。
情の深さが魅力と言う女性はさっぱり出てこないです。
奔放さと自己愛と美しさと嗜虐性。女の目から見るとなんだかなぁ、な女性が谷崎はお好きなようで。
しかし、谷崎の小説を読んでいると、本当に女好きなんだな、と思います。
好色と言う意味ではなく、崇拝に近い。

そういえば、今回足フェチな描写は見られず。園子の語りだからでしょうか。

谷崎の小説は推理小説めいた構成がまた好きです。
今回も、最初の方で夫と光子が故人であることが明かされます。
どうしてこの二人が死んで、園子が生きているのか。
私は夫と光子が実は出来ていて、二人で心中したのかと思ったのですが、半分当たり、ですね。
それにしても当時はこんなことが事件として新聞に載るんですか。今なら週刊誌ネタくらいでしょう。

最後の方の、園子、光子、夫の関係が怖くていいです。
凄い展開だぁ。
ところで綿貫は結局どうなったんでしょ。
谷崎の小説に出てくる男は本当にどいつもこいつも、駄目男です。愛せません。

『細雪』をもう一度真面目に読もうかな、と思い始めました。
授業用のテキストだったんですけど、流し読みでちゃんと読まなかったんですよ。



蒼子 |MAILHomePage

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