妄言読書日記
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2003年03月13日(木) 『三国志3 玄戈の星』(小)

【北方謙三 ハルキ文庫】

北方曹操様は、可憐、だな。
負けるときは当然、勝っても尚いつでも敗北感を抱えている感じ。
常に自分が何かに劣っていることを考えている、風に思える。
宦官の家の出である劣等感やら、今回は息子を死なせた罪悪感も引き摺り、そして呂布に対する敗北感と恐怖心も結局最後まで拭えなかった。
支えてあげなければ〜という雰囲気。
だから、夏侯惇の設定が、こんなに温厚になっているのだろうか。
惇兄にだけは、なんでも打ち明けられるらしい曹操様。

惇兄の目玉シーン。
自分の目玉を食べそうもないなーと思っていたら、噂話として片付けられていた。
そうきたか。
温厚な夏侯惇には、あまり似合わない話である。
と、まで書いてあるし。
あくまで、北方惇兄はその路線でいくらしい。それもまた、素敵だ。

そして、呂布。
呂布が死ぬシーンそのものよりも、赤兔に最後に話し掛けるシーンが泣けますね。
最後に赤兔が呂布の死を感じ取って、海に駆け出すシーンも。
そこで、北方三国志は完結してもいいやーくらいに思いました。

だが悲しいかな、呂布が赤兔に「お前も疲れたのか」と話し掛けているところで、うっかりと、
「僕もつかれたよ、パトラッシュ・・・・・」
を、思い出してしまいました・・・。
こんな、泣き所で何を思い出しているのやら。

呂布は戦場で死ぬのが一番ふさわしいな、と思います。
呂布は間違いなく、ここまでの主役でしたよ。赤兔も。

劉備が、曹操の元に逃げた時、
「いつか、この手で、曹操を殺す」
と、堪えきれずに言った劉備が好きでした。
北方劉備は、こういう風に激情を発している時が魅力的。
この劉備が、孔明とどういう関係を結ぶのかがとても気になってまいりました。
寝食は共にしなさそうだ。
三顧の礼で、泣き落としを使いそうも無いし。

宛城が、意外とあっさりでした。
典韋もあっさり。
え、と思うくらいに。
あっさりと言えば、張遼が呂布軍から曹操軍に移るシーンもなく。どうなったの?

五斗米道の張衛とやらが、妙に書かれています。
北方はかなりの、オリジナルキャラを出していますが、それが良いとも悪いとも感じませんね。
ただ、ストーリーはずっと円滑に進むようになっていると思います。
成玄固がいい感じ。

孫策と周瑜の、二喬誘拐が素敵です。
呂布が死んだ後なので、頬が緩むと同時に、この二人も短命なんだという思いがひしひしとして、余計に切なかったりもします。
この二人には、天下に向かってずっと駆けていて欲しかったなあ、といつでも思います。
呉は、堅パパの時代からこの二人の時代が好きです。

次はいよいよ、官渡ですか。
曹操様が己の手で劣等感を断ち切ることになるのでしょうか。



蒼子 |MAILHomePage

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