妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2003年05月14日(水) |
『秘本三国志3』(小) |
【陳舜臣 文春文庫】
出てこないなーと思ったら、今回は1ページ目から劉備がいます。 おお、ようやくようやくですか。 なにやら画策している劉備。 策士がいなくて参ったなーと思っているのに、なんとなく淡々としている劉備。 陳の劉備は野心のあるハムテル(動物のお医者さん)という感じです。 ちょっと想像できませんか。そうですね。でもこんな感じなんですよー。
策を巡らせているわりには、吉川や北方のように腹黒い感じがしないのは、やはり淡々としているからなのでしょうか。 関羽と劉備、二人がかりで張飛に現状を教えている様がおかしいです。 どうしようもない劣等生ですよ。張飛が。
いつの間にか劉備のもとにいた、趙雲。 細かいエピソードはがんがん飛ばされていく陳三国志。 ただ、流れは一番分かりやすい。 で、その趙雲がなんと、あの曹操の父を襲っちゃった、と。 思い切ったストーリーを作ったものです。 悪名をとどろかす、曹操の大虐殺の原因を趙雲、ひいては劉備の画策にしちゃったと。びっくりですね。
なんだか、陳三国志はねらっているのかいないのかよくわからないのですが、ユーモアがあります。 素のような気もするんですが、妙におかしみがあって楽しい。 曹操が呂布と対峙している時に、秋晴れの空を見上げて、 「この美しい空の下で、人間が相争うているわ。殺しあっておるわ。・・・・・わしもその仲間じゃが・・・・・」 ひとりごとで、自分につっこんじゃっている曹操様。なんだか可愛い。
孔明先生が名前だけ出てきました。 名前だけでもずいぶんと早い登場です。普通、徐庶が名前を出すまでさっぱり影も形も出てこないんですが。
関羽が貂蝉にすっかり恋わずらいしてしまっています。 陳の関さんはいつもの頼りになるなー雲長は、という感じはあまりしない朴訥とした感じです。 だから、劉備も困っているんですが。 貂蝉を奪いに行こうと、黒い覆面を被っていったのですが、その体格でみんなにあからさまにバレてしまった関さん・・・。 多分、体格じゃなくて、髭が見えていたんじゃないか、という気がしますが。 しかも失敗しちゃったし。 その上、劉備に「貂蝉は奪えなかったのか?」と思いきりばれて、からかわれているあたりがなんとも珍しい関さんです。
宛城で息子を亡くして、奥方の怒りを買ってしまった曹操。 どうしたものかと、少容に相談するなんて、なんとも微笑ましいです。 たいてい、実家に返して終わりなのに。しかも、 「なんだ、毎日、奥のご機嫌をとり結ぶのか?そんなことはできん。天下のことでくたくたになったうえに、また女房のご機嫌とりなど、わしのからだがもたぬわ。もう四十二だぞ」 愚痴っちゃってます。 おっかしー。 こんな曹操、初めて見た!
陳の人物設定が非常におもしろいです。
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