8/11(金) 嫌われるオレ・その3。
彼女の母ちゃんちでは犬を飼ってるんだけど、
先々週の土曜だったか、母ちゃんが夜まで留守にするからと、
彼女が犬の散歩を頼まれてましてね。
で、暇だったオレは散歩に付き合った次第で。
散歩も終わって母ちゃん宅に戻ってきて、
汗をぬぐいながらテレビを見てるとピンときた。

一ヶ月ほど前のことだったか、彼女の持ってたDVDレコーダーを
母ちゃんが欲しいってんで安価で譲ってあげたことがあったのね。
が、彼女が接続してあげたところ、テレビにBSが映らないと。
録画は出来るんだけど、テレビで直接見ることが出来ない。
要は、BSアンテナからDVDレコーダーまでの配線は出来てるものの、
そこからテレビに電波が来てないってわけ。
わざわざ接続してあげたにもかかわらず、
そこでまた「映らなきゃ困る」と過剰な文句を言われ、
気分を害したって彼女が言ってたことを思い出したのな。

これだ!とテレビの背面を見ると、単純に配線が繋がってないだけで、
余ってたアンテナケーブルを繋げると難なくテレビでBSが映ったのな。
ま、全然大したことはしてないんだけど、これでポイントアップ間違いなしでしょ。
「あらー、やっぱり男の人はこういうとき頼りになるわね」なんて。

で、その次の日。
うちで彼女とテレビを見てたら、彼女の携帯に母ちゃんから電話があったのな。
その週、夏祭りに行くからと、彼女と友達が母ちゃんに浴衣の着付けを頼んでたのよ。
てっきりそのことかと携帯に出ると、母ちゃんは驚いた様子で、
「テレビでBSが見れるようになってるんだけど・・・何かした?」と。
よし食いついた!とばかりに彼女はオレのイメージアップ作戦よ。
「それは昨日セザキくんが直してくれたんだよ!」
が、オレの名前が挙がった途端、母ちゃんは言い放ったね。
「・・・なんでそんな勝手なことするの?」
え? 怒ってる? あんたが望んでたことを良かれと思ってやったのになんで?
「テレビを付けたらいきなりBSが映ったからびっくりしたでしょ!」
びっくりした !? だから怒ってる !? うれしいサプライズもダメなの !?
・・・もうね、怒る理由が無茶苦茶なんだ、この人。
だからって、昨日オレが家に上がったことを知って、
BSを直してなかったらさ、それはそれで怒ってたはずなのよ、
「せっかく来たんなら直して行ってくれるのが普通でしょ!」なんて。
とりあえずオレの名前を聞いて不愉快になったもんだから、
難癖つけたくてしょうがないだけなのな。思考回路が子供と一緒で。
よくこんな人間性で「親」を務めてるよなあ。
親以前に人間失格だけどね、オレから見りゃ。

そんな理不尽な文句を散々聞かされ、うなだれる彼女に追撃。
「あと、浴衣の着付けの件だけど、もう無理だから。
だってあんた、今セザキさんちにいるんでしょ?
だったら今日、着付けの練習が出来ないでしょ」
着付けに練習が必要だなんて、今まで一言も言ってなかったわけ。
要は、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの論理でさ、
オレと一緒にいる彼女まで憎く感じて、
彼女に対する嫌がらせとしてこう言ってるわけ。
子供に対して嫌がらせって・・・信じられる? 大人のすることじゃないでしょ?
母ちゃんが着付けをしてくれるって言うからさ、
彼女の友達はそれを信じて、もう浴衣を新調してるわけよ。
だから友達にも迷惑をかけることになるんだけど、
母ちゃんがあまりにしつこく小言を言うから、
彼女も「だったらもういい!自分たちでどうにかする」ってキレたのな。
じゃあ今度は「それって私が悪者みたいに思われるじゃない」などと言い出す始末。
いや、どう贔屓目に見てもあんたが悪者でしょうよ。
「悪いのは私じゃなくて、今この時間に家にいないあんただ」と。
この勝手極まる言い分に、とうとう彼女も堪忍袋の緒が切れた。
もう悔しいやら腹立たしいやら情けないやら馬鹿らしいやらで、
涙をこみ上がらせながらに母ちゃんを罵倒したわけ。
「何よ、勝手なことばかり言って!
BSを修理してもらってさ、まずは『ありがとう』じゃないの !?
着付けのこともそう、練習なんて一言も言ってなかったでしょ!」
もちろん電話の向こうからは母ちゃんの反論。その反論の根拠はどこに・・・。
ただ、そこから感極まって彼女の言った言葉がマズかった。
「そもそもセザキくんのこともそうよ! 端から嫌い嫌いってさ!
セザキくんもお母さんになんかもう会いたくないって言ってるわよ!」
いや、そこでオレの名前を出すのはちょっと・・・。
その後、電話の向こうのお母さんが一言。
「セザキさんに替わってちょうだい」

もう一回つづく。


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written by オレ 

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