妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2003年03月12日(水) |
『三国志2 参旗の星』(小) |
【北方謙三 ハルキ文庫】
北方三国志で一番素敵なのは、赤兔かもしれない。 みんな、それぞれにかっこよいのですが、かっこよいが故に印象が薄い。 それが、北方三国志の人々。 理性的、論理的に物事が進んでいき、よく三国志の出来事を考え抜いたんだなぁとは思うのだけれど、熱くない。 現代的、ではある。
わざと、徐州をくれてやる劉備、とか。 なるほどなーと思う。 趙雲が再会したときに、劉備は狡いと面と向かって言い放つのですが、そのシーンが好きですね。 意外と誰もいわなかった言葉です。 劉備がずるいかどうか、それはもう書き手の解釈と書き方次第ですが、北方は明らかに劉備はずるい人間であるという解釈で書かれているな、と感じます。
でも私は、泥臭くて、感情的で、現代人の感覚ではよくわからない理由で動くこともある、三国志の人々がけっこう好きなので、北方の現代的な解釈は物足りない時もあります。 あと、そうそう。 「夾」というものの概念が、抜け落ちている。 日本人には分りにくい、仁義とよく似た、中国人独特のもの、らしいんですが、北方はへたすると仁義すらない。 忠はあるみたいですが。 そういうとこが、ハードボイルドねーと思うんです。
それが悪いんじゃないですよ。 北方氏は「三国志は時代とともに書き換えられていくものだ」と言っていたから、そういう面では氏の試みは成功していると思います。
中身中身、と。
曹操様をいさめる惇兄。 「夏侯惇、俺の言うことに従えないのか」 「従えません」 蒼天ではまずあり得ない、二人の会話にときめきを覚えます。 北方曹操は、かなり惇兄を信頼しているみたいで嬉しいですね。嬉しいというのも変な話なんですが。 惇兄を餌に、帝を許都におびきよせよう作戦が、面白い。凄いなあ、惇兄。 「かしこまりました」とか鹿爪らしく言っちゃう、惇兄にいまだに違和感ですが。 蒼天惇兄なら、舌噛みそうです。
曹操様はどこの曹操でも素敵だなーと、やはり思ってしまいます。 ただ、もう少し熱くてもいいんじゃないかなーと・・・。 人材収集マニアっぽくないし。必要だから、集める、という感じ。 この曹操様、関羽に惚れこみそうも無いんですもの。 呂布に負ける様は素敵(何でだ) 曹操様は勝っている時よりも、負けている時が好き。不屈さを感じるし、何より色気がある。
宗教とは、と考える曹操に説得力がある。 おそらく、劉備も孫家の人々も宗教についてまでは考えないだろうと思う。 そういう曹操だから、青州兵を引き込むという発想に至れるんだろうな。 曹操様はやはりかっこいいよなあ。
策と周瑜がいいですねー。 この二人が一緒にいるのが好きなだけに、二人とも短命なのが悲しくて悲しくて・・・。 太史慈との一騎打ち、もう少し書いて欲しいな。吉川のときも言っていたけれど。
赤兔馬と海岸を走る呂布。 青春してるなあ、呂布! 北方呂布はかっこいいのだけれど、どうしても「馬が友だち」というイメージになってしまう。
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