酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2007年03月30日(金) 『京都迷宮事件簿 薄い月』 海月ルイ

 フリーライターの夏目潤子が警察の【見当たり捜査】を取材する。指名手配犯を自分の眼で見つけ出すというアナログで地道な捜査。絶対にアタリをはずさない男・稲垣にはりついた潤子は、稲垣の様子からアタリであるはずのターゲットを見逃したと感じた。何故、稲垣はアタリを見逃したのか。

 夏目潤子シリーズの第2弾です。これはスゴク面白いシリーズになっていく気がします。潤子の抱えるものが今回あきらかになっていき、事件とともに非常に面白い展開となっていました。京都を舞台にすればいいってもんじゃない。これくらいの力を見せていただくと楽しくて仕方ないです。

『京都迷宮事件簿 薄い月』 2007.2.28. 海月ルイ 徳間書店



2007年03月29日(木) 『千里眼の水晶体』 松岡圭祐

 美由紀ちゃんが立ち向かうは生物化学兵器。美人で強くて何でも出来る美由紀ちゃんの知識の幅広さには驚かされます・・・。今回の相手は生まれていた生物化学兵器。高温でなければ活性化しないと放置されていたものが、近年の亜熱帯化で蠢き始め・・・という、相変わらずありえそうな今そこにある危機なのでリアルに怖いのですよね。親友のために最後まであきらめない美由紀ちゃんはすごいです。



2007年03月28日(水) 『千里眼 ファントム・クォーター』 松岡圭祐

 その繊維を使用すると【見えなくなる】・・・そんなものを被らせた兵器が日本に向った時、日本は!? なーんて相変わらず恐ろしく国際的規模な事件に美由紀ちゃんが立ち向かいます。たったひとりで。これはまさしくジャパニーズ・ダイ・ハードだわー(笑)。日本を狙うテロと一人の傷ついた女性。美由紀はどちらにたいしても持てる力を惜しまない。無償の女。不思議な人だ。つるっと読めて面白かったです。



2007年03月26日(月) 『四文字の殺意』 夏樹静子

 「ひめごと」「ほころび」「ぬれぎぬ」「うらぐち」「やぶへび」「あやまち」という6つの四文字の言葉の物語たち。うーん、ウマイ。夏樹静子さんはすごいなぁ。四文字の言葉にちなんだ殺人事件が発生しますが、言葉の意味の裏にいくつも顔があるのです。短編でここまで綺麗に入れ込めるってスゴイ。中には筋が読める展開もありますが、ドラマ見てるみたいです。2時間もののサスペンスドラマの原作にぴったりですわー。

『四文字の殺意』 2007.2.15. 夏樹静子 文藝春秋



2007年03月25日(日) 『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦

 いろんなところで評判の高い本なので読んでみました。これがなかなか面白い。さすがに評判通り! 京都の街で繰りひろげられる出会いやすれ違いやストーキング(?)・・・アハハ。妙な展開がストンストンと散らばって、最後に綺麗に纏め上げられるのですよ。こういう不思議でみょうちくりんな出会いって若さの特権だよなぁ。脇の変な大人でいいから登場したい感じ。さすがにタフな若者にはなれないし。若さって体力だー。いやぁ、今の私は鯨飲できないもん(意味不明?)。

「しかし君は飲むのう。本当に底が知れんね」
社長さんに言われました。「君、いったいどれくらい飲むの」
私はむんと胸を張ります。「そこにお酒のあるかぎり

『夜は短し歩けよ乙女』 2006.11.30. 森見登美彦 角川書店



2007年03月24日(土) 『片目の猿』 道尾秀介

 俺(三梨幸一郎)は私立探偵。今は産業スパイを突き止めるために、とある企業に潜入捜査中。仕事をするうちに少しだけ心が動く予感がした。秋絵が死んでからの七年間ずっと冷え切っていた自分の感情が、ちょっとだけ人間らしくなってくれるかもしれない。そして少し心が動いたのはよかったのだが、・・・とんでもない現場を「目撃」する羽目になり・・・!?

 面白かった! すっかりと素直にヤラレタ自分が笑えてしまうくらいに見事みごと。これは読んで欲しい物語だなぁ。いろんな要素が盛り込まれてるケレドモ、最後の爽快感はたまらないものがありました。次々とページをめくらずにはいられない面白さっていうのは感動だー。うおー(喜)。オススメです。

犬はな、鼻が大きいんだ。犬ってのは、顔の半分が鼻なんだよ

『片目の猿』 2007.2.25. 道尾秀介 新潮社



2007年03月21日(水) 『麦の海に沈む果実』 恩田陸

 読むべき新刊は山とあると言うのに恩田陸に浸っている。恩田陸と言う作家さんはデビュー作の『六番目の小夜子』からずっとものすごく好き。このまま行けば私は死ぬ時に一番好きな作家は恩田陸だと言うのかもしれないな。なんと言うのか、トンデモナイ不気味さが美しくて、どこかに迷い込まされてしまう。そのゾクゾクさせられる感がたまらないのですよね。根底にホラーが流れているからかもしれないなぁ。郷愁を感じさせる残酷な陰湿なブラック感。それでいてライトに割り切る部分も多分にあるし・・・何度読んでも引き込まれてしまう。いつまでも恩田陸と言う文字の海を漂っていたい。遭難したってかまわないー。スキー。
 『図書室の海』を読んでいるとスゴク面白い。ちょっとした前宣みたいな感じで短い物語を描いておいて、あとからがっつりどっぷり書き込んで読ませてくださる。物語がどこかで繋がっていたり、「あれ?これって・・・?」と言う感覚がひょいひょい頭をよぎるのです。何度も何度も読んでいると「あ、これはアレだったんだー」ってあらためて気づけたり。キラキラした光物をあちらにこちらに贅沢に散りばめてくれているから、再読にもたまらない快感を与えてくれます。大絶賛だわ。
 この『麦の海に沈む果実』は美少女・理瀬が迷い込んだ閉鎖された学園で起きる不思議な出来事の数々にどきどきわくわくはらはらしちゃいます。憂理という少女(彼女もまた別の物語のヒロイン)が今までは一番好きだったのですケレドモ、今回は麗子にやられてしまったわ。いつか麗子をメインに描いてもらえないかしら(願)。しかし・・・何度読んでも、結末は知っているのに、驚かされてしまうのよねぇ。すごい力だ。神業ですね。

『麦の海に沈む果実』 2004.1.15. 恩田陸 講談社文庫



2007年03月16日(金) 『警官倶楽部』 大倉崇裕

 ヲタクでマニアな輩が集まって警官倶楽部を作った。そして事件を起こしたり(笑)、解決したり。なんだかこういう展開は笑えて楽しいです。明るいマニアっていいなぁ。気軽に楽しめる一冊です。オススメ〜v

『警官倶楽部』 2007.2.20. 大倉崇裕 詳伝社



2007年03月15日(木) 『禁じられた楽園』 恩田陸

 文庫化されたので再読しました。いやぁ、面白かった。やっぱり恩田陸はスペシャルに好きだー(叫)! 3年前に刊行された時よりも数倍楽しんで読めたことはラッキーだったなと思います。何故、数倍も楽しめてしまったのか。それはこの物語の舞台やベースである熊野や神様についてスゴク興味が深くなり、地道に学習しているから。これってそういう素地がある人にはたまらないんじゃないのかしらん。邪悪なヒーロー烏山響一は恩田陸のほかの小説でちょこっと登場してかなりインパクトの強かった人です。なので彼を物語の軸に持ってこられた時にはヤッターと嬉しかったものです。悪の魅力、負の魅力。そういうものも確かに存在しますから・・・。前に読んだ時にはラストの展開に多少疑問があったのですケレドモ、今回はすんなり胸に落ちました。やはり神様について考えていたことが大きかったようです。あ、別に宗教にはまるとかではなく、神社とか神域とかそういう日本古来の場所への興味だったのですね。はい。ただ3年前と同じく、最強キャラが実はアノヒトであることは驚きとともにそうあるべきだなぁと思えます。これは時間を置いてまた読むとまた受けとる感じが違いそうな気がします。文庫化されたこともあって超オススメでーすv

 さあ、新しい恐怖を語れ。

『禁じられた楽園』 2007.3.15. 恩田陸 徳間文庫



2007年03月13日(火) 『晩餐は「檻」のなかで』 関田涙

 タイトルと北見隆さんのイラストに惹かれて関田涙さん初体験をしてみました。このテの物語は私にとっては当たり外れが大きいため、最後まで読み切れるかどうか・・・と思いつつ読み始めてみたのですが、これが面白い! なんか妙な魅力があって不思議に思いつつ迎えたエンディングで妙な魅力の訳に気づかされました。これはウマイ。こういう出会いがあるから、タイトルや装丁の吸引力をあなどれないのですよねぇ。面白かったです。

『晩餐は「檻」のなかで』 2007.2.28. 関田涙 原書房



2007年03月12日(月) 『九月の恋と出会うまで』 松尾由美

 ああ、いいですねー。松尾由美さんのSF恋愛ものはものすごくいい。大好きだ。温かくてココロの芯までほかほかしてくるの。また恋をしたいな。そんな笑顔で読み終えられました。超オススメです。

 中でも今いるあたりの比較的古いビルのほうが、高いところに手が届くのをうれしがっている子供のような素直なエネルギーが感じられて好きだ。

『九月の恋と出会うまで』 2007.2.20. 松尾由美 新潮社



2007年03月11日(日) 『天の陽炎 大正浪漫伝説』 栗本薫

 栗本親分のお好きな大正エロ浪漫であります。華族に嫁いだ美貌の真珠子が荒くれ男に陵辱され、己の女に目覚めていく、と言う物語。親分ホントに好きだよねぇ。読む私も好きだケレドモさ(笑)。ただ、ありがちな物語だし、エロとしても中途半端だし、親分ってば息抜きにつるっとかいちゃった感ありありです。でも売れるんだものなぁ。そりゃぁ親分いい気になるってもんだわー。

あたしの内にも・・・・・・そんなケダモノが潜んで居たんだワ・・・・・・

『天の陽炎 大正浪漫伝説』 2007.2.25. 栗本薫 角川文庫



2007年03月09日(金) DVD『デスパレートな妻たち』シーズン1

 郊外の裕福な住宅街ウィステリア通りでメアリー・アリスが拳銃自殺した。15歳の息子と夫を残して・・・。メアリー・アリスと仲の良かったスーザン、ブリー、リネット、ガブリエルの4人は彼女が何者かに脅迫されていた事を知り、それぞれの多忙な日常を過ごしながら、隣人たちの隠された秘密を知っていき・・・!?

 “妻たち”なんて言葉がタイトルにつくのだから、どーせ不倫とか嫉妬とかそんなもんでしょー・・・みたいな偏見に満ちていた未亡人の私は(笑)、全く観る気なぞありませんでした。が、しかし、なにかについていた宣伝の煽り文句に【あのツイン・ピークスの謎】に匹敵するなどとあり、すっかりのせられてしまったのでありました。えへへへへ。そして観始めた途端に語り手が自殺しちゃうんです。もうまさにいきなりっ!・・・「えええーっ!?」と素直に驚いたが最後すっかりと虜になりました〜。
 スーザンはバツ1の童話作家。可愛いくて出来のいい娘ジュリーと二人で暮らしている。高校時代はチアリーダーだったスーザンは正統派モテ女。欠点は禍を呼ぶ女であるドジな天然であること。ブリーは医者の夫と息子と娘を持つ完璧なカリスマ主婦。家庭もブリー自身もいつも完璧。ガブリエルは貧乏暮らしからはいあがり玉の輿にのった元モデル。夫は何でも買い与えてくれるが、暇を持て余したガブリエルは高校生と関係を持つようになる。リネットはバリバリのキャリアを捨て愛する夫と4人の子どものために専業主婦になった。ちびっこギャングと奮闘しながら愛する夫を繋ぎとめておくために必死に動く。
 ・・・と、まぁ、死んじゃった語り手のメアリー・アリスは別としてヒロイン4人がそんな感じで、不倫に主婦売春に恐喝に薬に同性愛に・・・と、あるわあるわの事件のオンパレード。みんな幸せになりたくて必至に足掻いていて滑稽でいじましくて微笑ましくて。なんとも不思議な物語です。私としてはブラック・コメディかなと言う感じ。スーザンのライバルの色気むんむん女のイーディってのがヤナ奴なのに・・・段々と魅力を感じてしまったからあらら不思議(笑)。トンデモナイ終わり方をしたシーズン1ですが、どうやらシーズン2ではイーディが4人のヒロインに仲間入りできている模様。嬉しいなぁv
 この愛すべき愚かな崖っぷち女たちの中でイーディと同じく最初は嫌いだったのは完璧主義者のブリーでした。なんて言うかツンケンお高くとまっててヤナ女〜って見ていたのですが、シーズン1が終わって一番好きなキャラクターになってしまったことには自分でも驚きでした。超対照的なブリーとイーディが好きです。スーザンとガブリエルは美しいし、馬鹿だし、なんか好き。・・・で問題はリネット。どうもね、こいつだけが合わんかったですよー。なんて言うか痛い。痛すぎる。ある意味、等身大なのかもしれないですね。そんなことを言いながらシーズン2でまた見方や好き嫌いも変わるかもしれませんケレドモ。
 とにかくなにやら楽しいDVDでありました。オススメでーすv



2007年03月06日(火) 『ラスト・イニング』 あさのあつこ

 映画化された『バッテリー』の主人公の少年ふたりのピッチャーとキャッチャー、そのバッテリーに魅せられた天才バッター門脇秀吾、そして幼馴染の瑞垣俊二の“その後”の物語です。あさのあつこさんは脇役であったふたりの少年のこともものすごく愛されたのでしょうね。だから“その後”を描かずにはいられなかった・・・ふたりの少年にも物語を与えてあげたかったのでしょう。このふたりの“その後”を知れただけですごく嬉しく思いました。門脇秀吾も瑞垣俊二もキラキラしていて美しい。この一瞬の季節の輝きを忘れない。汗くさい青春物語にならないところがあさのあつこさんの天才たる所以だと恐れ入りました。

 おまえのことをわかっている。あいつのことを理解している。虫酸が走るほど厭らしい言葉ではないか。人が人を全理解できると信じることの厭らしい傲慢。理解していると豪語することの愚昧。

『ラスト・イニング』 2007.2.14. あさのあつこ 角川書店



2007年03月03日(土) 『千里眼 The Start』 松岡圭祐

 岬美由紀が帰ってきました!・・・と言っても本家の千里眼シリーズをどこまで読んでいるのだったかしらん(忘)。本家シリーズはスケールが大きくスキだったのですケレドモ、途中からあまりにも破天荒になった感があって読まなくなったような気が(忘)。まぁ、いずれにしても岬美由紀リターンズ! 自衛隊のパイロットだった美由紀がアル事件から方向転換。以前とはパラレルな世界となりました。でも美由紀のスーパーウーマンっぷりは変わらずカッコいいです。強く美しい女なのでひどく爽快。私にとって岬美由紀は水野美紀さんのまま。美由紀の描写であまりにもスレンダーっぽく描かれていますが、それはありえない。闘う女は水野美紀ちゃん的スタイルであるべきです。細すぎる女は闘いに不向き。ちょっと闘っただけでポキリと骨折よー。なので映像化の暁にはやはり水野美紀の岬美由紀を見たいのでありました。あ、内容に全く触れてなかった〜(笑)。

『千里眼 The Start』 2007.1.25. 松岡圭祐 角川文庫



2007年03月02日(金) 『ぼくが愛したサイコ』 吉村達也

 誠は真希子との結婚を前に気持ちが足踏みをしていた。真希子はイマドキ珍しいタイプで大昔の青春ドラマのヒロインのよう。その大袈裟な純情っぶりッ子が鼻につきだしたのだ。しかし、真希子の両親には気にいられ、新居マンションまで買ってもらう始末。あとは結婚するだけのある花火の夜、誠は素晴らしく美しい女にいきなり首筋にキスをされた。女の名は彩子。あやこではなくサイコという女。サイコと出会ったことにより、誠は恐ろしいジェットコースターに乗ったかのように・・・!?

 藤原伊織さんや五條瑛さんや柴田よしきさん・・・などなどの新刊も読みました。読みましたが、感想も書かないまま。うーん、我ながら重症。気持ちが元気じゃないとなかなか感想を書けないです。半端に書けませんからね。ソノ点、吉村達也さんは重宝します! 読みやすいし、書きやすい! 良くも悪くもお手軽です。でもでもあなどるなかれ、吉村達也。相変わらずアクロバッティな着地をしてくださいます。こうくるのか・・・とあきれます(笑)。煙に巻くのが本当にうまい方です。気分的にヘビィな時は吉村達也さんみたいな路線が気がラクです。大好きです。

『ぼくが愛したサイコ』 2007.1.20. 吉村達也 双葉文庫



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