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2010年03月08日(月) ■ |
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叩く |
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おまえがあんまり泣くものだから 隣りの犬も哭き始めたぞ からだごと裂けてしまいそうな 声にはとうとう堪えきれなくて
おまえは周りの物や人をすぐに叩く、容赦しない 生まれてきてから まだ間もないおまえを 息も継がせず取り囲んだもの そのあまりの理不尽さに腹が立ち やり切れないんだろう 叩く手のほうが砕けてしまいそうなほど 殴りつけてしまう
おまえに向かい立って、私は脆く 両足を崩れ落としそうになりながら 辛うじて親というものであろうとしている 理不尽だろうが力づくでも せめて人間のままシアワセに 少しでも やっていけるよう、この世界にいられるように おまえの真っ直ぐ過ぎる魂を 折り曲げ くねらせては 捻じり形づけてやらねばならない あれが欲しい、こいつを奪うな おまえはいつだってただしいんだから それが苦しい
おまえのあんまりひどい泣き声に となりの隣り、次第に遠くの犬たちまでが 遠吠えをはじめてしまったぞ その遠吠えを聞きつけて世界中の 狼たちが呻きだしているぞ、牙を剥いたぞ 他の音はなにもかも止んでしまったんだ 夜が破れてしまいそうだ
くしゃくしゃにひんまがった顔と ぽろぽろこぼれ落ちてくる涙で さあご覧よ、これが世界のお終いの姿だと 腕を振り回して宣言しているかのよう そう、もしもおまえが ただしくない世界であるなら けれどもそうなったって、いいじゃないか
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