冒険記録日誌
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2013年11月29日(金) |
超時間の檻(山本弘/創土社) |
クトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズからのゲームブック紹介もとりあえずこれで最後。とりは「超時間の闇」に収録されている「超時間の檻」です。 まさか二十数年もたって山本弘の新作ゲームブックが拝めるとは、いやはや世の中わからないものですな。 このレーベルのゲームブックとしては珍しく、本書には「超時間の檻」の進行状況を記録するアドベンチャーシートもしくは冒険記録紙にあたるペーパーが栞のようにはさまれています。もっともこの作品は、能力値の管理もなく、所持品もわずか、ゲーム進行で覚えるべき情報も少ない為、簡単に暗記だけで遊ぶことが出来ます。そのためペーパーの実用性はあまりないのですが、ゲームブックを遊んでいるという、テンションをあげる効果が私にはありました。 総パラグラフ数が200というのも、ウォーロック掲載のミニゲームブックを連想させ、もうつかみはバッチリです。
そして今回の私がプレイを楽しみにしていたのは、山本弘さんのブログでタイムループものに挑戦してみたと書いてあったことです。 タイムループものというのは、主人公が同じ時間帯を何時も繰り返して体験するタイプのSFで、古典SFからライトノベルまでいろんな小説やドラマがこのアイデアを使っています。少し前では「涼宮ハルヒの憂鬱」にあるエンドレスエイドのエピソードでも使われていました。TVゲームだと「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」もそうですね。 実はゲームブックは、その構造的にタイムループものと相性がいいと昔から思っていたのですが、ゲームブックというものはSFよりファンタジー作品が多いためか、タイムループをテーマにしたゲームブックはありそうでないです。思いつくところでは鳥井加南子さんの「悪夢のマンダラ郷」なんかは、死んでも阿弥陀様によって時を戻されて最初からスタートさせられるので、ある意味タイムループものと言えるかな。
さて、作品の話しに戻ると、夜中の山道で猛然と車を走らせているシーンから唐突にゲームはスタートしています。車は木立に衝突してしまい、山中に取り残され、しかも主人公は記憶喪失という、わけのわからない事態です。 目的地として向かっていたであろう、山道の先にかすかに見える屋敷に向かうか、ふもとの町に引き返すかと、最初から悩ましい選択肢が出てくるのが序盤。 しばらくゲームが進むと(ゲーム内時間で一定時間が経過すると)主人公の意識が暗転して、気がつくと猛然と車を走らせている最初のパラグラフに強制的に戻されているという展開が繰り返されます。 基本的にバッドエンドはなく、死にかけて普通ならゲームオーバーになるような展開でも、何事もなく最初に戻るのです。繰り返して、いろんな選択肢を試しながら、自分の記憶や目的、そしてこの無限ループから脱出できる方法を探し出すのが目的となります。 同じ時間を繰り返す焦燥感が主人公だけでなく、読者もダイレクトに味わえるのはゲームブックならではの面白さ。ただ、あまりに脱出のルートが発見できないと、延々と同じ展開を繰り返すことによってゲームがだれるので、ほどほどに迷う程度でクリアしたいところです。 私の場合クリアまでに20回以上のループをしてしまいました。一巡するのが短いせいもあるのですが、我ながら勘が鈍すぎですね。
それからこの作品は、主人公を男女のどちらかから選ぶことになります。男女によって、攻略できるルートが違うので一度クリアしても、主人公を変えてまた挑戦できるので2倍楽しめる……と言いたいですが、大まかな展開は同じであり、すでに散々ループしてクリアした後だと、違う主人公でまたループを延々と繰り返すのは、もはや苦痛な気が。これは、さくっとクリアできなかった私が悪いのでしょうか?(笑) 私は男主人公から遊びましたが、男性バージョンはタイムループのうえにさらに捻った設定がついているので、最初はシンプルな女主人公から遊ぶ方がオススメです。男性バージョンのみバッドエンドが一つ存在している分、少しだけ難易度が高いですしね。
読んでいると、新紀元社のゲームブック「スペイン屋敷の恐怖」(2013年06月15日の冒険記録日誌参照)を連想していました。主人公達の性格が似ているので、同一人物だろうかと、お互いの主人公の名前を確認したくらいです。高次の存在に人間が小馬鹿にされるくだりも似ているし。 さすがに主人公は同一人物ではなかったのですが、スペイン屋敷の恐怖も元は「ラプラスの魔」というやはり山本弘さんの小説からの派生作品らしいので、似ていて当然なのかもしれません。 いずれにせよ、ゲームとして楽しいゲームブックを楽しめた作品でした。次にタイムループもののゲームブックがどこかででるとしたら、今回の倍くらいのパラグラフ数で、もっと豊富な展開をガッツリ楽しませてくれるようなのがいいな。
2013年11月28日(木) |
ウィップアーウィルの啼き声(くしまちみなと/創土社) |
引き続きクトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズから紹介。 「ウィップアーウィルの啼き声」は、「ダンウィチの末裔」の中に収録されているゲームブックです。 ルールの特にない純粋な分岐小説タイプで、ストーリー性を重視した内容だからなのか、1パラグラフ毎の文章は長く、したがってパラグラフ数は少なく75しかありません。 シンプルすぎて物足りなさもあるものの、このシリーズは私とは逆に、ゲームブックに興味のないクトゥルーファンが買うことだって多いわけで、そういった方にはこのくらいの方が読みやすくていいのかも。
あらすじは、アメリカの小さなTV番組製作会社で働いている主人公とその同僚らが、日本のTV番組製作会社から依頼を受けて、日本人タレントと一緒に1950年代に廃村となった村の跡地を取材に行くというもの。 1920年代に怪奇現象が起こり始め、行政が気づいたときには廃村となっていたとの事で、森林に浸食され今では地図に名前も載っていないそう。 王道のホラーといいますか、謎めいていていいです。日本のTV番組製作というと、懐かしの川口浩探検隊を一瞬連想したのですが、それじゃホラーにならないので必死で封印しました。 物語序盤は、分岐のないパラグラフジャンプが多く続き、実質的なゲームブックパートは問題の廃村にたどり着いてからです。廃村に入ってからは疑わしい人物や怪異が次々に出てきて、パラグラフ数の少なさゆえなのか、あっというまに最後まで進んでしまいます。 ホラーもののゲームブックにしては難易度は低く、ハッピーエンドには苦労せずにたどり着けたので、ボリューム的にも一巡遊んだだけではあっさりした印象です。 もちろんホラーですから、グロテスクなバッドエンドも一つのエピソードとして、全ての展開を読みつくして味わいつくすくらいの気持ちで全部読みましたが、私はもっと静かに忍び寄るようなホラーが好きなので、むしろプロローグ部分にあたる村にたどり着くまでの不安だけを感じさせる序盤のシーンの方が好きだったかなぁ。
2013年11月27日(水) |
バーナム二世事件(フーゴ・ハル/創土社) |
前回も書いたことですが、最近、創土社が次々に出しているクトゥルー神話のオマージュ・アンソロジー・シリーズというものがあります。 3人の作家による3作品が収録されているのですが、このシリーズにゲームブックが収録されていることがあると知り、「ホームズ鬼譚〜異次元の色彩」「ダンウィチの末裔」「超時間の闇」を購入しました。 収録されているゲームブックは、雑誌ウォーロックに収録されていたゲームブックくらいのボリュームがあります。 当然ながらクトゥルー神話のファン向けの本であるうえ、本の定価が高めなので、ゲームブック目的だけで購入しようという人には、コストパフォーマンスが悪すぎるので、残念ながらあまりお勧めできません。 といいつつ、山本弘さんやフーゴ・ハルのゲームブックとなれば、それでも買ってしまう私がいるわけですが。
さて、3つのゲームブックのうち、最初に遊んだのが「バーナム二世事件」で、これは「ホームズ鬼譚〜異次元の色彩〜」に収録されている一作。 なぜこの作品から遊んだかというと、本書はクトゥルー神話とシャーロックホームズと掛け合わせた作品ばかりで、クトゥルー神話が苦手な私でもシャーロックホームズのパスティーシュ作品として楽しむことができたからです。 非科学を信じないはずのホームズにクトゥルーの世界観が合うのかという疑問も感じましたが、考えると原典にも「這う男」なんて奇妙な話しがあったので、案外ありなのかも?
ゲーム内容の話しをしましょう。目的はバーナム二世という人物が殺されたので、その犯人を探すというものです。主人公、つまり読者はワトスンの立場でプレイします。 ホームズは別行動で捜査をしているようで、プロローグとエピローグ以外にほとんど登場しないのが残念なところ。しかし、ホームズものっぽい雰囲気とクトゥルーものの重苦しい雰囲気がうまく融合していて、パスティーシュ作品としては悪くありません。 一方でこの作品をゲームブックとして見ると、システムが独特です。まず選択肢が存在しません。 バーナムの屋敷の見取り図を見て、部屋に書いてある番号のパラグラフに飛べば、その部屋の捜索をワトスン達がする。終われば見取り図に戻るの繰り返しが基本です。 さらに関係者の証言で判明する登場人物や地名や団体名などにも、文章に「小包はアーカム(68)から送られたものだ」という風に番号が振られているので、気になるならその番号のパラグラフに行けば、その人物に聞き込みに行ったり、その土地の噂を調査したことになって新たな情報が入ってきます。おおまかなストーリーの流れは、途中で脅迫を受けるなど一部のシーンを除いて存在しません。 つまり、バラバラに各パラグラフに情報がちりばめられているキーワードを、聞き込みや現場調査などで芋づる式に発見して情報を整理し、読者自身で推理する必要があるわけです。 そして真相を発見したと確信すれば、<解決編>のページに移動してホームズの出した正解と答え合わせをするというわけです。
フーゴ・ハルさんは、二見書房より出していた「シャーロック・ホームズ 10の怪事件」などのシリーズも手掛けているので、それらを遊んだことのある人なら、それに近いゲーム性と感じるかもしれません。 私はどちらかというと、パズル雑誌クロスワードランドに、以前は3ヶ月に1回のペースで掲載されていた「シャーロック・ゲームズの冒険」(奥谷道草作、つまりフーゴ・ハルのことです)を思い出しました。
事件は不気味な雰囲気を醸し出しているものの、犯罪そのものは真っ当な自然現象で説明可能なものなので、ちゃんとミステリーゲームブックとして成立しています。登場人物達にも一癖あり、それが関連しあっていることもあるので、事件に関係ないひっかけの捜査の箇所でも、つい読み込んでしまいました。 ラストはやはりクトゥルー神話ものだったなと思わせる、なんともいえない劇的な終わり方です。 あと、想像はついていたのですが、フーゴハルさんのイラストは、クトゥルーものにとてもよく合うことがわかりました。挿絵が本当にぴったりですよ。
最後に私のプレイ状況の報告です。 本来この手の推理物は不得手なのですが、細かい犯行の実行手段はよくわからなかったものの、基本となる殺人のトリック部分だけは見事当たっていました! 実は馬車のくだりを読んでいるうちに、10年前くらいのゲームズの冒険(2003年02月28日の冒険記録日誌参照)で、これに近いトリックがあったのを思い出したからなんですがね。(汗)
2013年11月20日(水) |
クトゥルーものゲームブックをクリア |
吐き気やら下痢やらで、家族3人が仲良くダウン中。 今は自分が一番ましな状態らしいのですが、私もここ4日間は最低2時間に一度はトイレに行ってるような状態。通勤中の腹具合が恐怖であります。
そんなわけで寝込んでいたときにできた時間を活用し、創土社のクトゥルーものシリーズ「ホームズ鬼譚〜異次元の色彩」「ダンウィチの末裔」「超時間の闇」に収録されているゲームブック作品を全てクリアしました。 当初、クトゥルー神話の知識を私がまったく持っていない(※)ので、意味がわかる内容なのか不安でしたが、基本的にゲームブックとしてのプレイに支障はなく楽しく遊べました。 ゲームブックの感想は次回にでも書きますが、ヘタに世界観に触れた感想を書くと、クトゥルーファンから何も知らない人がなにか言ってるとか思われそうな気もしなくもなく。 なにやら私がガンダム系のゲームブックを避けている理由に通じるものを感じますな。
それから前回の日記で、樋口明雄先生の新作ゲームブックか!?と一人悶えていた私ですが、樋口明雄パートは小説ですよと、日記を見た方から情報提供をいただきました。 前の日記を書いた後の、ネットの情報収集で、どうやら小説っぽいとはすでに気づいていたのですが、最近、日記の反響がいまいちつかめず、そもそも今でもこの日記を見ている人がいるのだろうかと思うところもあったので、ご指摘いただき別の意味で嬉しゅうございました。(笑)
せっかくだからと、今回小説パートの方の作品もいくつか読んだのですが、やはりクトゥルーものは私には合わないようで、樋口明雄先生のゲームブックが見れないなら「インスマスの血脈」の購入は残念ながら見送りです。
※ 唯一シュゴスは小説を読んだので知ってますよ。酷いご主人様にいじめられて寂しく南極に眠っていた女の子です。分裂したメイド姿のテケリさん可愛いですよね。3巻発売はまだかなぁ。 えっ、狂気の山脈にて?なにそれ?
2013年11月11日(月) |
山本弘に続いてまさかあの方が? |
「超時間の闇」を入手しました。山本弘さんのゲームブックパートはパラグラフ200で、これまたウォーロックを思い出させるボリュームです。 まだ遊んでいませんが、最初に選択した主人公の性別によって一部展開が異なるようです。一度クリアしても別の性でもう一度楽しめるのはなかなか良さげですよ。
しかし、気になったのが本書巻末にある近刊予告です。 「インスマスの血脈」というタイトルですが、これも同シリーズで3人の作家のオムニバス集のようです。 黒史郎それから夢枕獏×寺田克也というのはわかるとして、
樋口明雄!?
ドラゴンクエストなど双葉ゲームブックを数々書いてきた方ではないですか。このシリーズの傾向からして、3つの内の一つがゲームブックとしたら、樋口明雄の新作ゲームブックが拝めるということなのか? 今はハードな小説を書いているようですし、クトゥルフ神話がテーマだけに、ゲームブックだとしても昔のようなナンセンスギャグのテンションではない気はしますが、いや、黒史郎さんが他で「未完少女ラヴクラフト」なんて書いているくらいだから、本書は全体的にライトノベルっぽくなっていて、当時の樋口節がまた読めるのかも、いや読みたいのだよ、ああ、混乱してしまう。 いずれにせよ双葉ファンの私には感涙ものです。期待して登場を待ちましょう。 ずるいなぁ、ゲームブックは全体の3分の1なのにまた金を使ってしまう。創土社の応援も兼ねて買いますけどさ。 ただクトゥルフもの自体が私はあまり好きではないので、そのうち他のテーマでもやってほしいところ。ケルト神話で林友彦さんとか、都市伝説ホラーで鳥井加南子さんが出たりして。 昔のゲームブック作家ばかりじゃなくて、同人誌っぽくなりそうな懸念はあるけど、コンテスト形式でゲームブックオムニバス集なんて企画でもいいよ。
落ち着くためにもう一つの話題。 B級グルメブームで有名になった青森のせんべい汁用のせんべいを大量買いしました。せんべい汁セットじゃなく、せんべいだけです。 昔、仕事で青森に出張して、食べさせてもらった時のせんべい汁は感動的な旨さだったのですが、自分で作ると普通かな。今回は即席で作ったせいもあるので、今度本格的な鍋で試してみよう。 でも、普通にせんべいだけでも食えるし、トースターで軽く焼いて食っても美味しいことを発見。要するにかき餅と同じなんだね。 ネットで調べるとワカメスープに入れる食い方もありらしいし、いろいろ試しながら一冬中には食いつくせそうです。悪くない買い物だったと満足しています。 ゲームブックと無関係なくてスマンこってす。
2013年11月10日(日) |
不自由な話しとドンキーコマンド |
前回の日記の続きのようなものだけど、山本弘さんのその後のブログで、出版されるゲームブック「超時間の闇」について、創土社の編集部と悶着があったという記事がありました。 登場人物が「インディアンの塚を調べてる」というセリフをインディアンは差別用語だから先住民に差し替えてくれという編集からの要請があって、時代考証を無視した編集の方針に不満をもったそうです。 山本弘さんによると、地の文はもともと先住民の表現で統一しているそうですが、1940年にアメリカ人が「先住民」なんて言葉を使うのはおかしいので、セリフ中だけ「インディアン」という言葉を使ったらしい。 山本弘さんは以前にも、「きちがい」という言葉が差別用語とされたことにも反発しており、いかにもこの方らしいエピソードです。
私も去年、「トムソーヤの冒険」の新訳版を読んだところ、トムが変装したインジャン・ジョーをハックに説明するシーンで旧訳が「おしでつんぼのスペイン人」だったところが「耳も口も不自由なスペイン人」との表現になっていておかしいとmixiの日記に書いた人なので、気持ちがよくわかりました。 悪態をたれまくり、古き良き時代に生きる少年トムが、「耳も口も不自由な」なんて優等生的表現を使うとは到底思えず違和感がありあり。トムなら大人が眉をひそめるくらいの言葉遣いを当然していると思います。 ただ出版社がこの手の問題を嫌うのも、いろいろ事情があるのだろうとは考えます。差別だと訴える一部の人間がいれば応対も大変だし、そいつらがヘタに勝って、本の回収さわぎになると経営問題にも影響しかねない。
今回のケースは共著なので他の著者に迷惑がかかると、しぶしぶ編集部にしたがうことで決着がついたそうです。 なので本書の山本弘さんのゲームブックを遊ぶときには、セリフでは脳内変換か本に書き込みをして、先住民の表記をインディアンにしましょう。 ちびくろサンボの話しから、最近でも宮崎アニメ「風立ちぬ」が喫煙風景が多いと批判をうけたことまで、この手の話題は平成になって時々出るけど、本当におかしな時代になったと思います。 以前、盲目の落語家がこれを逆手にとって、「ブサイクは差別用語だから“顔の不自由な人”と呼ぶのが作法ですよ」という創作落語をしていて、ニヤリとしたことのある山口プリンでした。
もう一つの話題は、日本最初のTRPGの紹介記事が載っているといわれるウォーシュミレーションゲーム雑誌「タクティクス」3号をヤフオクで入手しました。 TRPGに興味のない山口プリンがなぜ、そんなものを入手したのかというと、この記事には参考として紹介されている「ドンキーコマンド」という国産初のTRPGがあるのですが、このゲームというのがソロ用でTRPGというよりはゲームブックに近いと言われていたからなんですね。 「ドンキーコマンド」は日本初のゲームブックかもしれない、入手せねばという我ながらマニアックな発想です。「ドンキーコング」を連想するようなノルタルジックなタイトルもいいですね。“まぬけな兵士”といった意味でしょうか。
そうして届いた雑誌は経年劣化の割になかなかの美品でしたが、残念ながら肝心の「ドンキーコマンド」の記事だけタイトルページを除いて切り取られていました。なんてこったい! 出品者に連絡したら、返金のうえ届いた雑誌も進呈するとの事で、損はしなかったのですが、残念でした。※ こうなるとタイトルページの文章とネット検索の情報から想像するしかないのですが、「ドンキーコマンド」はゲームブックよりはソロ用ボードゲームに近いような気がします。 迷宮のような敵軍の軍事基地へ潜入して、破壊と機密情報を盗み出すという内容でして、世界観がファンタジーじゃないのは、さすがウォーシュミレーションゲーム雑誌です。 「ローグ」や「風来のシレン」のようにランダムでダンションが変わるので、何度も遊べるようです。試してみたかったなぁ。 ゲームブックでも地形変化までは難しいでしょうが、道中で入手できるアイテムがランダムで変わって、それによってその後の正しい攻略ルートが変わってくるなんて作品があってもいいと思うのですが、意外にないですね。
※ 同誌にはTRPGの実例として、日本最初のリプレイ小説とされる「放浪の騎士エルツリグナーの冒険」も載っています。わずか1ページしかない短編ですが、ドラゴンにウィスキーを飲ませて酔わせて倒すとか、財宝を取りに戻ろうとしたら「今度は酒に強い竜王が待っているよ」とGMに釘をさされるオチとか、「クロちゃんのRPG千夜一夜」に出てきそうな変なノリで意外と面白かったり。
2013年11月06日(水) |
※おおっと※ また新刊ゲームブック情報 |
今月は3冊も新刊ゲームブックが発売されるよ!って話しをしたばかりですが、信じられないことに11月は創土社からもう一冊ゲームブックが発売されるようです。 創土社公式HPにもあったのに全然気が付かなかった。レーベルが違うからとはいえ、灯台もと暗しというものですよ。
本のタイトルは「超時間の闇」
発売日は目前の11月7日
なんと作者は山本弘!
すげぇ。本当に21世紀か今は。 ウォーロックの時代にタイムスリップしたんじゃないのかといいたくなります。 本書は3人の作家によるクトゥルー系小説のアンソロジー集のようですが、山本弘さんのパートが「超時間の檻」というゲームブックになっているそうです。※ ゲームブックの執筆は「4人のキング」の執筆から数えて実に22年ぶりだそうで、山本弘さん本人のブログでも「だって、久しぶりに書きたかったんだもん、ゲームブック! あれ作るの好きだったから!」と、なんとも気持ちの良いコメントが書かれています。 これは期待できますね! さっそく注文注文。改めて今月のゲームブック発売スケジュールを書きましょう。
11月 7日 超時間の闇(創土社) ※山本 弘パートがゲームブック 11月 9日 ミラクル・タイム・アドベンチャー3 かぐや姫と宇宙船のなぞ(藤浪 智之/ポプラ社) ※発売日が変更されてました 11月23日 魔界の滅亡(鈴木 直人/創土社) 11月26日 クロスワードランド(白夜書房) ※フーゴハルのミニゲームブック収録 11月29日 都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック ゲームの館からの脱出(はやみね かおる/講談社) ※発売日が変更されてました
あー、今月は新刊のゲームブックだけで完全に予算オーバー。今のゲームブックって意外とお値段がバカにならないですから。 嬉しい悲鳴ですが、しばらくは古本ゲームブックの購入は控えるべきだったの〜。
※ このクトゥルー系小説のアンソロジー集は創土社でシリーズ化され、すでにフーゴハルさんなどゲームブックが収録された本が他にもあるようですが、それすら知りませんでした。 このシリーズの存在自体はぼんやり知っていましたが、クトゥルー神話が特別好きでもないのでスルーしていたせいもあります。 自分のネット嫌いで、いかにゲームブックの情報収集ができてないか痛感できます。昔(ゲームブックブームの頃じゃなくて冒険記録日誌を始めたころ)は、ゲームブックのメルマガ「ゲーマニ」が教えてくれてたのになぁ。
2013年11月04日(月) |
霧の中の悪夢(小野寺紳/成美堂出版) |
本書の表紙にコミックアドベンチャーと銘打たれたゲームブックですが、漫画形式ではなく全パラグラフにイラストがついているタイプです。
舞台は日本。フリーの雑誌ライターが、ある地方の地図の一部分が空白になっていたのに興味をかきたてられて、実際にその地に探索に赴くという出だしです。地元では先日も女子高生が植物観察に出かけて行方不明になったとか、村人がヒソヒソ噂しています。 向かってみればそこは霧につつまれた地帯です。やがて突然の雷雨に追われ雨宿りできる場所を探していると、怪しげな洋館にたどり着いた。しかし、その屋敷には秘密が……という典型的なホラーシュチエーションのゲームブックとなっています。 謎めいた館の女主人から食事のもてなしを受ける序盤や、悪魔の儀式や生贄のシーン、何を考えているのかわからない執事など、遊んでいるとファイティングファンタジーシリーズの「地獄の館」を思い出させてくれます。 印象的なシーンとしては廊下を這いずっていく男女の2人組が怖いです。
ゲーム本編で134ページで、1パラグラフが1ページ(たまに2ページ)なのでボリューム的にはたいしたことはなく、30分もあれば全て読み終わるでしょう。ルールも特になく単純な分岐小説です。 しかし、シンプルゆえの楽しさがあるといいますか、オーソドックスなホラーものとして遊ぶにはよく合っています。表紙と本文イラストは好みではありませんが、ゲームブックのスタンダードな入門書としていいと思います。 あと序盤に伏線のあった女子高生が、生贄にされそうになるヒロインとして登場します。ホラーと悲鳴を上げるレディの組み合わせはお約束ですが、展開によっては逆に主人公が生贄になりそうなところを助けてくれることもあり、頼れる仲間として描かれているのに好感が持てました。 ボスはやはり館の女主人と思いますが、一度クリアしたあと他のバットエンドなどを見ていると、本当は違うかもしれないとも考えました。このあたりのスッキリ謎が解けないところ(単に作者が深く考えてないだけかもと思わないのがプラス思考です)はホラーならではですね。
2013年11月03日(日) |
ラジコンアドベンチャー(すがやみつる/小学館) |
漫画形式のラジコンを主題にしたゲームブックです。 すがやみつるさんは、ゲームセンターあらしを書いた漫画家さんですね。ご本人もラジコンやモータースポーツがかなりお好きらしく、インタビューページや、劇中のちょい役でそのことを説明しています。 漫画形式のゲームブックでは、企画もので依頼されたから書いたんだろうなって印象を受ける漫画が多いのですが、作者が楽しんで書いてるなら作品にとってもいいでしょうね。
大まかな内容は、おもちゃ屋の福引で一等のラジコンを当てた主人公の少年。「ラジコンのことなんか全然知らないよぉ」と慌てる少年に、「うちのお店が全部面倒みるよ」とおもちゃ屋の店主。 かくしてラジコン素人だった少年がラジコンレースに優勝するまでというサクセスストーリーです。
それにしても懐かしい……。 遊んでいる間はノスタルジックな感想ばかり湧いてきました。 なぜなら本書は3部構成で、そのうち第一部の部分は、私が小学生の頃買っていたコロコロコミックに掲載されていたものだったからです。 夏休みにおばあちゃんの家の縁側で、寝転んで読んでいた思い出がよみがえってきます。 当時のコロコロはラジコンとチョロQに力が入っていたものです。それにゲームブックなるものが流行りはじめたので、採用したというところでしょう。第一章は61ページあるので、月刊誌とはいえ力が入った特集扱いだったろうと思います。 この頃の私はまだゲームブックという言葉を知らず、最初は「話しがつながらない意味不明な漫画だな」と放りだした覚えがあります。 しかし、遊び方がわかると一転、こんなに面白い漫画はない!とばかりに何度も挑戦してました。 考えてみれば、私が最初に遊んだゲームブックとして認識していた「マリオを救え!」や「地獄の館」よりも前に遊んでいたわけで、これが本当の私の初ゲームブック体験ともいえるわけです。そう思うと、いっそう感慨深いものがあります。 今思うと、ゲームブックとしては単純な作りで、選択肢やマシンのセッティングの判断を間違うと、マシンがクラッシュして即ゲームオーバー、もしくはいずれゲームオーバーになるものばかりです。正解ルートは一つしかありません。そんな内容でも当時は複雑な気がしたのですよ。漫画としてもスピード感があって楽しかったし、もっと長いストーリーに感じていたけど、今読むと短編だったんだなぁ。 あと、すっかり忘れていたけど、ブラック・サンダーという、いかにも悪そうな小学生チームが主人公になぜか絡んでくるのが、いかにもコロコロ的なお約束展開で、読み返したときにニヤリとしてしまいました。 他にも、作ったばかりのラジコンを手にした主人公が、いきなり店主に今日のレースに出場するよう勧められる選択肢なんか、断って練習するを選ぶと「君のような臆病者は失格だ!」とゲームオーバーになるんですね。当時はそれが心構えなのかー、と素直に受け取ってましたが、いやいや、操作すらうまくできるか疑わしいのに実際無理だし他の参加者にも迷惑ですから。それって単にページの都合でしょ!って成長した今ならつっこみを入れられます。ああ、感慨深いなぁ。(笑)
第二部以降はコロコロに掲載されたものかは不明ですが、続きがあるとは本書を入手して初めて知ったので驚きました。両手を広げ、キーン!と言いながら走って登場する主人公がまた懐かしい。 第一部は初心者向けのオンロードのラジコンが主題だったのですが、第二部はバギーなどのオフロードラジコン、第三部は4WDと改造を施したラジコンを扱っていて、徐々に上級者向けとなっていきます。 ゲームセンターあらしとかファミコンロッキーみたいに、出っ歯で操作するとか胡散臭い裏ワザが出るとかはなく、あくまでも真っ当なラジコン操作とマシンのセッティングでレースの優勝を目指していく展開は第一部と同じです。まあ、クライマックスでトップのマシンを踏み台にして再ジャンプ!なんて展開もありましたが、それくらいは大目にみましょう。 あとブラック・サンダーも毎回出てきます。第三部で優勝すると、「お前には負けたぜ」っていってくれるのもお約束です。
思い出補正もあるでしょうが、初めてのラジコンをさわる少年が主人公とあって、あまり専門用語も使わず、わかりやすくラジコンの大まかな知識が身に着くようになっており、ラジコン入門書として優れていると思います。 古い本なので知識としては今の時代には通じないこともあるとは思いますが、ラジコンって楽しいよ、という気持ちが伝わってくる一冊です。
2013年11月02日(土) |
サヴァイヴァル・ゾーン−デーモントライブ ゲームノベル−(友野詳・グループSNE/新紀元社) |
ネオゲーム文庫からまたまた新作ゲームブックの登場です。 このレーベルからは5冊目のゲームブックですね。原作はスマートフォン向けバトルRPGで「デーモントライブ」というゲームなんだそうです。 んー、スマホ向けゲームってだけでやんわり拒絶反応がでるのが、私が年を取った証拠でしょうね。考えれば昔でいうファミコンゲームブックと同じようなものなんですから、私が嫌う理由はありません。 それに、原作を知らなくてもゲームブックとして楽しむことができる内容であればいいわけです。
本書の世界観、つまり「デーモントライブ」の世界は独特です。 舞台は現代の世界、もしくはわずかに未来の世界がベースで、「現有界」という人間がする普通の世界以外に「夢幻界」というものが存在します。 この「現有界」は簡単にいうと、人間が語り継いだおとぎ話や昔話や歴史などで登場する人物や怪物などが、人間の想像力によって生み出された世界ということです。つまり、赤ずきんちゃんや金太郎やピーターパンが「夢幻界」に実在して生きているわけです。このファンタジーの住民は「夢幻界」で物語と同じことをなぞっているだけだそうですが、中には「現有界」にやってきて新しい自我をもち、人間達と生きるものや危害を加える者もいるそう。 やー、妄想が具現化するとはなんだか賑やかそうです。キャタクターの強さは人間の想像力が多さに比例しており、つまり有名キャラクターほど強いようです。恐らくミッキーが最強でしょうが、いろんな意味で最強ゆえに本作に登場することはないでしょう。 これだけ書くと「デーモントライブ」の世界は、なんだかメルヘンチックにも思われそうですが真反対です。例えば白雪姫なんか戦闘機に乗って登場します。他にもデモナイズといういわゆる変身パワーアップができたり、自分のデータを組織が記録していれば何度でも復活できる設定とか、ダークでサイバーな世界観といえるでしょう。
そんな世界の主人公も夢幻界に生まれた一人です。美青年ですが記録喪失で何の物語から生まれたのかわからない状態。人間達と共存を目指す組織に属して、人間達を脅かす夢幻界の住民と戦っています。 そこへ組織から主人公に指令がくだるところからゲームスタート。使命は同じ組織の新人、ゴルディロックスが指名の途中で行方不明になったので捜索すること。ゴルディロックスはイギリスの童話の主人公で、金髪の可愛い女の子。主人公をお兄ちゃんと慕っていたそうです。 前半はロンドンの街並みで、情報収集や張り込みなど探偵のような行動となります。このあたりは普通のゲームブックの感覚ですね。少々失敗しても組織の仲間、無口な「ジャックと豆の木」のジャックとか、関西弁を使う赤ずきんちゃんに助けてもらうことができます。最初のプレイでは助けがこないシーンで失敗してしまい、準備不足のまま後半に突入してバッドエンドとなりました。 うまく行けば敵の親玉に会うところで前半終了です。 後半は敵の作り出した夢幻界の中をさ迷いながら自分の本当の名前を見つけ出し、親玉と対決します。つまり自分探しの旅です。途中で登場するヒントを元に、何の物語の主人公か考えるのも楽しいでしょう。私は最初のバッドエンドで何の主人公か、一部がわかってしまってましたが。 不条理な夢幻界の世界だからか、同じ展開を何度も戻って繰り返すことができるのが特徴で、じっくりやっていれば全てのヒントを回収できるのでクリアは簡単でした。 ただ、デーモンを召喚する選択肢では読者に一般的なファンタジー小説の知識がないと、ゴーレムやサキュバスがどんな魔物なのかわからないので困るでしょう。この本を読むくらいの人なら大体知っているとは思いますけどね。
続いてゲーム性の話しをしますが、ルールはこのレーベルお馴染みのものです。 つまりストーリーのポイントになると、そのシーンで使用できる6つの品物や情報の中から、ふさわしい2つを決め使う順番を決めてパラグラフジャンプするのです。正解なら進みます。サイコロの使用や能力値や所持品の設定はなく、普通の本を読むくらいに気軽に遊べつつ、ゲーム性を出したシステムということです。 ただ、このレーベルはこのシステムを基本に進めるつもりでしょうか?ファイティングファンタジーシリーズのように、レーベルを一本の基本ルールで統一するというのがいけないわけではないのですが、このシステムがそこまで魅力的かというと、私は正直もう飽きたというのが本音ですね。 とはいえ、本作は不正解が続いても簡単にはゲームオーバーにならず、失敗したら失敗したなりに面白い展開が味わえるようになっており、ゲームブックとしての完成度は同レーベル内でさらに高まっていると思いました。 本書を楽しめるかどうかは、このゲームの世界観が気に入るかどうかでしょう。気に入ったならオススメの作品です。 不満点は、幻影のゴルディロックスが全裸で「お兄ちゃん…」といいつつ迫ってくるシーンに、イラストがついてないことです。おかしいと思います。(キッパリ)
しかし、今回の主な舞台はイギリスでしたが、これが日本ならどうなんでしょうね。日本人の妄想力が生み出す「夢幻界」の住民は独特だと思いますよ。 例えば学園では世界を改変する力を持つ自己中な女子高校生の他に、お兄ちゃんが大好きな妹が大勢いて、会社では美男子同士のカップルが蔓延するという、大変カオスな状況になっていると思います。7つの珠を集める尻尾の生えた小僧が走り、世界はいつも滅亡の危機を迎え、野球やテニスの試合も人間離れした技が飛び交い、命がけになりそうです。 それはそれで楽しいか。そんな世界が実在したら俺も自分探しの旅をするとかいいつつ、飛び込んで戻ってこない人達がいるかもしれませんね。
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