冒険記録日誌
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2013年04月07日(日) |
監獄島からの脱出(さいとう・たかを/西東社) |
ゴルゴ13でおなじみ、さいとうたかをの書いた漫画によるゲームブックです。 正直、あんまり西東社のゲームブックは、やぼったい雰囲気の作品が多く、中にはゲームブックと言えないようなゲーム性の作品があるなど、好みじゃないのですが、さいとうたかをの書いた一連のゲームブックシリーズだけは別ですね。ゲームブックとしては、ゲーム性はシンプルですが、さすが巨匠というべきかやはり読み物として優れています。無人島や砂漠などを冒険する内容の「サバイバルゲーム」とかずっと以前に遊んだのに、今でも時々読み返してます。
さて、この作品。タイトルの監獄島は「ザ・ロック」と読むそうです。 「サバイバルゲーム」は自然界でのサバイバルをシュミレーションした内容だったのに対し、本書では牢獄からの脱出、つまり脱獄を目的としたシュミレーションゲームです。 主人公はアメリカ人と日本人のハーフで富豪の息子ですが、父の死亡とこの機会に財産のっとりをたくらんだ義母の陰謀により、海外滞在中に濡れ衣をきせられ逮捕。ろくな裁判もなく、そのまま海外の牢獄に収監されてしまいます。懲役はなんと20年。再審請求も無視され、追い詰められた主人公は脱獄を試みるというストーリーです。 刑務所は電子ロックもなく、監視カメラなどの監視装置にも乏しい代わり、支給される飯は不足気味、看守は横暴と、第二次世界大戦頃の海外刑務所映画のような感じです。 主人公は看守による賄賂の要求や同じ服役囚たちの暴動騒ぎなどに巻き込まれつつ、食事の塩分で鉄格子を錆びさせたり、司祭に変装して脱出しようとしたり、果ては古典的なトンネル掘りなど、あの手この手で脱出を試みます。能力値のチェックも必要なくゲーム的には単純な分岐小説タイプです。一応、まずい選択肢を選ぶとバッドマークがつくので、この数をいかに少なくクリアするかというルールもありますが無視しても問題ありません。 うまい選択肢を選べばより脱獄が近くなり、まずい選択肢を選べば看守に見つかり折檻され懲罰房行きになるなど、悪循環におちいる展開になります。ただ、どんな状況でも脱獄の見込みは残されているので、繰り返して遊ぶときは、わざと失敗して違う展開を楽しむのもいいと思います。
しかし苦労して脱獄に成功したようでも結局はつかまるという展開で、主人公はもっと重装備の刑務所に収監されてしまいます。クリアまでには合計3つの刑務所からの脱獄という3部構成となっています。TVゲームで言うなら3ステージでクリアというやつですね。 あと時々、仕事の助手(で恋人?)だった金髪メガネ少女が面会に来て、外の様子を知らせてくれるのですが、これが全体的なストーリーをつなげる効果を出しています。 彼女が差し入れた手紙(機転を利かせて和紙にしてくれていた)を粘土のようにして合鍵を作り出す展開もあるのですが、基本的には主人公を見守るだけの役割です。せっかくの協力者なので欲をいえば彼女を脱獄にもっと積極的にかかわらせて欲しかったですね。 エンディングで監獄島から無事脱出した主人公は、彼女と抱き合って喜びます。その背後で、この国の法律では脱獄は合法的なのでもうこの件で再び訴えられることはない、と凄いナレーションがさらりと流れています。義母との闘いはこれからだ!的な、少年ジャンプのようなさわやかな終わり方でした。
最後に注意点が一つ。本書はところどころに、コラムとして史実の脱獄例をいくつも紹介しています。これは結構楽しいのですが、絶対に本編を遊び終わってから読むべきです。 なぜならゲーム中の選択シーンはこの史実に基づいたシュチェーションが多く、ネタバレしているからです。コラムの脱獄囚と同じように行動すれば簡単にクリアできてしまいます。中にはどっちの選択肢でも間違っていないような内容でも、史実でない行動だと運悪く看守に発見されるなんてあたり、ちょっと史実贔屓すぎる気がしなくもないです。 私は昔、「破獄」という日本の脱獄王を主人公にしたノンフィクション小説を読んでいたおかげもあり、楽にクリアできました。ちなみにこの小説はコラムにも紹介されていました。この小説も本書もともにお勧めです。
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