冒険記録日誌
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2003年10月31日(金) 奥様は名探偵 その3

(ネタバレ注意。“マナ亭奇談”をプレイ予定の方は読まないで下さい)


「事件の概要はわかったわ」
一通りの捜査が終わると、奥様は得意そうにそう言った。
捜査開始からまだ1時間程しか経過していないというのに、すごい自信だ。
奥様は嫣然と笑いながら、片手でワイングラスのように萩焼きのカップを回す。
「そうか・・・それでこのホテルは一体なんなんだ。失踪した北島氏は?」
私が急須でカップに緑茶をそそぎながら尋ねた。
「ふふ。あわてないで。まず、このホテルの支配人。正体はダイエット研究で有名だった鷹橋学博士ね。彼は過去に大失言が災いして干されているから、世間を恨んでいた可能性は十分考えられる」
奥様はお茶を飲みながら続ける。
「部屋の秘密は魚へんをつければどの部屋も魚の名前になること。これは“タラお預かり”のメッセージと、北島氏の部屋名の“雪”でわかったの。捜査中も魚の話題が多かったし簡単だったわ。そしてこのホテルの目的───」
ここまで言うと奥様の目が光った。私は思わずつばを飲み込んだ。
「それはお客さんを魚料理にして食べちゃうこと。ホテルの秘密主義。地元から魚を仕入れないのに、現地調達しているという従業員の言葉から間違いないわ」
「な、な、な、なんだそれは・・・。それでは北島氏は」
「かわいそうに、今ごろは冷凍肉ね」
「なんてことだ!おのれ、宮沢氏。いや、今どこにいるんだ!鷹橋博士め」
正義感に燃える私は、宮沢氏のいる部屋を探してマナ亭を走り回った。
「ここか!キエェェェェ!」
小学生の頃に習った少林寺拳法にものをいわせ、空手チョップで部屋に飛び込む。そこには4人の人間がいた。
宮沢氏と、北島夫人、シャーロックゲームズ。そして北島氏。

は?

私は、抱き合って再会を喜んでいる北島夫妻を呆然とみつめた。いったいどうなっているんだ?
ゲームズが私に説明してくれた。マナ亭では秘密主義を匂わせ、お客に「このホテルは、お客を肥らせてから食べてしまうのではないか」という恐怖心を植え付け、それで必死にダイエットしてもらうという営業をしていたのだったのだ。それでも自発的に痩せようとしない北島氏のようなお客は、一度襲って恐怖を味あわせてから正体を教え、ホテルの従業員として働いてもらっていたということだった。
しかし硬直した私の耳には、後ろでドアを蹴り開けてマナ亭を出て行った奥様の、「そんなのわかるわけないじゃん!」というかすかな声しか聞こえていなかった。


2003年10月30日(木) 奥様は名探偵 その2

(ネタバレ注意。“マナ亭奇談”をプレイ予定の方は読まないで下さい)


「あの、もしもし。なんでクロスワードをやっているの?」
私が呆然とした顔で奥様にいうと「めんどくさいから」と速やかな回答が帰ってくる。
なんてことだ。これで事件は迷宮入りだ。
私はよろめきながら席を立ち上がり、マナ亭の玄関をとおり、秋風の寒い外へと出ていった。
ホテル近隣の村に住む漁師達が、怪訝な顔をして泣きながら歩く私を見上げる。
きっと、ダイエットに失敗して脱走した客と思われているのだろう。ますます可哀想だな、俺。

そのとき背後から奥様の声が聞こえた。
「ねぇ、魚のタラってどんな漢字だったっけ」
私は急いでマナ亭の中へ突入した。
「辞書では、鱈となっているね。うんうん、捜査再開だね」
「あんた、よく聞こえたわね」
奥様は手をとってぶんぶん振る私を、呆れたように眺めた。
ともあれ奥様の活躍で、マナ亭の客室の名前が、魚へんをつけると全て魚の名前になることに気がついたのだ。これで謎めいたメッセージのいくつかの意味がわかってきた。これは大きな前進だ。
その後、なかなか開かなかった金庫は、私が開けることに成功。捜査は順調にすすむ。
こうして少しずつ事件を取り巻く数々のヒントが、少しずつ形を伴って見えてきたのであった。


続く


2003年10月29日(水) 奥様は名探偵 その1

(ネタバレ注意。“マナ亭奇談”をプレイ予定の方は読まないで下さい)


さて、北島夫人とゲームズが宮沢氏と話している頃、もう一組の私立探偵が“マナ亭”にやってきていた。
1人はもちろん私(山口プリン)である。もう1人もこの冒険記録日誌に時々登場する女性であった。
「なんなの。自分で解決できないからって、私に挑戦させるわけ?」
「まあまあ、奥様。君ならきっと北島氏を探し出せる。間違いないよ、うん」
「なんだか、めんどくさいなぁ。イチイチ75ページの見取り図に戻らないといけないしさぁ」
こうして奥様はぶつぶついいながらも、捜査を開始したのであった。

彼女ならきっと自分の見落としたものに気がつくはず。
私はページをめくる奥様を頼もしげに見上げる。
一方、自分は捜査のためにすっかり混乱した頭を整理する為に風呂に入ることにした。
そして、湯船の中でしばし考えこむ。
宮沢賢治の本、「弱」と書かれた部屋、何かを隠しているように見える従業員達。
これら全てのヒントがバラバラでつながらない。悔しいが、今は奥様に期待するしか方法がなかった。
風呂からあがったときも、奥様はテーブルの上で熱心に書き込みをしていた。
いったん取りかかると、素晴らしい集中力だ。

───ほほう。これはどこまで進んだのだろうか。

私が覗き込むと、奥様はとっくにマナ亭の捜査に飽きて、クロスワードパズルに挑戦しているところであった。


続く


2003年10月28日(火) マナ亭奇談(奥谷道草/白夜書房)

クロスワード・ランド12月号にのっている、はみ出しゲームブック。
今回はシャーロック・ゲームズが登場する話し。つまり推理物です。

マナ亭奇談の舞台となる“マナ亭”とは、ダイエットが目的の宿泊客が集う、名前も目的も風変わりなホテルです。地元の人間と一切交流しない従業員達、宿泊客以外には実態のわからないダイエット方法と、秘密主義のなかなか怪しいホテルのようです。
さて、今回の依頼者は、ここのホテルに宿泊したきり、行方不明になった北島氏の御夫人から。夫人がホテルに電話で夫のことを問い合わせても取り合ってもらえず、慇懃無礼な返事ばかり。不安になった北島夫人はゲームズと一緒に、“マナ亭”にやってきたわけです。
ホテルにつくと支配人の宮沢氏は「北島氏はチェックアウトされました」と2人につげます。いったい北島氏はどこへ、マナ亭の秘密とは・・・。

オープニングはこんな感じ。珍しく今回は殺人事件じゃないですね。いや、北島氏の安否によってはわかりませんが。
ゲームの進め方は、ホテルの見取り図を見て各部屋ごとに書かれたパラグラフを選んで読むという、シャーロック・ゲームズシリーズではお馴染みの形式です。
私はなんとなくこの形式が苦手(注)で、以前この日記で「シャーロック・ゲームズは推理ゲームであってゲームブックじゃない」みたいな発言をしていましたが、今回は実際にホテルを歩いているつもりで廊下や部屋を順番に捜索していったので、ゲームブックとして楽しんでいました。
ただ楽しめましたけどねぇ。やはり難しいですね。私単独では今回の事件も解決できそうもないんだよねぇ。




(注)
これはもともと私が、この方式が多い二見のドラゴンファンタジーシリーズを読むことがなかったせいかもしれない。
うむむ。ブレナンファンのサイトは、最近賑やかなニュースが多くて、なんとなく取り残されたような気分になるなぁ。


2003年10月27日(月) ドラキュラ城の血闘(J・H・ブレナン/二見書房)

私のマイベストゲームブック、ベスト5に入る作品。
ヘルシング教授に誘われて同志五人、ドラキュラ退治のために館を探索するお話なのですが、ふざけているのかそれともふざけているのか、とんでもない展開が次々と登場します。
部屋を一つ開けるたび、廊下を一つ進むたびに、読者はギャグの攻撃に耐えねばならないこと必死です。
どんなギャグかって?
まだ読んでいない人の楽しみを削いではいけませんので一例だけあげますと、ある薄暗い小部屋に美しい壷が置いてあります。ここは正体を確かめるため“壷の中に手をつっこんで舐めてみる”を選択しましょう。すると、

───最近までヨーロッパ社会には、いわゆる便器が存在しなかった。もちろん、それまではヨーロッパ人が用を足さなかったというのではない。広大な宮殿の柱や後ろの美しい庭園の木陰には、かならずこのような壷が用意され、用を足す器として隠し置かれていたのだ──。と、いうようなことを、きみは、中身を舐めてから、わりに冷静に思い出していた。
ひとあじ遅かった・・・・・・。

というような感じ。他にも頭がどうかなりそうなほど、ぶっとんだ内容が主人公を待っています。
さらにきわめつけに本書を特徴付けているのは、この作品が「人間編」と「ドラキュラ編」という2つのゲームブックで構成されている点です。
最初、主人公は「人間編」でドラキュラ退治をするのですが、途中でうっかり吸血鬼に噛まれてしまうと───なんと、吸血鬼になって今までと逆に仲間だった人間達と戦う「ドラキュラ編」に突入するのです。
すると、仲間がニンニクをぶら下げたホールには近寄れなくなり、毒草の咲き乱れる庭は素晴らしい楽園に見え、人間のときは気配しか感じなかった幽霊とお話ができるようになる、と180度世界観が変わってしまいます。館の探索中は同じ部屋でも、「人間編」との対比に思わずニヤニヤ。そして、もし人間達にニンニクや十字架を突きつけられて退治されてしまったら───「人間編」に逆戻り。
これが、「人間編」と「ドラキュラ編」を行ったり来たりしないと、クリアできない部分もあるので、見かけによらずゲーム性が高い要素なのです。
エンディングは人間としてドラキュラ伯爵を退治するか、吸血鬼としてヘルシング教授を倒すかの2つ。どっちもかわいそうな結末が待っています(笑)

現在ではなかなか入手困難な本書ですが、いずれ創土社から復刊してもらえる可能性もあります。持っていない人も、あきらめずに読める日を期待しましょう。期待するだけの価値はある一冊です。


2003年10月26日(日) メタルマックス 爆走タンク冒険戦記(村上 紳/双葉文庫)

この作品は危険なバイオモンスター達が地上を闊歩する、世界大戦後の荒廃した世界を舞台にした冒険RPGです。
元ネタはファミコンゲームらしいですが、残念ながらそちらはプレイしたことはありません。

さてストーリーですが、モンスターハンターとなった少年少女の3人組が戦車にのって、懸賞金のかかったモンスター達を退治していくというもので、いかにも双葉ゲームブックらしい設定です。しかし、イラストが妙にシリアス系で格好良いという影響もあってか、双葉ゲームブック特有の子供っぽい雰囲気が抑えられているように感じます。
特に主人公の憧れる賞金稼ぎ“レッドウルフ”という渋すぎる親父キャラクターには痺れまくり。
彼の去就を知りたいがために、後半は最後まで一気に読んでしまったくらいです。
冒険の主人公はもちろん読者ですが、物語全体として見れば最初は脇役だったはずの“レッドウルフ”が間違いなく主役でした。主役をサポートする主人公達という立場も、たまにはいいかもしれませんね。

ま、ほぼ一本道の展開だし、ゲーム性とかも簡単な方。総じて双葉のゲームブックとしては普通の出来ですけど、決して駄作ではない一品です。
鈴木直人作品やソーサリーなどを愛好する、現在の主流ゲームブックファンにも気に入られる内容かはわかりませんが、発売当時の小学生読者には十分楽しめた作品ではないでしょうか。


2003年10月25日(土) ワルキューレの伝説 舞い降りた女神(尾崎克之/双葉文庫)

いわずと知れた、ナムコが誇る代表的ゲームを、ゲームブック化した作品です。
ワルキューレのゲームブックだと、創元推理文庫から発売された三部作が有名ですが、双葉作品でもあったんですねぇ。
双葉ゲームブックには、ゼビウスとかドルアーガなど、他のナムコ作品がなかったので少し意外でした。
読んでみた感想ですが、創元推理文庫のワルキューレはもとより、同じ双葉ゲームブックのドラゴンクエストなどの作品に比べても内容が劣る気がします。
その大きな理由を2つ書いてみましょう。
まずゲーム序盤はワルキューレの仲間であるサンドラが主人公なのに、冒険の途中からワルキューレの視点に切り替わるあたりが問題です。創元推理文庫版も似たような箇所はあるのですがあっちはストーリーの面白味を作る為の処置であったのに対して、本作品はその必然性がなく、またあまりにも唐突すぎ。なによりストーリーがほぼ一本道なので、選択肢のドキドキ感がまったくない。
続いて戦闘シーン。TVゲームのRPGのごとくいきなりイベントが発生します。戦闘中にショップでアイテムを購入できるという要素も、なんだかな〜な気がしますが、問題は攻撃方法。剣といくつかの魔法の中から選べるのに、その選択の根拠が示されていないのです。半ば運任せ。なにより雑魚の敵は倒しても倒しても延々と仲間が登場するので、ボス戦以外は逃げないと基本的にストーリーが進まない。敵を倒すのはゴールド稼ぎのみの目的でしかないという、単なる作業以外の何者でもない戦闘システムはやっていて苦痛でした。

670もの膨大なパラグラフ数を使った複雑なパラグラフ管理などを見ると、決して作者が手抜きをしていたとは思えず、むしろ真面目に作っていた感じなのですが、それが面白さに繋がっていないのにはガックリ。
ゲーム性は二の次でもストーリーが素晴らしいとか、あるいはその逆とか、「超時空パイレーツ」みたいなメチャクチャすぎるところとか、なにか一つでも面白い特徴があるゲームブックの方が楽しいですね。


2003年10月24日(金) ミニ四駆チャレンジャー 熱走改造バルセロナ編(高木成一/双葉文庫)

小学生に大人気のミニ四駆のレースを題材にしたゲームブック。
小学生3人組がミニ四駆の世界大会に挑戦するというスケールのでかい内容となっております。
結構、本気でメカのチューニングの知識を求めるシーンが多くて、見かけによらず本格派。
プレイ中に書き込む、改造チェックシートというのをみると、専門用語がギッシリ書かれています。

しかしまあ、はっきり言ってミニ四駆に関する予備知識がない私にはお手上げの内容です。初心者向けのフォローなどまったくありません。
ミニ四駆を知らん奴は読むな!と言わんばかりのスタンスは、ある意味潔いのですけどね。
せめて巻末に何ページか、入門知識くらい載せてくれても良かったのになぁ。


2003年10月23日(木) キューブ?(奥谷道草/白夜書房)

クロスワード・ランド11月号にのっている、はみ出しゲームブックです。
今回の設定は、「朝、目が覚めると、小さくて四角い部屋が延々とつながる謎の迷路にいた」というもの。
シンプルな立体迷路ゲームって感じで、私的には好きです。
「上の部屋にあがるときは腕立てふせを10回行う」とか、ゲーム中に体を実際に使うことを要求しているルールが、奥谷氏(フーゴハル)らしい。
実際に試すといい運動になりますね。というか、ぐったりしました。(笑)
ただ私は、このシリーズを電車の中などでプレイするので基本的にマッピングをしないのですが、今回も地図作成なしではクリアは厳しいようです。
それで紙とエンピツを片手に自宅でプレイしていたのですが・・・・・・・んっ?うまく地図が完成しないぞ。
しばらく試行錯誤したあげく、クリアを挫折してしまいました。

後で、いつもお世話になっている、マナティの浜辺(http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/1374/index.html)というHPに行って調べると、どうやらゲーム中にバグが何箇所かあったことを知りました。
そのHPには、バグの修正情報も掲載していましたが、今更再プレイも面倒くさいのでそのままです。
うーん。厳しいことを言うようですが、クロスワードランドの読者の大半は、バグ情報なんて知る方法がわからないわけだし、いったい読者の何%がこの「キューブ?」を楽しめたのかなと疑問に思いますね。
アイデアはいいのですけど、もうちょっと丁寧に作ってくれないと、マニアしか読んでくれない企画になっちゃいますよ。と、今日はえらそうに書いておきます。


2003年10月22日(水) 山口プリン、フリーマーケットで出店する その4

そのときだった。
1人でやってきた小学生が、創土社のゲームブック(注)を指差し、「これ、新品なんですか?」と、聞いてきたのだ。
どうやら創土社用に作ったもう一つの張り紙

───復活したゲームブック。こちらは全部新品です!───

に反応したようだ。
私はここぞとばかりに、ゲームブックの簡単な説明をまくしたて、「まったくの新品だけど今日は半額の600円で売りますよー」(んっ?)と笑顔を振りまいた。
その子はしばしチョコレートナイトとパンタクル1.01を見比べたあげく、パンタクル1.01を手にとった。
「じゃあ、これください。」
「はい、600円。ありがとねー」
やっと一冊売れた。
新書なので単純に考えると600円でも赤字なのだが、これをキッカケにゲームブックファンが増えてくれれば、と思うと悪い気はしない。

こうしてフリマは正午を経過した。
その後も双葉ゲームブックを手に取ってくれる人(やはり小学生や親子連れ)は多いのだが、購入までには至らず。
その他のゲームブックにいたっては視線すら向けてくれない状態が続く。
そうこうするうちに午後も3時半を経過してフリマ自体が終了。
ゲームブックの売上げは一冊のみ。総売上額はキッカリ1万円だった。

やはり一冊300円は高かったか・・・・・・。
途中で値下げを考えないわけでもなかったのだが、今日の注目度から考えると一冊100円でも売れない気がした。
いや、フリマの常識(捨てるよりましという気持ちで値段設定を行う)から考えれば一冊10円くらいが相場で、そうすれば売れるかもしれない。
でも、入手の苦労を考えると、それはあまりにも悲しいのでやめておいたのだが。
今度機会があったらゲームブック普及活動と割り切って、20冊ほど一冊50円で売って見るかな。
今回は、ゲームブックが一般の人から知られざる存在となっていることを感じてしまう一日であった。




(注)
創土社のゲームブックはいつもダブルで買っていたから、余りを出品していたわけ。
まあ簡単には倒産しないだろうと最近は信じてきた(って、ごめんよ創土社さん)ので、送り雛以降は1冊ずつしか買っていないのだけど。


2003年10月21日(火) 山口プリン、フリーマーケットで出店する その3

周囲の喧騒をよそに、ひっそりと佇むゲームブックを入れた箱。
うーむ。元々たいして売れるとは思わなかったが、一冊も売れないのは悲しい。
せめて「ゲームブック懐かしぃ」とか反応する人が、何人かくると思っていたのだがなぁ。
宣伝文を画用紙に書いて、箱に貼り付けてみた。

───懐かしのゲームブック。自分が主人公の本です!───

反応なし。無情に通り過ぎる人々。
今までにゲームブックを物色した人は、25歳くらいの女性が、富士見文庫のゲームブックを覗いた一度だけ。(TRPGファンだったのだろうか?)
しからばと、作戦をかえて小学生をターゲットにすることにした。
すなわち双葉文庫のゲームブックを一番目立つところに置いたのだ。
すると、マリオの表紙に惹かれて子供が何人かやってきた。
やったぞ、作戦成功!

しかし、パラパラと本をめくった子供たちは、「ちぇ、攻略本じゃないじゃん」と言ってまた離れていった。
・・・・・・・・・。

続く


2003年10月20日(月) 山口プリン、フリーマーケットで出店する その2

時間も9時半となって、ぼちぼちお客さんが物色にやってきた。
西日本最大のフリマといえども、品揃えは普通のフリマと同じで、古着などを売っている店が大半だ。
私のようにCDなどを出品している個人は意外と少ない。
そのおかげか、割と足を止めて商品を見てくれる人が多かった。
「このバイオハザードは、1作目なの?」
「そうっす。これはディレクターズカット版で、2の体験版もついているから貴重ですよ」
「面白い?」
「そりゃもう。私も面白いから通常版の方は売らずに保管するつもりなんですよ」
「じゃあ、もらおうか」
とか、
「お勧めのアクションゲームはない?」
「ウンジャラマミーなんかどうです。音楽に合わせて踊る奴」
「それはちょっと苦手かも。クラッシュバンデグーみたいな奴がいいな」
「うーん。そっくりなのはないけど、この影牢なんかどう?屋敷に落とし穴とか、罠を設置して敵を倒すゲーム」
「あ、面白そう。それを買うよ」
「まいどー」
とか、
「まいどあり、CD2枚ですか?4枚なら千円にしときますよ。あっ、そうしますか?ありがとねー」
とか、開始から2時間の間に、順調にゲームソフトや音楽CDは売れていった。
しかしゲームブックを入れて展示している箱は、時に忘れられたように静かにたたずんでいた。

続く


2003年10月19日(日) 山口プリン、フリーマーケットで出店する その1

先日(10月18日)、西日本最大と言われるフリーマーケット(以下フリマと略)会場に行って、遊んできました。
店々の商品を物色するだけでも面白いのだけど、自分の不要品も売ってしまえるのがまたフリマの魅力なんだな。
そんなわけで私も一区画を借りて出店しました。
私の主な出品物は、使用しなくなったパソコンソフト(マック対応)とか、古いTVゲームソフトとか、音楽CDとか。
それから試しに、余っているゲームブックも60冊ばかり出品してみました。
内容は創元推理文庫、社会思想社、双葉文庫のものが中心。売値設定は一冊300円均一。
まあ、売りにだすのはどれもトリプッて(同じものを3冊以上所有しているの意)いるゲームブックばかりなので、本当は一冊100円で売っても惜しくはないのですけどね。
でも、最近は古本屋でもそれくらいの値段はするし、ネットオークションとかへの転売目的で買われたら嫌だったので、この売値としました。奥さんには「300円って誰が買うの?あんた本当は売る気ないんでしょ」と突っ込まれましたが。

フリマ開始時間は朝の9時半からスタート。さて、一般のお客さんを相手に果たしてゲームブックは売れるのでしょうか?

続く


2003年10月18日(土) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その11

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


こうしてナイトランドへの到着を果たした俺達は、女王の寝所に辿りついた。
いまにも女王の胸に短剣を突きたてようとしていたダークは、そのままの姿勢で文句を言ってきた。
「貴様ら、遅いじゃないか」
こうしてダークとの二度目の死闘が始まった。そしてさっきと同じような展開のあと、再びワープのシーンへ。
頼むぜ跳航機。今度こそあそこの世界にいくんだ。

(ここで運試し。今度はなんとか成功)

ポンッ、と音がして俺達が辿りついた先は・・・。
どこかの家の小さなリビングだった。
よく見ると、中央部にパソコンが一台据え置いてあり、その前でカタカタとなにやら一心に文字を打ち込んでいる男がいた。
男は突如出現した俺達に気が付いて、ギョっとした様子だった。
「な・・・なんだ君達は」
「お願いですが」
俺は彼に向かって、つとめて冷静に言った。
「この日記。冒険の結末を書かないでもらいたいんです。山口プリンさん」
山口プリンは、まだ動揺から立ち直っていない様子だ。
「な、な、な、なにを言っているんだ。本来、お前らは私のところじゃなくて、作者の樋口明雄にストーリーを変えてもらうよう頼みにいく(というより脅しに行く)という展開のはずでしょうが」
「そうなんですけど、やっぱあの最後のどんでん返しは日記で書いちゃいけないと思って」
「あのオチは“超時空パイレーツ”の最大の面白さですからね」
「そうそう。いくら“ネタバレ注意!”なんて書いていても、完全にネタをばらしちゃマズイでしょう」
「お、お前らなぁ〜。樋口明雄はおろか、日記の管理人の俺までコケにするかぁ」
「まあまあ、いいじゃないの」
「あんたもなんだかんだで、この作品のノリが気に入っていたみたいだし」
「あんまりごねていると、奥さんにチクっちゃうよ。あんたが辞めていたはずのパチンコに、この前行っていたこととか」
「ギャーーーー、それはやめてくれ。わかった、要求に従うから!」

というわけでこの冒険は、城西高校映画研究会の見事な活躍によって解決したのであった。
彼らの冒険の真の結末は、あなた自身でこのゲームブックを入手して確かめて欲しい。


2003年10月17日(金) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その10

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)

ナイトランドに到着した俺達は、病気の女王のもとへ参上するべく城を駆け走った。
あと一歩だ。女王に薬を飲ませれば、俺達は億万長者なのだ。

そして女王の寝所に辿りついた俺達が見たものは。
ベットに寝ている女王の胸に、今まさに短剣を突き刺そうとしている悪の魔法使い、ダークの姿だった。
「待てっ、ダーク。俺達がきたからにはお前の思い通りにはならんぞ!」
ダークは振り返ってこちらを見ると、嘲笑した。
「バカめ、私は世界中のヒーローを研究しつくしている。お前達がどうあがこうと、正義の味方は悪の私には勝てんのだ」
「なぁにが、正義の味方じゃい!俺達は金の為にやってるんだ」
思わず本音を言ってから、俺達が3人は光の剣を振りかざして突進した。
「どりゃーーーー!」
俺の入魂の一撃は、惜しくも外れ。だが和哉の剣が、ダークの胸を切り裂く!
なのにダークの余裕の表情は変わらなかった。
「ヌハハハハハ!効かぬわ」
ダークの指先から炎が吹きだし、俺達を包み込んだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔力の大半は、光の剣が吸い取ったものの、すごいダメージだ。このままでは勝てない!
そのとき、俺にアイデアが閃いた。
「おい、和哉、進、なんじゃもんじゃ、一旦撤退だ!」
俺の合図に、みんな揃って跳航機に飛び乗る。あっけにとられたダークが叫んだ。
「貴様ら、逃げる気か」
「ダークのおっさん、ちょっとタンマだ。すぐ戻ってくる!」
俺はそういい残すと、ある時空目掛けてワープした!

(ここで運試しをするようになっていた。しかし・・・)

失敗だ!俺達はまた跳航機や、なんじゃもんじゃと離れ離れになってしまった。
気がつくと、そこは一面が桜の花が咲きみだれ、人々が酔っ払う巨大宴会場。
「うわぁぁぁぁ、またさっきの世界に戻ったのかい!」
「跳航機探し(ゲーム中盤)からやり直しかよ!」
いくら怒ってもしょうがない。俺達はクライマックス直前で、7つの世界に戻ってしまったのだ。
そしてナイトランドに行くアイテムを再び揃える為に、現実時間で実に2時間もの間、運任せのワープに翻弄されながら、同じ冒険を繰り返すのであった。
ええかげんにせーよ。

続く


2003年10月16日(木) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その9

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)

やっとのことで、銀の鍵を手に入れた俺達。
「ふぅ、これで例の鍵が開けられるな」
「そうそう、さっさとあそこの世界にワープしようぜ」
甘かった。望みどおりにワープできれば苦労しないのだ。
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!(現実時間で約15分経過)
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!(現実時間で約30分経過)
そして辿り着いた先は、地下都市エルドラド。
モビルスーツを装着して襲ってくるおっさん(もう突っ込む気力もない・・・)を倒した俺達は、とうとう時空を旅する“跳航機”を取り返したのだ。
「さて、残る問題はなんじゃもんじゃを探し出すことだな」
俺がそうつぶやくと、和哉もうんうんとうなずいた。
「もう場所はわかっているけどな。次はあの都市にワープしなくてはいかん」
進もまったくだ、というように賛同する。
「いっそのこと、マタタビかカツオブシで呼ぶことはできないものかなぁ」

一瞬の沈黙。俺達は顔を見合わせる。
「おい、今、なんと言った」
「なにって、マタタビか、かつお・・・・・・ぶし・・・」

目の前の壁をぶち破って無用ノ介が飛び出してきた。
「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ─────っ」
「うわわぁ。またかよ、逃げろぉ!」
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!(現実時間で約20分経過)
ワープ!
やっと、なんじゃもんじゃを捕まえる事ができた。
「みなさん、どこに行っていたのですか」
「そりゃ、こっちのセリフじゃい!とっとと案内してくれ、ナイトランドに」
こうして俺達は8番目の世界、ナイトランドに向かって、改めて跳航機を走らせたのだった。

続く


2003年10月15日(水) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その8

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


俺達のワープの旅は続く。

中世風の世界の闘技場で、サーベルタイガーと対決する俺達。ワープ!

格闘ファンの集う世界を、(意味もなく)女になってさまよう俺達。ワープ!

宮沢賢治と、宮本武蔵と、日本昔話と、白鯨の小説がごっちゃになった世界(どんな世界だ?)を旅する俺達。ワープ!

「おい、いったい俺達はどこを歩いているんだ?」
「考えるな。ここは俺達の知っている世界とは(以下略)」
俺達は夢の中にいるような不条理な世界を果敢に冒険し、白い宝珠や金の鍵などのアイテムを着実に収集していった。
しかし、ここで話しは降着状態に陥った。重要アイテムのうち「銀の鍵」だけが見つからないのだ。
原因はわかっている。俺達は、これまでに十数回目のワープをして同じ世界に何度も到着しているのだが、7つの世界のうち、ある一つの世界だけは、未だに到達していないのだ。
銀の鍵はきっとその世界のどこかにあるに決まっている。
でもワープは運任せなので、ワープする度に6分の1の可能性に賭けるしかない。
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
ワープ!
俺達は恐るべき事態にやっと気がついた。いくらやっても運がないときは駄目なのだ!
そしてさらにはターミネーターのように恐るべき敵の姿も・・・・・・。

あるときは、江戸時代と地下鉄のあった最初の世界にやってきた。
すると、見覚えのある姿が─────。
「見つけたぞ。今度こそ切り捨ててくれるわっ。そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ─────っ」
「うわぁ、無用ノ介に見つかった!!逃げろ」

ワープ!

ひたすら桜の広がる、宴会場の世界。
「おい、あのおっさん炭坑節を歌っているな」
「まて、今、なんと言った?」
「なにって、たんこう・・・・・・ぶし・・・」
桜の花がパアっと散って無用ノ介が飛び出してくる。
「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ─────っ」
「うわわわわぁぁぁぁぁ。逃げろぉ!」

ワープ!

「あなたのおかげで殺人事件が解決しましたわ」
「いやぁ、たいしたことはありません」
夕日をみつめながら、赤毛の女の子と砂漠を走る蒸気船の上でたたずむ俺達。
そのとき地平線の彼方から、小さな人影が。
「・・・・・・そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ─────っ」
「無用ノ介だ!」
「逃げろ!」

どこの世界に行っても襲ってくる無用ノ介。必死に逃げ回りながら、求める世界に辿り着いて、「銀の鍵」を入手できたのは30回目をこえるワープの後だった。

続く


2003年10月14日(火) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その7

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


どこかの地下室で縛られている俺達に向かって、その男(次元盗賊というらしい)はニヒルに笑った。
「さるお方に頼まれてな。さあ、タカムラアルファを出してもらおうか」
「なにおぅ、そんなことは絶対にできん!」
俺は決然とした表情を見せて答えた。一生遊ぶほどの金をみすみす逃せるものかい。
「ふっふっふっ、ならば拷問で喋ってもらうしかないな」
次元盗賊は俺に向かって、ドリルを向けた。

ギャイィーーーーーーン!

俺は絶叫をあげた。仲間も思わず叫ぶ。
「大丈夫か、一平ィ!」
「大丈夫なもんか、そこの歯は虫歯じゃなぃぃぃぃぃぃぃ」
次元盗賊は含み笑いをして、歯の治療用ドリルを止めた。
「さあ、喋る気になったかね」
「わ、わかった」
俺達はついに薬を手渡した。本物かと、じっと薬を確かめる次元盗賊。
チャンスだ!俺達は手を縛っていたロープを切って、飛び掛った。
「どりゃーーッ、喰らえ。ジャーマンスープレックス!」
暫しの格闘の末、床にのびた次元盗賊から薬を取り戻した俺達は脱出に成功した。
そのとき、またあの感覚が。
ワープ!

続く


2003年10月13日(月) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その6

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


次に俺たちが現れたのは、高層ビルが立ち並ぶ深夜の大都会だった。
遠目には、ビルの明かり達がきらめいて実に幻想的な美しさだ。
ただ、道路を歩いてみると住民の姿がまったく見えない。時間帯のせいだろうか?とにかく不思議な世界である。
カツーーン、カツーーン。と、俺達の靴音だけが響く。
いや。違う。
耳に神経を集中すると、ほかの音も聞こえる。気のせいではない。
誰かが俺達の後をつけているようだ。
「おい、逃げるぞ」
俺は和哉達に囁くと、脱兎のごとく走りはじめた。
謎の人間も今度ははっきりとした足音を響かせながら、走ってくる。
俺達は道端に停車してあった車に飛び込んだ。そしてアクセルと踏み込むと、猛然と高速道路を走り始めた。背後からは正体不明の車が追ってくる。
(注:なぜ都合よく鍵つきの車があるのか?高校生が運転できるのか?そもそも今まで高速道路を歩いていたのか?などと考えるのは、本書の正しい読み方ではないのであしからず)
猛然とカーチェスを続けるうちに、相手車両は派手なスピンをして脱落する。
この隙に俺達はビルの一軒に逃げ込むことにした。
物陰で隠れて待ち伏せる俺達。
しかし謎の人物は、銃を向けて渋い声でこう言った。
「隠れているのはわかっている。あきらめて出てくるんだな」
こうして俺達は捕まったのだった。

続く


2003年10月12日(日) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その5

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


ワアアアアアアァァァァァァァァ!
と、ワープした先はなぜか花見の会場だった。
サラリーマンが一気飲みする姿や、「農協」と書いた旗の傍で踊る人の姿などが、あちこちに見られ、みんなてんで勝手に騒いでいる。
「ギャハハハハハ!」
「それいっき、いっき、いっき」
俺達は呆然とその光景を眺めた。なぜならそれは見渡す限り同じ光景のもので、延々と続いているように見えたからだ。
「なんじゃあ、この世界は」
「考えるな、ここは俺達の(以下略)」
そのうち酔っ払いにからまれたりする。
「お兄ちゃん達も飲みなさいよぉ」
「いや、我々は未成年だし」
すると社長らしき、おっさんがすっくと立ち上がって叫んだ。
「なにおぉ、我が社を愚弄する気か。社員達よ、あいつらを取り押さえろ。失敗すれば夏のボーナスはないと思え!」
いきなり戦闘。俺達は飛び掛かるサラリーマン達を相手に、バックドロップ、レインボーキック、電気あんまで全員を撃退する。
最後に残った社長はガタガタと震えながら、ナイトランドへ行く手がかりを教えてくれた。
そうこうする内にまた例の感覚が始まった。
ワープ!

*補足*
ちなみにこのワープの行き先は6箇所あり、毎回唐突にどこかの世界へランダムに移動するシステムになっている。
つまり俺達は(その出発点の世界を含め)7つの世界を何度も飛びまわってナイトランドへの道を、探さなければならないわけだ。まったく、面倒くさい話しである。

続く


2003年10月11日(土) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その4

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)

侍は黙って電車の座席に腰掛けている。黙祷しているようにも見える。
その胸元には赤い宝珠がかかっていた。
「ちょっと侍には派手なアクセサリーだねぇ」
つい余計なことを言ってしまった。侍のまゆげがピクリと上がる。
「おのれ、武士を愚弄する気か」
怒りのこもった動作で侍が立ち上がると、宝珠がコロリと床に落ちて転がった。
ラッキー、いただいちゃえ。
俺達は素早く宝珠をひったくって逃げ出した。
「おのれ、おのれ、おのれ、おのれ、おのれ、おのれーーっ」
侍が刀を振り回しながら追いかけてくる。
俺達は地上まで逃げ出して息が切れるまで走った。町人の祭りの傍を通り抜けてやっと侍を巻く事ができた。
「ハァハァ、しつこい武士だったぜぇぜぇぜぇ」
すると、傍の白壁がドッカーーーンと崩れ落ちた。割れ目の向こう側にはさっきの侍がいた。
「ギャーー!しつこい奴だぜ」
「それがしは流浪無用の介。武士と呼べばいつでも現れようぞっ。そりゃそりゃそりゃそりゃーーーーーーっ」
刀をブンブン振り回しながら、追いかける無用の介から必死に逃げる俺達。

そのとき俺達に、いきなり次元を旅するあの感覚が呼び戻ってきた。
ワアアアアアアァァァァァァァァ!
俺達は赤い宝珠を握り締めたまま、またワープしてしまったのだ。

続く


2003年10月10日(金) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その3

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)

「うわああああぁぁぁぁあ!!」
と、俺達はどこかの時空に落ちていき、ポンッと間抜けな音と共に道路に投げ出されたのであった。
「いったいどこなんだ。ここは」
立っている場所は土の長い道路。その両側には、長い白壁がずぅーっと続いていた。塀の上には松の木が見える。
とりあえず、この道を歩くべきか迷ったが、この世界の様子を確かめる為に白壁をよじ登ってみた。
すると、広い日本庭園が見えた。その先には立派な屋敷があって、ちょんまげ姿の男が2人話しこんでいるようだ。
「お代官様も相当な悪人で」
「なんのなんの南野陽子(あぁ、双葉ゲームブックらしい)。上州屋にはかなわぬよ」
ふたりはそう言ってのぞけって笑いはじめた。
なんか俺、まずいものを見ているのかな。
そう思ったとき、ふたりが塀の上にいる俺達に目を向けた。
「な、何者だ。貴様らぁ!」
「曲者だっ、皆のもの!狼藉者がここにおる。出会え出会えーーーーーーっ」
代官らしき男が叫ぶと、屋敷や庭石の影から忍者達が次々と飛び出して、襲い掛かってきた。
「なんだかよくわからんが、やばい!逃げるぞ」
俺達は屋敷から飛び出して道をひた走る。すると、今度は御用取りが提灯を手に追いかけてきた。
「御用だ。御用だ。御用だ」
必死に走りつづけると、前方に工事中の札とマンホール。そして公衆電話が見えた。
「なんだって、江戸時代にこんなものがあるんだ!」
「いいからマンホールに飛び込め。ここは俺達の世界とは違うんだ」
マンホールに潜り込んで、難をかわした俺達が辿りついた先は・・・・・・地下鉄だった。無機質なアナウンスがホームに響いている。
「代官所前ェ、代官所前ェ」
「なんだってこんなところに(以下略)」
「考えるな。ここは俺達の(以下略)」
「出発します。えー、次は、大名屋敷前ェ、大名屋敷前ェ」
アナウンスに促されるように電車に乗り込むと、そこには他には侍が1人腰掛けていた。

続く


2003年10月09日(木) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その2

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


その巨大な猫、なんじゃもんじゃは俺達にこう言った。
「ナイトランドは、パラレルワールドとも言われる沢山の世界の一つなのです。ナイトランドには妖精たちが住み、シンディという女王がこの世界を平和に治めていたのです。ところが闇の世界からやってきたダークという男が、女王に毒薬を飲ませてしまいました。今、女王は刻々と死に向かっているのです」
「それで俺達はどうしたらいいんだ?」
「必要なのは高村さまのお父上の作った薬“タカムラアルファ”です。あの薬が女王の病を治療する唯一の薬なのです。それを女王さまの元に届けるのです」
「なに。親父が作ったあんな薬が役に立つのか!」
和哉が思わず叫んだ。
無理もない。いかに薬剤師の和哉の親父が作ったとは言え、あれは単なる風邪薬のはず。しかも、飲んだ患者が慢性の下痢をおこしたという曰くつきの一品なのだ。
まあ、それはいいだろう。大事なのは和哉の家から、薬をちょろまかしてナイトランドに運ぶということだ。
なんだ、こいつは思ったより簡単な仕事になりそうだ。

さっそく和哉が親父の研究室から“タカムラアルファ”を盗み出してきた。
ふっふっふっ、やはり簡単なものだ。
なんじゃもんじゃは魔法の絨毯のようなものを空中に浮かべて待っていた。この絨毯は時空を正確に旅することができる“跳航機”というものだそうだ。
「なにを笑っているのですか。出発しますよ」
なんじゃもんじゃは、時空を旅できるようになるという丸薬を差し出した。
俺達はうなずくと薬を飲み、絨毯にのりこむと、ナイトランドへ向かって出発した。
奇妙にかん高い音と共に周りの景色が一変する。
同時に凄まじいまでの“G”が俺達の体を襲う。まるで吹き飛ばされそうな勢いだ。
「どっっっしぇぇぇ───っ!」
そのとき、なんじゃもんじゃが叫んだ。
「しまった。重量オーバーだ」
「それを早く言えええええええぇぇぇぇぇ・・・・・・」
俺達は風に飛ばされた木の葉のように跳航機から落ち、時空のどこかに飛ばされてしまった。

続く


2003年10月08日(水) 超時空パイレーツ おみそれ3人組の冒険(樋口明雄/双葉文庫) その1

(ネタバレ注意!この作品をまだプレイしていない方は読まないで下さい。脱力して腰が抜けます)


城西高校映画研究会の俺達3人組(竹林一平、高村和哉、小川進)はピンチを迎えていた。
「だから、だな!今度の文化祭に出展する映画が作れないとこの部は取り潰しだ。それを避ける為には、まず映画を作る金が!資金がいるんだ!」
と、俺(竹林一平)の叫びも虚しく響く。
こうして今日も、実りの無い部会が終わり、俺達はカバンを持って帰り支度を始めたのだった。
事件はそんな帰り道、学校の校庭から始まった。
校庭のフェンスの隅から、もごもごと丸まっていた体を起こして、身長2メートルはあろうかという巨大な猫が俺達の前にやってきたのだ。
そいつは硬直する俺達に向かって馬鹿丁寧にお辞儀をした後、名刺を差し出した。
「私、ナイトランド時空宅急便株式会社 営業部長のなんじゃもんじゃと申します」
「行こう行こう」
我に返った俺達は、猫を無視して再び校庭を歩き始めた。
まったく。ドッキリカメラなんかにひっかかっている程、俺達は暇じゃないぜ。
そのとき猫がこう言った。
「あのう・・・。あなたたちお金が欲しいのでしょう?」
ピクッ。
「我が異世界の国、ナイトランドの女王を救って下さったあかつきには、多額の賞金が出るでしょう」
ピクッピクッ。
「一生遊んで暮らせるだけの───オ、カ、ネ、です」
俺達は猫にとびかかった。
「がおおおおお!」
「俺達は、何をすればいいんだ!」
「お、落ち着け」
俺はわめき散らす和也と進を制して、不適な笑みを浮かべた。
悪くないぜ。映研を復活させ、文化祭に映画を出品し、なおかつ無限にあまる報償金。
「ゆくぞ、みんな!」
「ファイトォ、エイエイオォォーー!」
俺達は手を重ねあい、掛け声をあげた。こうして冒険は始まったのだった。

続く


2003年10月07日(火) 13人目の探偵士(山口雅也/講談社)

やー、やっと注文していた本が届きました。本の名前は「13人目の探偵士」です。

えっ、どんな本かって?ああ、少し説明しましょう。
かつてJJCC出版局から発売された、「13人目の名探偵」というゲームブックがありました。
私はこの本を読んでいませんが(所有はしていますけど)、ネット上の評判によればゲームブックの特徴を生かした推理ゲームブックの名作と言われており、なかなか評価が高いようです。
そして「13人目の探偵士」は、この作品を加筆修正のうえ去年の夏に再版されていたもので、現在でも新書で入手可能という、貴重なゲームブックなのですねー。
いやぁ、新書のゲームブックをプレイするのは気持ちいいなぁ。






・・・・・・と、紹介するつもりだったのに。
なぜだ!読んで見ると普通の推理小説になっているではないかぁ!
後書きを読んで見ると、どうも著者の山口雅也さんはゲームブックに全然まったくちぃーとも興味がなかった様子。
それで加筆修正の際に、一般の人にも読みやすいようにパラグラフ移動の要素をなくしてしまったそうです。
余計な事を。
「13人目の名探偵」が名作とされている理由は、本当は普通のミステリ小説を書きたかった著者が、ゲームブックの特徴を活かしつつ、本格ミステリを書くことを心がけたからだとは思うのですが、どうにも今回の後書きからは著者のゲームブックに対する冷めた見方が伝わってきてやな感じです。
もう本文を読む気がまったく失せましたです。ハイ。


2003年10月06日(月) 彼のハートにおまじない(樹かりん/双葉文庫) その5

<おまけ>

そうそう。この作品の重要なポイントにタイトルにもある“おまじない”がありました。
大占術奥義之書を探す麗香の前には、いろいろ悩みを抱えた人々が登場するのですが、彼女は全部おまじないで解決しちゃうのですね。(占い師なら占いで解決してもいい気がするけど)
どんな“おまじない”があるかちょっと抜粋してみます。


*彼への愛の告白を成功させるおまじない*
まず、厚紙を持ちやすい大きさに切り取ってね。そうしたら、その厚紙にダビテの記号を書くの。それを持って告白してみて。

*彼への愛の告白を成功させるおまじない その2*
彼の影を踏んで、愛の呪文を心の中でとなえるの。
「カフェ・カシタ・ノン・カフェラ・エト・フブリエ・フィリエ・オムニブス・スイス」
そしてね、彼の目を見ながら「スキ」と小声でつぶやいてみて。

*悩みを取り払うおまじない*
クシで髪をとかしながら、願をかけてみて。
髪をとかすことは、「クシけずる」といって、苦と死を削ることになるの。

*イジメ撃退のおまじない*
タロットカードの“戦車”のカードを取り出して、カードに描かれた勇者アポロンに向かってお祈りするの。
そしてこのカードはお守りにしてね。

*イジメ撃退のおまじない その2*
晴れた日に、いじめる人の影の真ん中を、気づかれないようにそーっと足でつついてみて。
あとは相手の言うことを聞かないようにすれば、きっとイジメはなくなるはず。

*喧嘩した彼と仲直りする方法*
手鏡にリップクリームで月の女神のシンボル(イラストでは“IS☆IS”みたいな感じ)を描くの。そしてその手鏡を使ってリップクリームをぬってね。
そのとき軽く目を閉じて「月の女神イシスさま、どうぞあなたの愛の光で、迷った彼の心を私に導いてください」と祈ってみて。

*ストーカーに効くおまじない*
紙に人の形を描いて、嫌いな男の子の名前を書いてね。
次にその紙で船を作って、水に浮かべるの。
そして、土や小石を少しずつ船の中にまき、ゆっくり沈めてみて。
これで大嫌いな彼はあなたから離れていくハズよ!


うーむ。さすがペパーミントゲームブック。乙女の世界だ。
作品の中ではこれらのおまじないが百発百中で成功するから恐ろしい。
この世界の男性達はたまったものじゃない気もします。
飛鳥君みたいに、心をガードして対抗する方法もあるみたいですが、ここまでくるともはや魔法か呪いの世界ですね。


2003年10月05日(日) 彼のハートにおまじない(樹かりん/双葉文庫) その4

話も終盤に差し掛かって、いろいろなドラマが発生します。
マリィの正体。
飛鳥君の裏切り。
ろくろっ組のボス、幻城寺美影の真実。
そして大占術奥義之書の正体とは──。

などと書くと凄そうですけど、どうにもストーリーが行き当たりばったりに展開している気がします。
大半の選択誌はそれほど重要でないものか、常識的に行動すれば問題のないものばかり。
読者の入る余地があまりないですな。
そもそもの始まりだったマリィとの対決が、途中でなし崩しに消滅してしまったのはなんだかなー。
とりあえず代わりにろくろっ組のボス、幻城寺美影との戦いが最後の山場となります。
相手の心を読み合う凄まじい思念力の戦いの末に麗香が勝利。
麗香も飛鳥君もマリィも幻城寺美影もみんな仲良くハッピーエンドです。
めでたしめでたし。



<追伸>
おい、これ超能力者じゃなくて占い師の物語じゃなかったのか?


2003年10月04日(土) 彼のハートにおまじない(樹かりん/双葉文庫) その3

話しによると大占術奥義之書は全部で6冊もあるそうです。
おばあちゃんからもらったヒントを元に、麗香は全ての大占術奥義之書を捜し出さねばなりません。
さらには6人の人間をおまじないの力で、幸せに導いてあげないといけないのだそうで、なかなか今回の使命は条件が厳しいです。
しかし悪い事ばかりでもありません。なんとなんと!
「俺も麗香の手伝いをしていいかな?」
飛鳥君が、途中から大占術奥義之書探しの協力を申し出たのです。
もちろん麗香は大喜び。この時点でマリィとの勝負はついた気もするのですが、飛鳥君と2人で東京中を西へ東へと駆け回ります。
「ろくろっ組」の連中も黙っているわけではなく、ゾンビやらキョンシー(懐かしい・・・)やらの手下を繰り出して邪魔してきますが、愛の力にはかないません。あらあら、東京ディズニーランドでは飛鳥君とキスなんかしちゃってますよ。

苦労の末、やっと発見した大占術奥義之書はどれも思わぬところにありました。
プラネタリウム、池袋のサンシャインビル、横浜中華街、東京ディズニーランドのシンデレラ城などなど。
ずいぶん威厳がないところではあります。というか、どれも飛鳥君とのデートスポットみたいです。
それにしても渋谷の忠犬ハチコウが、大占術奥義之書をくわえていたときは驚きました。通行人の冷たい視線をあびながら、泣く泣く銅像によじ登って取ったのですが、バラエティー番組のスタッフでも考え付かない隠し場所です。恐るべき占い界であります。
こうして麗香は順調に大占術奥義之書を収集していったのでした。

続く


2003年10月03日(金) 彼のハートにおまじない(樹かりん/双葉文庫) その2

勝負を受けたのはいいのですが、残念ながら占いの実力は五分と五分。もしくはややマリィの方が勝っているようです。
勝負の日は来週に決まりました。それまでに、なんとか対策を練らなくてはなりません。
そんなふうに麗香が悩みながら家に帰ると、おばあちゃんが階段を転げるように下りてきました。
「麗香!大占術奥義之書を探すのじゃ!」
あっけにとられた麗香が話しを聞くと、どうも最近体調を崩している麗香のママ、ノストラレディに替わって、占い界のドンを目指そうとしている占い組織があるそうです。
その名も「ろくろっ組」。とにかく金儲け主義の薄汚い連中らしい。
麗香が占いの全てがわかるという「大占術奥義之書」を探し、それを読むことができれば、麗香が新しいノストラレディとして彼らに対抗することができるというのです。
「チャンス!その大占術奥義之書があれば、マリィとの占い対決にも勝つ事ができるわ!」
麗香、大喜び。
そんな都合のいい展開があるかい!と全て反対の選択肢を選んでも無駄です。
どう進めても運命の導くまま、麗香は翌朝から「大占術奥義之書」を捜し求めて奔走することになるのでした。

続く


2003年10月02日(木) 彼のハートにおまじない(樹かりん/双葉文庫) その1

冒険記録日誌ではもはやお馴染み、ペパーミントシリーズの一冊です。
作者はペパーミントシリーズをもっとも多く書いている樹かりんさん。
個人的に「死神君は恋のジャマ」なんかは、かなり気に入っていたので、この作品も期待していたのですが・・・・・・さてどうなることやら。

主人公の女の子は、占い界の第一人者ノストラレディの娘。野須麗香。
おまじないの達人だったりします。
さらに飛鳥徹という同級生の男の子に片思い中。これはペパーミントシリーズの基本中の基本設定ですね。
さて、そんな麗香の前にあらわれたのは転校生の阿久野真里子、通称マリィ。
彼女はなんと麗香以上の占いの実力をもっている超美人。そんな彼女が麗香に戦線布告をします。
「飛鳥君をかけて、あなたに占い勝負を申し込みます。負けたほうは、飛鳥君からいっさい手を引くということよ。わかったわね!」
わかりません。さっぱりわかりません。どうしていきなり占い勝負ですか?飛鳥君の気持ちは関係ないのでしょうか?
しかし、麗香もマリィの気にのまれてしまったようです。どう選択しようが、結局勝負を受ける事になってしまいます。

続く


2003年10月01日(水) 大きな動き

重鎮の言っていた「大きな動き」とは、携帯電話でファイティングファンタジーをプレイできるってことだったのね。んー、そうなのか。という感じだった。
私が少し聞きかじっていた情報とは違っていたようだ。
まあ、先に剣社通信でソーサリーでも同じ計画があることを知ってしまったから、ビックリしないのは不思議ではない。
でも、あんまり喜べないのは私が携帯電話を持っていないことでもなく(いや、それもあるかもしれないけど)、「大きな動き」が本としてのゲームブックの話題ではなかったことだな。
私にとっては、自分がファイティングファンタジーシリーズのファンではなく、あくまでゲームと本の融合であるゲームブックそのもののファンだと再認識した情報だった。

余談だが携帯版ファイティングファンタジーは、難易度などを緩和しているのだろうか。
本と違ってズルができないから、まともな移植だとかなり辛いと思うぞ。


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