酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2006年10月31日(火) |
DVD『LOST』シーズン1 |
オーシャニック航空815便が南の島に墜落。生存者48名。機長が死ぬ前に話したことによれば乱気流を避けるため、航路を大幅にずれていた。そのために捜索の手が及ばないかもしれないと。救助を求め、生きるために島で必至に足掻く生存者達。ある日、彼らは謎の電波を受信する。そのフランス語をなんとか訳すと繰り返されたメッセージだった。《お願い 助けて 私は一人 島に一人》そのSOSは16年と5ヶ月の間ずっとずっと流れ続けていたのだった・・・!?
すごかったですよー! LOSTシーズン1っ!! なにがすごいかってあそこまで引っ張りに引っ張っておいてあの終わりっぷり(大受け)。久々の放置プレイに身悶えしています(大笑)。噂に違わぬ面白さで確かに『24』に負けていなかったです。飛行機がこの島に墜落したのは何故か。フラッシュバックで語られる生存者達の過去の罪と罰と秘密。なによりも謎だらけの島。もう魅力満載ですよ。たまりません。そして登場人物たちの魅力もすごい。ただのいい人でも、ただのヒーロー&ヒロインなんていない。誰しも過去を抱え、己を恥じたり後悔したり乗り越えようとしたり・・・。彼らは島で過去をLOSTするのだろうか。それはシーズン2以降のお楽しみかしらねー。うふふふふ。 さて、簡単に登場人物を私的視点から熱く語ってしまいましょうー。シーズン1でリーダー的存在になっていくジャックは医者。約束を守ろうと他者の命を守ろうと必死になる男。優秀な外科医だった父親との確執に今も心痛めている。なぜならばジャックは父の遺体を輸送するために飛行機に乗ったのだから・・・。年がいっているオジサマなのにサバイバル知識豊富な謎のロック。黙々とサバイバル技術を披露してなんとなくカリスマ雰囲気を漂わせる訳ありなオジサマー。シーズン1のヒロインのひとり逃亡者ケイト。美人で行動的でスタイル抜群。彼女の過去の秘密に翻弄され魅了される男が数名(笑)。ヒロインならば彼女を忘れちゃいけないわ、な韓国美女サン。言葉が通じないゆえに夫ジンと共に壁を張り巡らせていたのだが・・・な展開はゾクゾク。とてもエキゾチックな美しい女で木村佳乃さんに似ていると思います。芯の強いしたたかな美女もいいですー。うっとりー。もうふたり美女がいて我侭シャノンと妊婦クレア。ケイトとサンほどではないものの、かなと魅力的。魅力的と言えば御約束アウトローな男ソーヤー。人間不信で協調性の欠片もない、でもなんだかちょっと寂しそう・・・なーんて女ゴコロくすぐりぶっちぎりな奴なのであります。フラッシュバックされる彼の過去を見るたびにファンは増殖すること間違いなしですもん(笑)。でもでも私が一番めろったのはサイードであります。自分の過去を悔いながら逞しく生きるサバイバルなイラク人。もうかっこいいったらないの。好きになった女にはめたくたに優しいし。彼のタフさにノックアウトされました。ああっ(身悶え)。そして脇役なのに存在感ばっちりのふたりの男チャーリーとハーリー。軽いノリのチャーリーなのですケレドモ、苦悩の訳を知ると好きになっちゃいます。ああいうダメさ加減はきっと誰しも持っているから。人間なんて弱いよね・・・。ハーリーは肥満すぎるけど優しい。そして呪われた数字に関わってしまった悲劇の男だったりするのよね。人を楽しませようとするところなんて好感がもてます。体型をなんとか絞ってくれたら好きになっちゃうかも、なのに。太りすぎはダメです。 さて、シーズン2にもどっぷりしちゃいそうですよ。この謎の行方を知らないままではいられない。
| 2006年10月29日(日) |
『ダブル』 永井するみ |
週刊フューチャーの記者・相馬多恵は《いちゃつきブス女》を追いかけてみることになった。デスクの清里から粘り腰っぷりを見せてみろとハッパをかけられたのだ。この《いちゃつきブス女》と言うのは轢き逃げ事故の被害者で、轢き逃げに不審な点が浮上していた。被害者でありながら生前の容貌と性格や行動ゆえに《いちゃつきブス女》と揶揄されてしまう被害者。追いかけていくうちに被害者の暑苦しいようなブスっぷりがクッキリとしてくる。しかし、事件の真相にはトンデモナイ事実が隠されていた・・・!?
死して《いちゃつきブス女》などと言われてしまう被害者を追いかけるうちに妙な事件が引き続いて発生。点にしか見えなかった事件が線となった時に、多恵に危険が迫る・・・のですよねぇ。久しぶりにゾクゾクする悪を読みました。この悪は大きな悪ではない。日常にきっと見え隠れする程度の悪。そういう悪が怖いのだと感じてゾクゾクゾク。タイトルのダブルの意味は途中から読めますが、だからこそますますゾクゾクゾク。現代らしい小さなありふれた隠れた悪が蓄積される時・・・うふふ、怖いのですよ。そこがね。永井するみさんの作品は私にとって当たり外れがあります。今回は大当たりでした。面白かったですよー。こういう作品をどんどん読みたいです。
「私ねえ、鉤沼いづるのことをとても気の毒に思ってる。亡くなったあとまで、見ず知らずの人からブス女なんて思われるのは、かわいそうよ。反面、腹が立ってくるの。彼女が生きてたら、もうちょっとなんとかしなさいよ、って言ってやりたい。ブスを嫌いなのは、男だけじゃないのよ。女の方が、もっともっと嫌うの。今は化粧品もいろいろあるし、ダイエット食品だって選り取りみどり、プチ整形くらいなら、ちょっとお金を貯めればできないこともないわ。そういう時代なのに、なんだって正統派ブスのまま図々しく生きていたのよ、って思うわけ」
『ダブル』 2006.9.25. 永井するみ 双葉社
幼い性が弄ばれて殺される。その性犯罪者は同じ過ちを繰り返しがちだと言う。男は手に入れた妻と幼い娘のためにサンソンなる怪物となっていく。幼い子供達が酷い目に遭うたびに、かつての性犯罪者を首を斬って殺すのだ。性犯罪者たちにオマエたちも酷い事をするとこうなるんだぞ、と思い知らすように。かつて自分が置いてきぼりにしたために妹を弄ばれて殺された過去を持つ刑事・長瀬。長瀬は刑事でありながらサンソンに同調する自分を見つけ・・・!?
んんん〜(困惑)。えっとですね、サンソンの正体がどんでん返しとなるかどうか、そこが読み手と書き手の戦いなのでしょうね。うん。こういう物語というのは正直どう感想を書いていいものやら悩んでしまいます。正直、私はサンソンみたいな存在はありだと感覚的に思っています。だけど・・・そういうリンチ的報復を許してしまえば法治社会は成立しなくなってしまう。そうなるとますます酷い犯罪がはびこるわけで。鶏が先か、卵が先か。犯罪に巻き込まれた被害者と被害者の家族の心の叫び、それってきっと人生が終るまで叫び続けるんだと思います。忘れてしまう事なんてできっこないもの。憎しみは憎しみを呼び、犯罪が連鎖していく。いい人ばかりの世の中ならば、そんな悲しみはなくなる。でも、ありえない。なんとも言えない思いがします。あ、サンソン的存在はありだと思っても、この物語のサンソンを認めるわけではありません。絶対にありえない(怒)。
あの事件から、自分は出口のない闇にずっと放り込まれていた。
『闇の底』 2006.9.8. 薬丸岳 講談社
| 2006年10月26日(木) |
『シフト�供 疾こΔ魯�リアを待っているー』 うえお久光 |
現実の世界から眠ると“あちらの世界”へシフトする少年少女たちの戦いの物語の『シフト』を読んだ時にはものすごくワクワクドキドキしたものでした。私はゲームをやらないのですケレドモ(嫌いという訳ではなく、やるとドップリはまること必至なので自重)、ファンタジーゲームにのめりこむとこういう感じなのかしら、と(ならば絶対的にはまるに違いないので徹底的にゲームには手を出さぬと誓う)。“あちらの世界”はなんでもありのやりたい放題・・・現実=“こちらの世界”では普通の平凡な少年少女たちなのに。・・・ん、それってなにかに似てる。あ、2チャンネルか。うーむぅ(考え込む)。ま、それは置いておいて、そのサバイバルファンタジーの続編と言いますか、かなりシビアな展開となりました。“あちらの世界”が“こちらの世界”に寝食をしはじめて、ラケル(あちらの世界)こと赤松祐樹(こちらの世界)が自分の危険を顧みずに本気をだしてくる・・・と。そこには恋心があり友情があるので少年少女たちの純粋さと残酷さに結構ぐっときます。前作をウキウキ気分で読んでしまっただけに今回はノックアウトされました。次なる物語ではしっかと心構えして読みたいと思っていますv 前作ともども超オススメです。
才能も、運命も、勝つべきか負けるべきかも知ったことか。べきべきなんか関係ない。納得するまでやってやる。そして笑ってみせてやる。この意地が磨り減り潰れ消えるまで、最後まで意地を見せてやる。 そう、最期の最期まで。死に物狂いで足掻くなら。
『シフト�供 疾こΔ魯�リアを待っているー』 2006.6.30. うえお久光 メディアワークス
| 2006年10月25日(水) |
『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』 大崎梢 |
杏子は成風堂の元同僚からSOSを受けとる。今は故郷・信州の老舗名物書店に勤める彼女の言うことにゃ、本屋に幽霊が現れて老舗本屋存亡の危機!だ。しかるに本屋名探偵の多絵を連れて来い、ときたもんだ。巻き込まれ型の人のいい杏子は老舗書店を見たい下心も手伝って多絵ともども信州へ。そこで杏子たちが遭遇したのは27年前の地元作家の死と消えた原稿に纏わりつづける謎だった・・・!?
うふふー。杏子さんと多絵ちゃんが信州へ旅行しますよーv しかも行き先には素敵な由緒アル老舗書店が! この設定に心動かされない本屋さんスキはいないでしょう。本屋さんは本屋さんでも老舗の本屋さん。しかも新書を扱っている。こんな書店あったら行ってみたいですよう。ウキウキしながら読みました。多絵ちゃんが名探偵みなを集めてさてと言い、なシチュエーションになるところは苦笑しましたケレドモ、本好きさんたちはただ楽しめばいいのですよね。野暮なこと言いっこなしvであります。これは推理だの事件だのよりも本屋さんを楽しむ物語なのでありまする。いいなぁ、杏子さんと多絵ちゃんコンビって。
「杏子さんはたった一日で、まるう堂に惚れこんじゃったでしょう? 肝心なのは、時間ではなく、心ですよ。心」
『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』 2006.9.29. 大崎梢 東京創元社
| 2006年10月24日(火) |
『求愛』 柴田よしき |
弘美の親友が自殺した。でもなにかがおかしい・・・。彼女の死の真相の背後には悪徳探偵事務所の存在があった。翻訳家として生計がたっていた弘美だったが、悪徳探偵事務所を許せない思いから探偵事務所に勤める事にする。そして探偵という仕事で様々な人間の裏の顔や欲望のカタチを垣間見た弘美の掴んだ真実とは。
うーん(困惑)。翻訳の仕事が軌道に乗りかけていたヒロインがいきなり探偵に転職。何故? もったいないと言うか。贅沢と言うか。まぁヒロインたるもの、それくらいの冒険をして当然なのかな。探偵の仕事が派手派手しい事件を扱うのではなくて、調査もの=浮気調査などの地味な仕事がほとんどだと言うことはよくわかりました。しかも調べるうちに見たくない人間の裏の顔や欲望を見てしまうというオプションつき。なんだか・・・そう滅入ってばかりで。唐突なら思いっきり唐突な方が受け入れやすいのだと思います。中途半端な感じより破天荒なフィクションを。
『求愛』 2006.9.30. 柴田よしき 徳間書店
| 2006年10月23日(月) |
『パパとムスメの7日間』 五十嵐貴久 |
事故に巻き込まれたパパとムスメの心が入れ替わってしまった! パパは47歳サラリーマン、娘は花の女子高生17歳。会話が全くと言っていいほど無くなっていた二人は必要にかられて会話をかわし、互いの生活を垣間見てドタバタ・・・と言う御約束的展開。でもこれがトッテモとってもいいのですよ。心がほんわか温かくなります。娘の小梅ちゃんがすごくいいお嬢さんでパパは娘の恋模様にハラハラドキドキ(笑)しつつ、邪魔しつつ、応援しつつ?みたいな。 入れ替わりモノと言うのはハードルが高いと思うのです。今やバイブルとも言える『転校生』をはじめとして名作も駄作もぞろぞろですから。北村薫さんのぶには心に痛いエンディングだったっけ・・・まぁ、あれは入れ替わりモノ変化球ですね。そう言えばつい先日の世にも奇妙な物語ではOLと部長が入れ替わってました。そんな中で五十嵐貴久さんは真っ向勝負、しかもストレート。だからこそ清々しい読後感でにっこりだったのかもしれません。オススメですv
お互いが立場を入れ替えたら、それまで見えなかったものが見えてきたのは確か。少なくともあたしはそう。
『パパとムスメの7日間』 2006.10.30. 五十嵐貴久 朝日新聞社
| 2006年10月22日(日) |
『水銀虫』 朱川湊人 |
でろでろでろ・・・っと不気味。まずは表紙のイラストが不気味なのです。ううう。少年を虫のようなナイフが襲いまくっている。ああ、なんという恐ろしい表紙。このイラストだけで朱川さんのホラーっぷりが伝わってくるようです。そうです。ノスタルジックなほのぼの路線なんて望んじゃいけません。朱川さんのもうひとつの軸、ホラーですよ。もろホラー! 7日間のさまざまに不気味な日が淡々と語られていてうまいなぁと思いました。ウメズカズオせんせいを思わせる『しぐれの日』はちびりそうになりました。クスン。映像がダイレクトに浮かんでしまうのですものー。えーん。怖かったよぉー。「オマエ、キライダ」えーん。えーん。このテーマは永久不変でタブーでありながらもすごく魅惑的に感じてしまうのであります。これって日本的土着的なホラーだわ。うむ。ビョウビョウキの『病猫の日』も興味深かったですね。よくぞこの短さにこの物語を押し込めたものだと言うか。図書館が舞台となっているのですごくイメージが広がりましたし。なんだか・・・共感できるところがあったことが一番のホラーだったかもしれません。朱川さんはやっぱりウマイわv
「確かにバカげて聞こえるかもしれませんけど、絶対にないとはいえませんわ・・・・・・人の心は、時には信じられない奇跡を起こすものですから」
『水銀虫』 2006.9.30. 朱川湊人 集英社
| 2006年10月21日(土) |
『刑事雪平夏見 アンフェアな月』 秦建日子 |
無駄に美人な刑事・雪平夏見は誘拐事件の捜査に狩り出された。さらわれたのは生後三ヶ月の赤ん坊。その母親の言動は不自然。狂言誘拐を疑う雪平だったが、捜査するうちに少女の死体を6つも掘り起こしてしまう。いったい犯人の狙いとは・・・!?
うーん・・・秦さん脚本のテレビドラマはかなり好物でありますが、この雪平の人気に便乗した小説化ってのはいかがなものやら。『推理小説』の時にも感じましたが、ページの使い方が邪道と言うか、奇を衒いすぎだと思うのです。ある程度の冒険や変化は望ましいと思いますケレドモ、あまりにもやりすぎられると引いてしまいます。そのあたりの見極めって結構大切だと思うのです。この雪平夏見ってキャラクターはテレビドラマでの篠原涼子さんがはまり役だったことがブレイクの訳ですよね。安藤君も瑛太クンがピッタリだったからこそよかったと。こうなっちゃうと鶏が先か、卵か先かになっちゃうか〜。ま、要するに雪平は篠原涼子でテレビだからこそ、だと私は思ったのでありました。
えっ? 別に本気で言ってるわけじゃない? 単なる口癖のひとつ?
いやいや、そんなことは問題ではない。 なぜなら、言の葉には、人を縛り操る魔力があるからだ。
『刑事雪平夏見 アンフェアな月』 2006.9.20. 秦建日子 河出書房新社
| 2006年10月20日(金) |
『鴨川ホルモー』 万城目学 |
京都三大祭のひとつ葵祭のとき、大学生になって一月が経ったばかりの安倍と高村は京大青竜会というサークルに勧誘される。ピンポイントで勧誘されたふたりはなんとなくサークルに入り、謎の戦いを強いられ(笑)、恋をし、破れ(苦笑)、妙な連帯感(友情?)を手に入れる。はてさてこのホルモーとはいったいなんぞや?
うひゃひゃひゃひゃ。おもしろーい! これってタイトルと表紙のイラストの変さに惹かれたのですケレドモ、これが異様に面白い面白いv 京都ならではの魑魅魍魎が跋扈する謎の戦闘ホルモーなんてやってみたい、覗いてみたい。うまい展開にウキウキわくわくさせていただきました。この作家さんの言葉運びのテンポがトッテモよくってずんずか読めてしまいました。選ばれし者たちだけの妙な戦闘ホルモー。選ばれて苦労はしても残るものは幸せ感だろうなぁ。いいなぁ。やってみたいなぁ、ホルモー。
「大丈夫だよ。変なことも多いけど、きっと楽しいことも多いはず」
『鴨川ホルモー』 2006.4.20. 万城目学 産業編集センター
| 2006年10月19日(木) |
『空飛ぶタイヤ』 池井戸潤 |
赤松運送の社長・赤松は33歳の主婦の通夜に出ていた。赤松運送の大型トラックのタイヤが外れ、主婦を直撃、主婦死亡・・・。タイヤが外れた原因が整備不良にあるとされ、赤松は窮地に立たされる。赤松の会社の整備士はキチンと整備をしていた。赤松はトラックの製造元ホープ自動車に問題があるのではないかと考える。財閥系の企業である大手自動車会社を相手に赤松の戦いが始まった。中小企業の社長の赤松に降りかかる数々の試練。そして赤松を支える家族や会社の部下達。事故の原因はどこにあるのか?
面白かったです。内容はシビアなので面白いと言うと語弊があるのかもしれませんが。この物語の財閥系自動車会社はアル自動車会社を彷彿とさせます。リコール隠し・・・目先の利益を追うばかりに人の死すら見ないふりをしてしまう。そんな企業に翻弄される普通に生きている人たち。命は金に替えられない。そんな当たり前のことを見失った人間たちの行き着く先とは・・・。町の中小企業の社長の赤松が本当に頑張って頑張って見事です。「赤松がんばれガンバレ」と手に汗を握って応援しつつ読み終わりました。企業小説なんてジャンルでここまで入れ込んで読めたのはハジメテのことかもしれません。オススメですv
命の尊さを前にして、プライドもへったくれもあるものか。
『空飛ぶタイヤ』 2006.9.25. 池井戸潤 実業之日本社
| 2006年10月17日(火) |
『ミーナの行進』 小川洋子 |
家庭の事情で親戚の家で暮らすことになった朋子。岡山の田舎から新神戸に降り立ち、ダンディでカッコいい伯父様に連れられて芦屋へ。ドイツ人のオシャレなローザおばあさん。誤植探しに一生懸命な伯母さん。お手伝いの米田さんと小林さん。そして、身体が弱い美少女ミーナとペットのポチ子。あの家で過ごした日々の想い出は損なわれることがない・・・。
美しくて心に優しい物語にうっとりしながら読み終わりました。小川洋子さんの文章と寺田順三さんのイラストがぴったりと合っていて、まるで音楽(美しいハーモニー)を読んでいるかのようです。朋子が親戚の家で過ごした日々が丁寧に心優しく綴られていてせつないほどに懐かしく感じました。従姉妹の美少女ミーナとマッチとポチ子、その愛しいものたちを朋子は優しく愛しく見守ります。ああ、自分は朋子に同化して物語に参加できていたのかもしれないなぁ。オススメですv
しかし、現実が失われているからこそ、私の思い出はもはや、なにものにも損なわれることがない。
『ミーナの行進』 2006.4.25. 小川洋子 中央公論社
| 2006年10月16日(月) |
『新宿鮫�察ヽヌ襦戞‖臑�在昌 |
鮫島は、警察機構を破壊する爆弾(告発)を残し死んだ友人・宮本の七回忌法要にやって来た。法要で会った宮本の旧友と酒を酌み交わした後、何者かに拉致監禁されてしまう。檻の中で目覚めた鮫は・・・!?
この『灰夜』は鮫シリーズでも異彩を放つ物語です。鮫が新宿を離れますし、まさに孤軍奮闘!ですから。・・・そう考えて見るとアウトローで一匹狼な鮫には新宿で仲間がいるわけですね。恋人も。しかし、この物語で鮫が檻に監禁されるシーンは読んでいて怖かったです。閉所恐怖症な人間だったら狂ってしまうだろうに。鮫は意外に冷静沈着。そして気持ちが通じ合った存在には頼もしい奴となる。それをわかっていて宮本は警察機構を揺るがす爆弾を鮫に託したのでしょうね。なんだか鮫がかわいそうになってきました。鮫が鮫であるために。
『新宿鮫�察ヽヌ襦戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年10月15日(日) |
『ヘヴンリー・ブルー』「天使の卵」アナザーストーリー 村山由佳 |
自分の恋人(歩太)が姉(春妃)に恋してしまった。そんな夏姫の視点からの物語です。「天使の卵」では予期せぬ事態(恋の邪魔者役)に陥ってしまい、大好きな男と大好きな姉への愛憎に苦しんだ夏姫。その夏姫が今はいない姉と同じように年下の男に恋をしている・・・。大好きな姉に投げかけた言葉が夏姫にとって呪となってしまっていて苦しんで苦しんで・・・。誰も悪くはないのに3人が3人とも苦しむことになってしまった苦い過去。そんな過去の呪縛から夏姫は再生できるのか? ひとつの出来事があっても、関わった人の数だけ真実がある。視点が変われば真実もカタチを変えてしまうのですよね。どれが正しいわけじゃなくて、どれもがきっと正しくて。簡単じゃないものだよなぁと思います。でも人はいつまでも同じ所に立ち止まっていられない。自分なりに自分の中で消化して、また足を前へ踏み出さなければならない。自分の真実も他の人の真実も大切に出来たらいいのですケレドモ・・・うーん、なかなか難しいことかもしれないなぁ。ただ思うのです。愛だろ、愛っ・・・って。
「誰に何を言われても消えない後悔なら、自分で一生抱えていくしかないのよ」
『ヘヴンリー・ブルー』2006.8.30. 村山由佳 集英社
| 2006年10月14日(土) |
『禿鷹�検‘殿觴蹐蝓戞^�坂剛 |
神宮署の悪徳刑事“ハゲタカ”こと禿富鷹秋。自分のやりたように物事をすすめ、人殺しすら平気でやってのけて他人に罪をなすりつけてしまう。ヤクザも南米マフィアも怖いものなしのハゲタカつぶしに警察内部で不穏な動きが・・・。そしてハゲタカの前に現れた岩動寿満子。なにもかも大柄で雑な筋肉質な女・岩動がハゲタカ狩りをはじめた!
ものすごく好きでたまらないシリーズという訳でもないのですケレドモ、なんとなく読まずにいられないハードボイルドであります。まさかこの刊で完結するとは思っていなかったのでかなり驚きの展開でありました。へぇ〜、まさしくこうあるべきエンディング。刑事であるハゲタカよりもヤクザなふたりのイケメンの方に好感が持ててしまうってある意味すごいことだったわ(笑)v そしてハゲタカの風貌のイメージはリチャード・ウィドマークとのことで、そんなの知ってる人のが少ないのじゃないかしらん(大笑)。私はたまたま中学の時に映画好きが集まってワヤワヤ話してて、その中の男の子がやたらめったらリチャード・ウィドマークを語っていたので辛うじて知っておりました。でももうその面影もぼんやりだなぁ。日本で人気が出た役者さんではないし。私の勝手なイメージではスティーブ・マックイーンだったの。それもまた古いか(笑)。
「撃ってみろ、岩動。人を撃つ度胸があったらな」
『禿鷹�検‘殿觴蹐蝓戞�2006.7.15. 逢坂剛 文藝春秋
| 2006年10月13日(金) |
『QED〜ventus〜御霊将門』 高田崇史 |
時は春、三月末の薬局は花粉症の患者さんで忙しい。ホワイト薬局できりきり働く棚旗奈々は元気で姉思い(?)の妹・沙織の画策でタタルさんこと桑原崇と3人でお花見に行くことに。うきうきと桜の名所、九段千鳥ヶ淵へ出かけてみたら、いつの間にやら日本三大怨霊のひとり平将門にまつわる場所を巡りはじめ、タタルの謎解き&講釈もはじまった!(笑) 怨霊に祀り上げられた将門とはいったい・・・?
うーん、面白いv QEDシリーズで解き明かされる謎を読んでいると知っているはずの歴史の違う顔を垣間見ることができて本当に楽しいです。漠然と頭の隅っこに眠る知識と目の前で繰り広げられる謎解きとのギャップが大きければ大きいほどに面白いなぁと感心することしきりであります。歴史の真実っていったいどこにあるのかしら。なんだか時の為政者の都合のいいカタチで歴史が作られていて、その陰に隠れている真実って残された真実の欠片から想像するしかないって繰り返し教えられる気がします。ただ通り一遍に教えられた歴史の教科書の知識ではなく、自分の目で心で疑問を感じて考えて想像すると歴史は壮大な浪漫となる・・・。うーん、QED片手に将門の縁の場所を巡りたくなってきましたよんよんよん。
「もっと俺たちは、昔、この国では一体何が行われてきたのか、それをしっかりと知っておく必要がある。そして怨霊を作りだしてきたのは誰なのか、なぜ怨霊が生まれなければならなかったのか。その点をきちんと把握しておかなければならないと思う」
『QED〜ventus〜御霊将門』 2006.10.5. 高田崇史 講談社
| 2006年10月12日(木) |
『シャドウ』 道尾秀介 |
我茂鳳介は母が亡くなり、父とささやかに暮らし始めた。そんな時、幼馴染の亜紀の母が飛び降り自殺をしてしまった。鳳介と亜紀は家族ぐるみで仲がよく、父親同士・母親同士・子供同士で親しくしていた。なにかがすこしずつ歪みだしたような毎日の中で今度は亜紀が事故に遭い、鳳介の父親までも・・・!?
人間は、死んだらどうなるの?・・・小学5年生の鳳介が漠然と抱える人の生への疑問と不思議。その疑問に母や周りの人間が死んだり、傷ついたりすることで何かを知ってしまう鳳介。こんな悲しいことを小さな少年が受けとめていくなんて読んでいてやりきれなかったです。人間の汚さや悪意になど触れずに生きていければいいのですケレドモね。ミステリ・フロンティアシリーズも27冊目。ほぼ好きな作品が多くて(ときどき合わないものも)トテモ楽しみなシリーズですv
果たしてあれは、誰にとって理想的だったのだろう。苦しまなかったことは、誰にとっての救いだったのだろう。
『シャドウ』 2006.9.29. 道尾秀介 東京創元社
| 2006年10月11日(水) |
『新宿鮫�此”紘顱戞‖臑�在昌 |
鮫島はマホと言う不思議な美女のひとり語りの芝居を観て引き込まれた。忙しくなった晶にも見せてやりたい・・・と思うが、晶のバンドフーズ・ハニイは売れ始め、会うにもままならなくなっていた。晶との関係が微妙になる中、元CIAのブライド殺しに巻き込まれ、なぜだか捜査を阻もうとする公安とますます対立を深めていく。孤軍奮闘する鮫島の前にマホこと杉田江見里が現れ、ふたりは惹かれあうものを見つけてしまい・・・!?
警察機構を揺るがす秘密を握っているばかりに孤立する鮫島。その鮫島を救っているのが年下の恋人のロックシンガー晶だったのでありますが、・・・鮫ったら気持ちがよそへふらふらしてしまうのですよー。大馬鹿者めx でもそんな鮫だから人間味を感じるとも言えるのですよね。晶ちゃんは鮫よりずいぶん年下なのに骨太な根性を持っている女の子。今回のことで晶の良さをあらためて知らされました。あなたと私は恋人よ、とか、あなたと私は友達よ、ナンテ契約ではありませんものねぇ。人と人とのつながりはナマモノで揺れ動くもの。確かな絆のいかに難しいものであることか。自業自得な横恋慕を鮫はどう消化していくのかしら。
『新宿鮫�此”紘顱戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年10月10日(火) |
『東京ダモイ』 鏑木蓮 |
1947年11月、極寒凍土のシベリアで捕虜となった日本兵たちは互いに疑心暗鬼になっていく。そんな状況で斬首事件が発生。しかし、凶器も犯人もわからなかった。その後、帰還した男が60年経ち自費出版で句集を出そうとした。シベリアでの過酷な生を感じさせる生々しい文章を残し、彼は失踪。出版社の槙野はその文章に惹かれ、失踪事件と殺人事件を追いかけ、そして・・・!
『東京ダモイ』、そのタイトルに郷愁を感じましたが意味は知りませんでした。ダモイとはロシア語で帰還という意味だそうです。捕虜となった日本兵たちが東京ダモイを信じて必死になって生き抜いた・・・そういう時代を知らずにいるのだなぁと平和ボケな自分にちょっと疑問を感じました。知らずにいればそれはそれでいいのでしょうケレドモ、知ってしまい魂をゆさゆさ揺さぶられてしまった以上はキチンと知識として頭に入れたいなと思います。決して忘れてはいけないことがあるとしたら、二度と起こしてはいけない戦争なのでしょうね・・・。物語がどうこうと言うよりも、自費出版されようとした句集に描かれたシベリアラーゲリの話をもっと読みたいと思いましたもの。そこが一番の魅力でした。
もう過去のことだと忘れてしまっていいのか。今後ますます戦争体験者の数は減少していく。情報を受け継ぐことが人類を進歩させてきたのではないか。それを考えれば、広島、長崎の原子爆弾に匹敵する大惨事、シベリア抑留者の強制労働を風化させていいのか。シベリア、満州を合わせて三十万人の死者を出したと記述されたものを図書館で読んだ。にもかかわらず、どれほどの人がそれを知っているのだろうか。話題のミステリーベストセラーを読む人々の何割が、ダモイという言葉の意味を理解できるのだろうか。
『東京ダモイ』 2006.8.10. 鏑木蓮 講談社
| 2006年10月09日(月) |
『彼女の命日』 新津きよみ |
楠木葉子、2002年10月1日通り魔に遭遇し死亡。35歳の葉子は父亡き後、母と引きこもりの妹のために家計を支え家族を守っていた。やっと恋人に求婚され、甘えられる存在ができた矢先のことだった。そして1年後、葉子は何故だかこの世に戻ってきた。誰だか知らない女の身体を借りて。そして2年後、3年後、4年後と葉子は誰かの身体を借りてこの世に蘇りつづけるのだが・・・。
人は誰しもいつか死にます。早かろうが遅かろうが命が尽きる定め。その限りある時をどれだけ後悔なく生きられるか・・・。ただ漫然と生きていると後悔は多いでしょうね。この物語の主人公・葉子は頑張り屋さんでやっと自分の幸せを手に出来ると思った矢先の無念の死。その無念さゆえに、命日に蘇り続けるのかもしれません。ただ蘇ったところで生者は死者のことばかり考えてはくれない。その現実を見て余計にやるせない想いをするなんて・・・死ぬならば静かに朽ち果ててしまうがいいのに。死して尚、かなしい事実を知ってしまうなんて私はいやだなぁ。なんだかトテモ悲しくせつない物語でありました。葉子がんばりすぎ。
自分がいなければどうにもならない、何もかもストップしてしまう、なんて思っていても、案外何とかなるもんだよ。 〜中略〜 ときには開き直りというか大らかさがないと、ストレスがたまってやってられないんじゃないの?
『彼女の命日』 2006.9.8. 新津きよみ 角川春樹事務所
柳麻衣子は看護士として初めて感じる患者への嫌悪感に悩まされていた。その患者は横暴で卑猥、家族にも看護士にもドクターにも嫌われていた。その患者が毒殺された。麻衣子が結婚を考えているドクターが犯人と疑われてしまったのだが・・・?
この物語は病院が舞台となるため、タイトルの『毒』は文字通り毒を表し、そしてまた人間の持つ毒をあわせもっています。宮部みゆきさんの『名もなき毒』の毒と相通じるものがあったように感じました。毒を撒き散らして平気でいる人間の神経というのはそれはそれは恐ろしいものだと思います。人間は誰しも身体のどこか毒を持っていて、きっとそれを必死で押さえ込んでいるものではないのでしょうか。あふれでた毒、確信犯であれ無意識であれ毒は毒。かならず汚染します。だからなにかのきっかけで自分の毒を見つめて封じ込めなければならない。そんなふうに思うのです。人間は清濁併せ持ち、決して綺麗な生き物ではない。自分は絶対に間違っていないなんて思わぬように、そんなことを自戒しながら。
仕事ができようと、社会的に認められようと関係ない。他人を傷つけ、他人を苦しめて平気でいられる者、それでいて罪の意識をまったく感じない者、それこそ最低の人間だろう。
『毒』 2006.8.31. 深谷忠記 徳間書店
| 2006年10月07日(土) |
『名もなき毒』 宮部みゆき |
《あらゆる場所に「毒」は潜む》・・・宮部みゆきさんが炙り出す現代の光りと闇ですね。なんだかトッテモ心に痛かったです。救いは杉村が出会う優しい人たちの存在。これからはそういう人の方が稀有になってしまうのかもしれない。かつてはそういう人たちこそが普通だったはずなのに。人間の身体に害なす毒、人間の心に害なす毒。昔から毒はあらゆる場所に存在していたのだと思います。でもそれでもそれを悪化させずに中和できてきたのではなかろうか、と。でも今はどんどんと毒が毒々しく増していっている・・・地球も人の心も汚染されていくばかり。優しい風貌をされながら、宮部さんの視線は厳しい、そして的確。杉村や同僚が当たってしまった悪意の塊のような女ってデフォルメされているケレドモ、多くの人の心に住んでいるのではないかと思うのですね。ああまでくっきり具現化していないまでにもアノ悪意と言う毒を私だって隠し持っている。ただそれを表に出すか出さないか。そこが分かれ道なのでしょう。性質が悪いのは自分は悪くない間違っていないと思い込んでいる無神経と言う毒。あんなにも人を傷つける毒はない。その無神経という毒を自覚できない限り、悪意を垂れ流す。そういうのだけは避けたい。自分を強く持たないと私だって原田いずみ。
不運にも毒に触れ、それに蝕まれてしまうとき以外、私たちはいつも、この世の毒のことなど考えないようにして生きている。日々を安らかに過ごすには、それしかほかに術はないから。 突っ立ってただ問いかけているだけでは、誰も毒のことを教えてはくれない。それがどこから来て、何のために生じ、どんなふうに広がるものであるのかを。
『名もなき毒』 2006.8.25. 宮部みゆき 幻冬舎
| 2006年10月06日(金) |
『キリハラキリコ』 紺野キリフキ |
なんと申しましょうか、かなり衝撃的にございます。あ、トテモいい意味で。すごく不思議でシュールでつじつまが合わなくて。こういう不条理シュールものってどちらかと言うと苦手なはずだったのですケレドモ。なので気に入っちゃった自分が不思議でもあります。この小説を読もうと思ったのはタイトルと表紙のイラストにやられたからでありました。キリハラキリコっておそらくや主人公であろうし、名前の音感がいい。キリキリしてて(笑)。その上、キリハラキリコらしきイラストが絶妙。しかも読後にイラストと内容がいかにマッチしているかを感じてますます嬉しい。キリハラキリコはキリキリ町に住んでいて、やたら停電して、変な人がいっぱいあふれてる。変じゃない方が変?ってくらいに。うその教室に迷い込んだら、おばあちゃんがいたり、暦屋父娘が訪れてきたり、伝説の変態が登場したり・・・とりとめがなくて、でも魅力的で、なにやら笑えるのですよ。ホントに。携帯サイトで爆発的なアクセスを記録したそうですが、それはもう納得。きらりと光るものはそれ相応の評価を受けるものなのですね。私が気に入ったのはラーメン《喜狸喜狸》で、笑えるようで、すごくペーソスあふるる物語となっていました。本当に短い文章におかしさと悲しさをバッチリ詰め込んでいるのです。ラーメン屋の大将とお客さんのユキエさんのやりとりがメロドラマみたいで笑えて悲しくてビックリでした。こういう才能を読めると心からありがたいと思うのであります(嬉)。
「・・・・・・だから、だから来ないでくれって言ったじゃねえか」 「・・・・・・ばかね。いいのよ、これで。・・・・・・いつか通る道なんだから」
『キリハラキリコ』 2006.9.20. 紺野キリフキ 小学館
| 2006年10月05日(木) |
『風の墓碑銘』 乃南アサ |
古い家屋の買いたい工事現場から白骨死体が3体見つかった。男と女、そして赤ん坊。その大家から事情聴取する音道貴子だったが、老人はまだらボケの症状があり、話が噛みあわない。そして老人が撲殺された! 久しぶりに滝沢とコンビを組む貴子は滝沢の微妙な変化にとまどう。男社会である警察で男どもの偏見やセクハラに耐えながら、同僚の女友だちに鬱憤を晴らしつつ、必死に事件を追うのだが・・・!?
女刑事は多々あれど音道貴子の気性の真っ直ぐさが格別お気に入りであります。なので色んな目に遭いながら健気に頑張っている姿を応援したり、あまりに肩肘張っているのをリラックスしろよーと気遣ったり。読んでいてずいぶんと力が入ってしまいます。今回は同性の同僚にことのほか不愉快な想いをさせられてしまい、本気で腹が立ちました。自分が悪かったり間違ったことを棚上げにして被害者ぶるって徹底的に嫌い。ふざけんなー! 自分の非を認められないタイプの人間の底の浅さにはうんざりしちゃう。潔さがなくって醜い。関わりあっただけ損をすることがありますよね。げんなり。そんな音道が天敵アザラシ(笑)に救われるのだから、人間関係とは不思議なものだわ。滝沢アザラシの優しさに今回は嬉しくなったのでありました。犯人の意外さよりも音道の女友だちとのいざこざや恋人との行き違いの方がトッテモ面白かったですv
『風の墓碑銘』 2006.8.30. 乃南アサ 新潮社
| 2006年10月04日(水) |
『新宿鮫�后 ̄裼譟戞‖臑�在昌 |
鮫島は、外国人マフィア同志の報復の娼婦連続殺人の捜査中に甲屋(かぶとや)と言う農水省植物防疫官と出会い、何故だかコンビを組んで操作する事になる。甲屋は娼婦が持っていたワラ細工に付着した害虫を追いかけているのだ。この害虫は日本の稲を全滅させかねない種族。羽化をなんとしても阻止しようとする甲屋に鮫島は好意を持ち、ふたりの間には奇妙な心の交流が。奇しくも同時期、ラブホテル連続放火が発生しており、東京消防庁予防部の吾妻が鮫島に協力を依頼してきた。錯綜する事件の中で鮫島が見たものは・・・
今回、鮫島が追ったものは、《恐怖の害虫》の蛹でした。これは本当に意表をつかれまして、農水省植物防疫官なんて存在をハジメテ知りました。もうひとつ消防の機構の複雑さも知らなかったですね。ビックリしました。知らないことが多すぎる・・・(恥)。アウトローな鮫島が、事件のたびに盟友を得ている様がトテモ嬉しく感じます。鮫島の無骨なまでの真っ直ぐな正義感が人を呼んでいるのでしょうね。素敵。今回、コンビを組んだ甲屋さんは不思議な魅力の持ち主で鮫も晶も良い出会いをしたものです。鮫が孤独でなければいい、と応援している自分にちょっと笑えますけど。放火犯は屈折した人物でこの犯人だけで物語が出来そうなものなのに大沢親分は相変わらず大盤振る舞いにございます。ご立派。
「わかった。ではいくとするかね、相棒」
『新宿鮫�后 ̄裼譟戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年10月03日(火) |
『新宿鮫�検〔鬼嵜遊繊戞‖臑�在昌 |
舐める覚せい剤・アイスキャンディ、安価な薬が新宿で流通しはじめた。若者に蔓延するキャンディ撲滅に動く鮫島の前に商売敵の厚生省麻薬取締官が現れる。相容れない組織同志の軋轢に辟易しながら、鮫島は地方財閥・香川一族に辿り着く。香川兄弟の弟・進を追い詰めた鮫島は、地方公演に出ている晶が兄・昇の手に落ちたことを知り・・・!?
今回の鮫の敵は<覚せい剤>です。この物語で直木賞を受賞されたのは、覚せい剤の恐ろしさをエンターテイメントの名を借りて強く訴えられたことが大きいのかもしれませんね。それほど覚せい剤に溺れて破滅していく男の姿が克明に描かれていて怖かったです。久しぶりの再読でじっくり読み込んで改めて驚いているのが、鮫と晶の一本木な性格。まっすぐで揺るがない。暴力や愛する人の喪失に人間らしく怯えはしても基本的な信念がハッキリくっきりしています。これってイマドキ貴重。こういう男と女が愛し合ってるってすごいことだと思ったのでした。<ロケットおっぱい>と言う表現はヤッパリどうしたっていかがなものかと思うケレドモ(笑)。こういう物語が受けるのは展開の面白さと文章の読みやすさですよね。本は娯楽で楽しくてハチャメチャなのがいいなーとラクな姿勢で読めるのでありました。
「あんたはあいつを知らない。あいつがくるといったら、きっとくる」
『新宿鮫�検〔鬼嵜遊繊戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年10月02日(月) |
『新宿鮫�掘〇嗟�』 大沢在昌 |
藤崎綾香は美しき女実業家。エステサロンで女性の美を磨き、己も若く美しい女王として君臨している。その彼女が特別に美しく装い行く先は病院。そこには彼女の戸籍上の姉あかねが植物状態のまま眠っている。蘭の花で病室をいっぱい埋め尽くし、綾香はあかねに語りかける。そして綾香にはふたりのガーディアンがいた。ひとりは辞め刑事(でか)光塚、ひとりは看護士・ふみ枝。綾香の成功の光りと影はこのふたりがいればこそだった。美しき女王の光りの影にある甘く腐った犯罪の匂い、鮫島は事件を探り、トンデモナイ真相に辿り着く・・・!?
新宿鮫と言えばイコール派手なアクションってイメージがあります。1作目、2作目とドンパチアクション大爆裂でハードボイルド男の世界いけいけドンドンできたものが、この3作目でガラリと様変わり。この舞台転換の潔い妙が大沢親分うまいなぁと感心することしきり。そう、この3作目屍蘭は不気味テイストなのです。愛する娘のために人をばかばか殺してしまう看護士のおばちゃんは異常者だし、その娘は過去ゆえに病んでいて赤ちゃんを臓器売買しちゃう神経になっている、表の顔エステサロンでじゅうぶん潤っていると言うのに。今回は主役は女たちで男はたじたじめろめろだったりしています。全ては綾香の過去から始まっているのですケレドモ、綾香が過去を乗り越えられなかった悲しさみたいなものが物語り全体に翳を落とし、甘い腐敗臭が漂っています。次の4作目で大沢親分は直木賞を受賞されるわけですが、この3作目があればこそって気がするのですよね。あ、そうそう。映画では鮫役を真田広之さんが一番最初に演られたとか。舘さんよりは鮫のイメージに近いですね。鮫は髪型がポイントだから。襟足が長くないとイケナイのですもの。
戦いたかった。なんとしても、己れの誇りと幸福のために戦いたかった。
『新宿鮫�掘〇嗟�』 大沢在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年10月01日(日) |
『新宿鮫�供‘捻遏戞‖臑�在昌 |
鮫島は売人張り込み中に不思議な技を使い敵を倒す男を見た。その男は郭英民、台湾台北警察の刑事だった。郭は毒猿(ドゥアン)と呼ばれる職業兇手(殺し屋)を追って日本にやって来ていた。毒猿が自分のかつての盟友ではないかと疑っているためだった。毒猿は自分を売った男の命を狙って日本に潜り込んでいたのだった。毒猿が新宿を戦場に変えてしまう前に鮫は郭は毒猿の凶行を食い止めることができるのか・・・!?
刑事と殺し屋、その友情・・・それでもたくさんの血が流れるのだった。ああ、これぞハードボイルド!って感じです(にこり)。新宿は多国籍な街になっているのだと本で知るようになりました。日本はきっといい餌場なのでしょうね。毒猿と呼ばれる悲しきヒットマンと彼を追いかけてきた刑事、そのふたりに鮫島はなにかシンパシーを感じた様子です。鮫島は不器用でいい奴だから損をする。損をしながら傷つきながら自分の信じたものを大切に生きている・・・そこが魅力なのかもしれない。新宿鮫では鮫を筆頭にした男たちが主役で女たちは脇役。そこが切ない。毒猿を愛した女が哀れでたまらなかったです。ううう。
「ほかの国が破壊工作をしかけてくる、どうする? 私から見ると、日本の人、皆、のんき。いいことも悪いこともすぐ忘れてしまう。自分たちがしたこと、されたこと」
『新宿鮫�供‘捻遏戞‖臑�在昌 光文社カッパノベルス
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